文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

改憲三馬鹿トリオ=櫻井よしこと中西輝政と田久保忠衞・・・は、何故、終戦直後の昭和天皇の「東條批判」を知らなかったのか? 「開戦の責任は東條にある」という「天皇発言」を。

dokuhebiniki2015-05-07



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櫻井よしこ等は、「マッカーサー回想録」によって伝えられ、それがいつのまにか、大衆化し、通俗化したところの、紋切り型の「天皇発言」を鵜呑みにし、もう一つの「天皇発言」を知ろうとしなかったということだろう。櫻井よしこの『異形の大国 中国』(新潮文庫)を読むと、その歴史的知識があまりにも幼稚・素朴なのに驚く。櫻井よしこは、昭和天皇マッカーサーの会見について、次のように書く。

◼️日本が占領されたとき、昭和天皇マッカーサーに、全責任は自分にありと言って日本国と国民を守ろうとした。 マッカーサーが感動して重光葵外相に伝えた天皇のお言葉は次のようなものだった。(中略)
決して他人に責任転嫁されない姿勢に感動するのはひとりマッカーサーだけではないだろう。このような天皇を守り通したのが、「A級戦犯」とされた人々、就中、東条だった。
(櫻井よしこ『異形の大国 中国』(新潮文庫p246))

この感動的な美談は、世間的には通説としてよく知られているが、果たして、学問的にも正しいだろうか?マッカーサーの証言、マッカーサーの証言をそのまま鵜呑みにして記した「重光葵手記」・・・。櫻井よしこも、この美談を鵜呑みにして論を立てている。櫻井よしこは、さらに中西輝政を証人にする。


◼️国際政治の専門家、京都大学教授の中西輝正氏は、「東条、或いは広田弘毅元外相のように天皇の身代わりになって処刑台に立った人々が靖国神社にまつられることに関して昭和天皇が抵抗感をお持ちなわけがありません。もし、お持ちなら、それは人の道に反します。東条も広田も平沼麒一郎も皆、開戦に反対でした。冨田メモから『A級戦犯』全てについて天皇が不快に思っていたと結論づけるのは、したがって不完全な解釈だと思います」と語った。
(櫻井よしこ『異形の大国 中国』(新潮文庫p247))


櫻井よしこが『異形の大国 中国』を執筆した時点は、2006年である。論壇や学会、あるいはジャーナリズムの動向に完全に無知だということが分かる。すでに、1990年ごろから、多くの資料から、「マッカーサー回想録」の「天皇発言」の信憑性は疑われていたのである。


つまり、櫻井よしこ中西輝政等は、「マッカーサー回想録」の証言を、2006年の時点でも、無邪気に信じていたということだろう。無論、現在、マッカーサーの証言した「天皇」や「天皇発言 」を、そのまま信じる人は少ない。東京裁判対策のために、自分たちに都合のいいように創作されたものだからだ。


櫻井よしこ等は、「すべての責任は自分にある」「自分の命はどうなってもいい」というような「天皇発言」・・・、『マッカーサー回想録』が垂れ流した「ニセの天皇発言」しか知ろうとしなかったということだろう。


要するに、「マッカーサー回想録」の天皇発言に関しては、櫻井も中西も、田久保も、ステレオタイプ化したガセネタ情報しか持っていないということだ。学者、思想家、ジャーナリストとして失格である。


豊下楢彦は、1990年2月と3月、総合雑誌『世界』に発表した「『天皇マッカーサー会見』の歴史的意味」という論文で、「天皇発言」には、オモテの「天皇発言」とウラの「天皇発言」と、二つの「天皇発言」があったことを実証的に明らかにしている。


オモテの天皇発言とは、「マッカーサー回想録」や「重光手記」などに記されたものであり、ウラの天皇発言とは、「自分には責任は無い」「東條がやった」と、アメリカ国内向けメデイアに語った「東條批判」、ないしは「東條切り捨て」と思われる天皇発言である。


昭和天皇は、アメリカやイギリスに向けて、「東條批判」を繰り返し発信している。かくして、天皇も日本国体も、生き延びることが出来たのである。私は、昭和天皇の「苦渋の政治的決断」が間違っていたとも、批判しようとも思わない。


ただ、櫻井よしこ中西輝政田久保忠衛等が、この昭和天皇の「東條切り捨て」を知らないらしいということには、驚く。何が憲法改正だよ、何が保守だよ、と思う。寝言は、もっと勉強してから言えよ、と思う。昭和天皇は、地獄のどん底を見つめているのだ。今上天皇の護憲発言には、深い意味があるのだ。

(続く)

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今週=発売中の「週刊金曜日」(ゴールデンウイーク特集号)に、「保守論壇の『スター』たちの憲法観=ぶった切り」を書きました。ご一読ください。


櫻井よしこ八木秀次等の「トンデモ憲法論」について批判的考察を行い、その「口から出任せの稚拙な憲法改正論」を徹底批判しました。






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