文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

廣松渉と桜井誠2

広松渉桜井誠

 広松渉桜井誠、この二人に共通点が何かあるだろうか。おそらくない。
 広松渉は東大教授であり、マルクス主義研究で、世界的にも高く評価されている「哲学者」だ。学問的業績は数え切れない。著書も、『マルクス主義の成立過程』や『マルクス主義の地平』から、『世界の共同主観的構造』『存在と意味』『広松渉著作集』まで、膨大なものである。戦前の哲学者・西田幾多郎にも比すべき、戦後日本で、最高の創造的な哲学者といっていい。
 一方、桜井誠は、得体の知れない「ネツト右翼」の一人にすぎない。悪名高い「在特会」を作り、その会長になり、民族差別的なヘイトスピーチを繰り返し、裁判沙汰にまでなっている。最近は、突然、都知事選立候補し、意外にも10万票を獲得したとかしなかったとか言われているが、いずれにしろ、世間的には、あまりまともな人物とは思われていない。
 その広松渉桜井誠を、私は、ここでまず、並べて論じたい。何故か。二人の共通点とは何か。
 実は、この「ネット右翼亡国論」を出してくれることになった出版社が、たまたま福岡県博多にあった。まだ若いときに、東京で交流のあった、私よりも遙かに若い友人が、故郷の博多に帰って出版社を始めるというのだ。そこで、頭に浮かんだのが、「桜井誠」であり、「広松渉」であり、「小林よしのり」であり、「麻生太郎」・・・であったというわけだ。いずれも福岡県に縁がある人たちだ。
  特に、私は、広松渉桜井誠に関心を持った。意外かもしれないが、二人は、似ているのだ。何が似ているのか。どこに共通点はあるのか。
それは、本書のテーマの一つでもある「「思想の土着化」という問題だ。
 さて、広松渉桜井誠の共通点とは何か。二人とも福岡県出身である。広松渉は柳川、桜井誠は北九州の中間市。私は、そのころ、広松渉に関する伝記的書物を何冊か読んでいた。
 たとえば、佐藤優広松渉論『いまこそ広松渉を読み直す「エンゲルス論」ノート』(世界書院)や小林敏明の『広松渉ー近代の超克』(講談社)、熊野純彦の『戦後思想の一断面 哲学者広松渉の軌跡』(ナカニシヤ出版)などだ。
 私は、学生時代から、広松渉の本には親しんでいる。しかし、広松渉の個人的な、つまり伝記的な側面については、伝習館高校を退学になり、大検を経て東大に入学した・・・程度の話を知っているだけで、詳しい生い立ちについてはまつたく無知だった。