文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

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ポツダム宣言と安倍首相と戦後レジームーー『ネット右翼亡国論』ーー

dokuhebiniki2015-05-30


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ポツダム宣言を読んでいない」とか「早く質問しろよ」とかいう野次など、国会審議における安倍首相の発言が問題になっているらしい。私も、時間が許す限り、出来るだけテレビの国会中継を見ている。面白いからだ。しかし、安倍首相の問題発言の場面は見逃した。後で、ユーチューブで見て、ちょっと驚いた。


私は、安倍首相を筆頭に、政治家たちが「ネット右翼化」していると思った。私は、安倍首相を馬鹿にしたいわけではない。むしろある意味では、「政治家・安倍晋三」を高く評価している。安倍首相は、運のいい政治家である。私は、政治家にとって、「運」というものは、大事なものだと思う。


では、安倍首相の問題とは何か。今、日本中が、「安倍晋三よ、大丈夫か?」と心配しているのではないか?「戦後レジームからの脱却」を目指す政治家が、「戦後レジーム」の原点ともいうべき「ポツダム宣言」を読んでいないとは?


安倍首相の「戦後レジームからの脱却」が、言葉だけのものであって、実質の伴わないものだということが、よく分かる。「早く質問しろよ」という野次とともに、安倍首相自身が「ネット右翼」レベルの政治家だということが分かる。


ギリシャアテネで生まれたという「民主主義(デモクラシー)」とは、元々、「有能な独裁者」の危険性を認識し、それの登場を防ぐ政治システムだった。つまり、民主主義という政体にあっては、政治家は有能である必要はなかった。有能な政治家は、しばしば「独裁者」になるからだ。


安倍首相の問題は、自分を、「有能な政治家」だと錯覚しているところにあるように見える。安倍首相の問題は、無能かどうかはともかくとして、「有能な政治家」ではないが故に、政治的「運」に恵まれているのだということを、忘れているところにある。安倍首相は、「無能な独裁者」になろうとしているように見える。


ところで、安倍首相は 、「戦後レジームからの脱却」や「憲法改正論」を 力強く語る一方で、「ポツダム宣言」を読んでいないという。なんとも不可解であるが、これは、最近の保守論壇ネット右翼に通じるものである、と思われる。つまり、「受け売り・憲法改正論」であり、「受け売り・戦後レジームからの脱却」なのである。


自分の頭で考えたものではない、ということだ。受け売りであるがゆえに、「結論」だけを横取りして、得意になっているのだ。たとえば、江藤淳の「押し付け憲法論」の前提に「ポツダム宣言研究」や「占領政策研究」があるのは当然だ。しかし、模倣者たちは、そこは素通りして、「結論」や「結果」だけを、思想的に語るのだ。


私は、何事においても、文学者や思想家、あるいは評論家やジャーナリストにとって、代表作とでも言うべき「作品」があるかないかは大事だと言ってきた。最近の保守論壇の面々にも、ネット右翼にも、語るに足る「作品」がない。あるのは政治漫談と雑文集だけである。現在の日本の思想的貧困の背景には、雑文集だけが氾濫して、「作品がない」という悲惨な状況がある。


小林秀雄なら、「彼等は、何も考えていない!」と一喝するところだろう。「物を考えた」なら、「作品」があるだろう。三島由紀夫大江健三郎は思想的立場はちがうかもしれないが、膨大な「作品群」があるという一点では共通する。三島由紀夫は、誰よりも大江健三郎の才能を高く評価し、畏怖していたのだ。


憂国忌」にあつまる三島由紀夫ファンや三島崇拝者には、それが見えていない。つまり、「歴史と伝統を守っている」のは、日本語で膨大な作品を書き、それを評価されて「ノーベル賞」まで受賞した大江健三郎なのである。三島由紀夫の口真似をして、「歴史と伝統を守れ」叫んでいる「ネット右翼」ではない。


江藤淳吉本隆明にも、丸山眞男廣松渉柄谷行人にも、他のものの追随や模倣を許さない、孤独な「作品群」がある。私が信頼するのは、そういう文学者や思想家、学者たちだけだ。


『「早く質問しろよ」――。新たな安全保障関連法案を審議する28日の衆院特別委員会で、安倍晋三首相がこんなヤジを飛ばし、審議が紛糾した。民主党辻元清美氏が自衛隊のリスクなどについて質問している最中、過去の首相答弁を引用しようと、間を明けた瞬間のヤジだった。
 

辻元氏はその場で「人の生死とか戦争に関わる話。情けない気分になった」と抗議。首相は「(辻元氏が)延々と自説を述べて質問をしないのは、答弁機会を与えないことなので『早く質問をしたらどうだ』と言った。言葉が少し強かったとすれば、おわび申し上げたい」と釈明した。


 民主党枝野幸男幹事長は記者団に「質問にあたって自らの考えを話すのは当然の権利だ。首相としての資質に欠ける」と反発。維新の党の柿沢未途幹事長も「これを繰り返していたら、委員会を開かせないくらいの対応をしていい」と語り、審議を拒否する可能性にまで言及した。(朝日新聞15年5月28日)』


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◼️参考資料(ポツダム宣言)


ポツダム宣言

千九百四十五年七月二十六日
米、英、支三国宣言
(千九百四十五年七月二十六日「ポツダム」ニ於テ)

一、吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート・ブリテン」国総理大臣ハ吾等ノ数億ノ国民ヲ代表シ協議ノ上日本国ニ対シ今次ノ戦争ヲ終結スルノ機会ヲ与フルコトニ意見一致セリ

二、合衆国、英帝国及中華民国ノ巨大ナル陸、海、空軍ハ西方ヨリ自国ノ陸軍及空軍ニ依ル数倍ノ増強ヲ受ケ日本国ニ対シ最後的打撃ヲ加フルノ態勢ヲ整ヘタリ右軍事力ハ日本国カ抵抗ヲ終止スルニ至ル迄同国ニ対シ戦争ヲ遂行スルノ一切ノ連合国ノ決意ニ依リ支持セラレ且鼓舞セラレ居ルモノナリ

三、蹶起セル世界ノ自由ナル人民ノ力ニ対スル「ドイツ」国ノ無益且無意義ナル抵抗ノ結果ハ日本国国民ニ対スル先例ヲ極メテ明白ニ示スモノナリ現在日本国ニ対シ集結シツツアル力ハ抵抗スル「ナチス」ニ対シ適用セラレタル場合ニ於テ全「ドイツ」国人民ノ土地、産業及生活様式ヲ必然的ニ荒廃ニ帰セシメタル力ニ比シ測リ知レサル程更ニ強大ナルモノナリ吾等ノ決意ニ支持セラルル吾等ノ軍事力ノ最高度ノ使用ハ日本国軍隊ノ不可避且完全ナル壊滅ヲ意味スヘク又同様必然的ニ日本国本土ノ完全ナル破壊ヲ意味スヘシ

四、無分別ナル打算ニ依リ日本帝国ヲ滅亡ノ淵ニ陥レタル我儘ナル軍国主義的助言者ニ依リ日本国カ引続キ統御セラルヘキカ又ハ理性ノ経路ヲ日本国カ履ムヘキカヲ日本国カ決意スヘキ時期ハ到来セリ

五、吾等ノ条件ハ左ノ如シ
  吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ右ニ代ル条件存在セス吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ス

六、吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス

七、右ノ如キ新秩序カ建設セラレ且日本国ノ戦争遂行能力カ破砕セラレタルコトノ確証アルニ至ルマテハ聯合国ノ指定スヘキ日本国領域内ノ諸地点ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スルタメ占領セラルヘシ

八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ

九、日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルヘシ

十、吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非サルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ

十一、日本国ハ其ノ経済ヲ支持シ且公正ナル実物賠償ノ取立ヲ可能ナラシムルカ如キ産業ヲ維持スルコトヲ許サルヘシ但シ日本国ヲシテ戦争ノ為再軍備ヲ為スコトヲ得シムルカ如キ産業ハ此ノ限ニ在ラス右目的ノ為原料ノ入手(其ノ支配トハ之ヲ区別ス)ヲ許可サルヘシ日本国ハ将来世界貿易関係ヘノ参加ヲ許サルヘシ

十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ

十三、吾等ハ日本国政府カ直ニ全日本国軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス右以外ノ日本国ノ選択ハ迅速且完全ナル壊滅アルノミトス

(出典:外務省編『日本外交年表並主要文書』下巻 1966年刊[3]





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