文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

ドストエフスキーと清水正。未亡人プリへーリャの「踏み越え」


<<未亡人プリへーリャは年金百二十ルーブリで二人の子供を育て上げた。そこにきれいごとでないことが隠されていることはほぼ間違いない。(中略)プリへーリャは夫の友人の名前はアファナーシイ・イワーノヴイッチで閣下の名と父称を逆転しただけである。プリへーリャは彼のことを「いい方」と言っている。両者に秘められたこの符号から、プリへーリャとアファナーシイの性的関係を読みとれば、『罪と罰』一編は全く新しい世界を再構築することになる。>>(清水正清水正ドストエフスキー論全集7』(『オイデイプス王』と『罪と罰』)

清水はは「踏み越え」の物語である、ラスコーリニコフだけではなく、ソーニャもカチェリーナ(マルメラードフの妻)、そしてプリへーリャ(ラスコーリニコフの母)も「踏み越え」る、と。ラスコーリニコフが老婆殺しなら、ソーニャやプリへーリャは、性的踏み越え、つまり売春である。