文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

「フォーネット」と沖縄論。九州の博多を拠点にした「フォーネット」という月刊誌がある。先月、友人の紹介で、沖縄問題で、インタビューを受けた。「フォーネット」8月号に掲載されている。私の現時点における沖縄論である。手に入る方は、ご一読ください。

dokuhebiniki2015-08-11

お問い合わせは、こちら→(faxー 092-762-6940、mail ー info@fornet.co.Jp)
(写真は、今年1月に急逝した「月刊日本」副編集長の尾崎秀英さんと。ある衆議院議員候補者の個人演説会で。)



人気ブログランキングへにほんブログ村 政治ブロへ





人気ブログランキングへにほんブログ村 政治ブロへ



「劣化した保守」、安保マフィアの利権構造… 
日本全体が沈没する「沖縄の独立」という悪夢の現実味 


文芸評論家 
山崎行太郎氏 

リード 
「このままでは沖縄に独立の気運が高まる」。そう危機感を顕にする山崎氏。基地問題の根底には、潜在的な沖縄差別、劣化した保守論壇、そして沖縄に米軍にいてもらいたい安保マフィアの存在があると指摘する。その鋭い論調で沖縄問題を斬ってもらった。 




保守論壇亡国論」の実相 



―著書の「保守論壇亡国論」では、名だたる保守の論客をなで斬りにされていますね。確かに、最近「保守の劣化」を感じることがあります。 


山崎 先日の自民党の勉強会「文化芸術懇話会」における作家の百田尚樹氏の「沖縄の新聞はつぶせ」とかいう発言がマスコミのリークで問題化し、騒然となりました。マスコミは百田発言を「言論弾圧だ」と非難しました。確かにその通りですが、問題は「言論の自由」とか「言論弾圧」とかいう問題に留まりません。「百田尚樹言論弾圧発言」は、もっと深刻な問題を顕在化させました。 

 それは、自民党議員たちをも巻き込んだ「ネット右翼化」という問題です。百田氏を講師として呼んだ自民党の代議士たちと彼らを取り巻く応援団のような文化人たちの「反知性主義」の問題です。具体的に言えば、情報源の問題です。百田尚樹自民党衆議院議員たちの情報源は、比喩的に言えば、いい加減なステレオタイプ化した「ネット情報」なのです。「わかりやすい物語」と化した二次情報、三次情報です。 
つまり、安保法案の問題だけではなく、従軍慰安婦南京大虐殺などの歴史認識など、彼らの発言や考え方、認識は通俗化したワンパターンの物語なんです。なぜ、そうなったか。彼らの情報源が自分で調べたり、深く勉強して得た情報ではなく、誰かが調べたものの孫引き、孫引きの孫引き、現代風に言うなら、ネットに氾濫している情報のコピペなんです。だから、彼の意見は皆同じになってしまう。反論されたら、皆同じような論理展開で反論するわけです。まさに、ハンナ・アーレントの言う「全体主義」です。「沖縄の新聞は左翼過激派に乗っ取られている」といった論理です。そんなはずがありません。沖縄の新聞は沖縄のナショナリズムを代弁しているにすぎない。つまり沖縄の保守です。 
 今、私が関心を持っているのは、沖縄の従軍慰安婦の問題です。たとえば、沖縄戦でも、多くの朝鮮人慰安婦がいたことが分かっています。また、朝鮮人の軍夫という存在もいたことが分かっています。この軍夫という身分は、徴用された軍人、軍属でもないため、戦後何も補償されていません。 

 百田尚樹曽野綾子等は、こういう朝鮮人慰安婦朝鮮人軍夫の問題からは逃げています。曽野綾子は、集団自決を扱った『ある神話の背景』で、朝鮮人慰安婦朝鮮人軍夫の存在を知っていたにもかかわらず、書いていません。書くと、「日本軍美化物語」が論理破綻し、都合が悪くなるからでしょう。 

こういう風に、何事であれ、調べれば調べるほど、新しい事実が発見され、歴史の闇の部分が暴かれてしまうことになります。歴史事実の発掘や検証は学究的にやり続けるべきですが、これが政治マターになると、ある程度、清濁併せ呑むような形で、お互いに適当なところで妥協し、我慢して沈黙を守ることも必要です。もちろん、外国からの不当な言いがかりには反論すべきです。 

朝鮮人慰安婦について言うと、たしかに、「強制連行」はなかったかもしれないが、朝鮮人慰安婦はいたのです。しかも、日本軍の管理下に置かれ、相当、悲惨な扱いを受けています。 
 保守論壇には、「強制連行」はなかった、ということから、「朝鮮人慰安婦はいなかった」とか「あれは売春婦だった」とか言う人たちもいますが、そういう言い方は詭弁以外の何ものでもないでしょう。 
 私は、こういう詭弁によって自己弁護し、自画自賛するしかない保守文化人を、「保守の劣化」として批判しました。保守文化人も、「あるがままの歴史」に立ち向かうべきです。 

ユネスコによる近代日本の産業革命遺産の登録で、ぎりぎりになって韓国から「強制労働」表記をねじ込まれたと日本国内では非難の声が上がっています。 
山崎 それも同じです。「強制労働」という言葉が厳密かどうか分かりませんが。それに近いことはあったのではないでしょうか。朝鮮人を連れてきて炭鉱で劣悪な環境で無理矢理、働かせた事実を完全に否定することは無理でしょう。当時は、朝鮮(韓国)も日本だったのだから、「徴用」「強制」当然のことと言う人もいますが、朝鮮人と日本人の待遇の差は明らかでしょう。 

―鹿児島の「尚古集成館」、佐賀の「三重津海軍所跡」は、明治維新後の奇跡的な近代化の嚆矢とも言える遺産であり、韓国が「強制労働」があったとしている炭鉱にしても日韓併合前の歴史的価値を日本は主張しているはずなんですが… 
山崎 それは、そうです。韓国側の批判にも行き過ぎがあります。鹿児島の「尚古集成館」など、なんの関係もありません。しかし、韓国側の言い分にも一理があります。現在の韓国問題は両国の距離が近くなり、お互いに国内情報を詳しく知ることができるようになって、発生してきました。これは、日本の発展に対する韓国の嫉妬や、過去の植民地支配に対する恨み(ルサンチマン)も多分に関係があると思います。つまり、論理の問題だけではなく、感情や心理の問題なのです。だから、理論的に説明しても処理できません。感情的、心理的問題だということを踏まえて対応するしかありません。それを、ネット右翼に代表される最近の保守派は、「(やっていない)証拠は全部そろっている」という形で反論しています。しかし、歴史の事実を丹念に調べていけば、違う事実が出てくる可能性があるのは当然です。それなのに、自分たちに都合のいい部分だけを取り上げて主張し、「ディベート」みたいに、理屈だけで決め付けて相手を攻撃するのは、得策ではありません。 

 1980年から90年にかけて、小林秀雄江藤淳福田恆存などの保守論客が引退していき、その代わりに出てきたのが、西部邁西尾幹二渡部昇一たちです。この人たちは、小林秀雄等に比べて学者としては二流だし、文芸評論家としても二流です。こういう二流の人たちが、保守論壇をリードしていることが、保守の劣化に繋がっていることを、自著「保守論壇亡国論」で、私は訴えたかったのです。小林、江藤等は、自分が「保守」だということをそれほど重視していませんでした。右翼とか左翼とかいう政治的イデオロギーを越えて、存在論的次元で言論活動をしていました。だから、左翼側の読者にも読まれていました。 
 それが、いわゆる第二世代の西部邁櫻井よしこ等あたりから、保守主義イデオロギーとして理論化し体系化していきます。「保守の理論武装」「保守思想のイデオロギー化」です。ところが、この人たちが高齢化した今、彼等に影響を受けた人たち、つまり、第三世代が台頭してきました。それが「ネット右翼」です。彼らは、無名の一般大衆です。一般大衆が、「保守化」し、つまり「ネット右翼化」し、ネットを通じて発言し始めたのです。「嫌韓論」や「反韓論」、あるいは「反中国論」や各種の「陰謀論」などがそうです。 (続く)







(続く)

人気ブログランキングへにほんブログ村 政治ブロへ