文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

櫻井よしこよ、歴史力を磨け。ー「櫻井よしこにおける『ネット右翼』の研究(9)」。


人気ブログランキングへにほんブログ村 政治ブロへ

櫻井よしこに、『日本人よ、歴史力を磨け』という本がある。皮肉である。タイトルは自虐ネタのギャグだろうか。櫻井は、日本の近代史を論じている。特に南京事件について、ウンチクを傾ける。しかし、ほとんどは、北村稔の 『「南京事件」の探究―その実像をもとめて 』(文春新書)からの「受け売り」よ「パクリ」である。しかも、その受け売りとパクリに大きな間違いがある。

蒋介石に委任されて日中戦争開始前から上海で外信の検閲に従事していた曾虚白という人物がいますが、彼の自伝『曾虚白自伝』(未訳)の中にも、次のように具体的な形でティンパーリーの名前が出てきます。


「ティンパーリーは都合のよいことに、我々が上海で抗日国際宣伝を展開していた時に上海の『抗戦委員会』に参加していた三人の重要人物のうちの一人であった」


「我々は目下の国際宣伝においては中国人は絶対に顔をだすべきではなく、我々の抗戦の真相と政策を理解する国際友人を捜して我々の代弁者になってもらわねばならないと決定した。


「ティンパーリーは理想的人選であった。かくして我々は手始めに、金を使ってティンパーリー本人とティンパーリー経由でスマイスに依頼して、日本軍の南京大虐殺の目撃記録として二冊の本を書いてもらい、印刷して発行することを決定した」


「このあとティンパーリーはそのとおりにやり・・・二つの書物は売れ行きのよい書物となり宣伝の目的を達した」

日中戦争の際、日本軍が南京で市民等30万人を虐殺したと言われていますが。果たして、南京大虐殺の真相はどうだったのでしょうか?

(櫻井よしこ『日本のよ、「歴史力」を磨け』)

ティンパーリの『曾虚白自伝』からの引用(赤文字)は、北村稔の 『「南京事件」の探究―その実像をもとめて 』からの「孫引き」である。しかも、北村稔が勘違いしているところを、櫻井よしこも勘違いしている。北村は、さかんに歴史研究は原資料に帰れ、と強調しているが、北村自身が大発見し、全面的に依拠しいている資料『曾虚白自伝』は、戦後、書かれた回想録である。つまり二次資料である。そこには勘違いや脚色、自慢が少なくないことは自明である。櫻井よしこが「受け売り」のテキストにしている『「南京事件」の探究―その実像をもとめて 』は、怪しい二次資料に依拠した怪しい歴史研究なのである。つまり、 「ティンパーリーは理想的人選であった。かくして我々は手始めに、金を使ってティンパーリー本人とティンパーリー経由でスマイスに依頼して、日本軍の南京大虐殺の目撃記録として二冊の本を書いてもらい、印刷して発行することを決定した」という部分は、自慢話の可能性が高い。「日本軍の南京大虐殺の目撃記録として二冊の本を書いてもらい、印刷して発行することを決定した」のは誇張された自慢話で、実際は、「ティンパーリーが書いた本を買い取り、翻訳出版した」という話にすぎない。言い換えれば、北村が、歴史研究者として強調する「ティンパーリー=国民党政府スパイ説」そのものが怪しいのである。しかし、櫻井よしこは、北村の説を鵜呑みにし、それを自慢たらしく、日本人に向けてお説教する。「受け売り」を得意とする「ネット右翼文化人」の哀しさである。櫻井よしこは、日本人よ、「歴史力」をみがけ』などと御あ説教する前に、みずからの「歴史力」の欠如を、嘆くべきだろう。日本人にお説教とは、百年早すぎる。お説教の相手は、安倍晋三だけにしておけ!(笑)。


(続く)




人気ブログランキングへにほんブログ村 政治ブロへ (続きは、「イデオロギーから存在論へ」「文学や哲学を知らずして政治や経済、軍事をかたるなかれ」がモットーの『思想家・山崎行太郎のすべて』が分かる!!!有料メールマガジン『週刊・山崎行太郎』(月500円)でお読みください。登録はコチラから→http://www.mag2.com/m/0001151310.html