文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

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「東大教授」と「小保方事件」と「現代文学」

dokuhebiniki2014-06-09


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「文学は終わった」とか「文学の地盤沈下」などが言われて久しいが 、その原因や思想的根拠について考えるたびに、僕は、今回の「小保方事件」や「小保方バッシング現象」に感じるものと「同じもの」を感じる。「東大=京大病」の蔓延化=制度化である。


実は、僕が学生だったころは、江藤淳吉本隆明の全盛時代だった。高橋源一郎に「江藤淳になりたかった」とかいう文章があるが、おそらく本音に近いだろう。つまり、「江藤淳吉本隆明のような批評家になりたい」というのが、その時代の多くの文学青年たちの願望だったのだ。


しかし、今から思うと、不思議なことだが、江藤淳吉本隆明も東大卒でも京大卒でもなかった。言い換えると、その頃の文学や思想、政治の世界では、東大卒や京大卒は、何の意味も価値も持っていなかった。たとえば、京大卒、京大教授の作家=高橋和己にも、東大卒の大江健三郎にも、一目は置いていたが、誰も尊敬も憧れももっていなかった。つまり、実力主義の時代だったと言っていいかもしれない 。


変化が起こったのは、江藤淳や吉本隆に代わって、柄谷行人蓮實重彦が台頭し始めた頃からである。特に東大卒、東大教授、東大総長・・・という経歴の蓮實重彦と、「構造と力」で「天才学者」というキャッチフレーズで、若くしてデビューした京大教授(助教授?)=浅田彰の存在は大きい。


その頃から、実力主義社会であった文学業界が、「東大=京大病」が蔓延する学歴社会へと変貌するからである。蓮實重彦の弟子とか崇拝者と思われる「東大病患者たち」が大量に文学界に進出し、急速に「学歴主義」と「東大病」が蔓延することになる。それと同時に、文学の地盤沈下、文壇の崩壊が始まる。


「小保方事件」が勃発した時、僕は、まさに、それと同じようなきな臭い匂いを感じたのである。小保方晴子博士が、早大理工学部卒であるということや、早大博士論文に、「小保方晴子バッシング」の矛先が向かうのを見て、そこに科学者業界に蔓延しているらしい「東大=京大病」と「学歴主義」の腐臭を感じたのである。


さて、現在、文芸誌「文学界」に、大長編「『ボバリー夫人』論」を完成したばかりという蓮實重彦が、大名行列並みに、東大教授二人を従えて、鼎談を行っている。内容的には、ちっとも面白くない鼎談だが、「学歴主義」と「東大=京大病」が蔓延っている最近の文学界や読者へのインパクトは相当のものがありそうだ。


ところで、もう一つの興味深い記事を紹介しておく。先頃、村上春樹が「女友達のいない男たち」という短編集を出したが、「日本読書新聞」に、その書評を兼ねた対談を、沼野充義阿部公彦という二人の東大教授と東大准教授が行っている。これまた実にくだらない対談だが、その組合わせは、なかなか面白い。


今頃、村上春樹の本を絶賛するのは、御用文藝評論家か、売り上げでしか物を考えない書店員評論家(?)だけだろうと思うが、この二人の東大教授は、身もふたもなく村上春樹を絶賛しまくっている。恥ずかしくないのか?はっきり言って、インチキ野郎どもが、何を寝ぼけたことを言っているのか、とでも言うしかない。つまり中身はくだらないが、その組み合わせは、まさしく、「東大病」丸出しなのだ。


これが、文学や文学業界のメインストリームで展開されている風景である。文芸誌やその他が、「大学紀要」並みになっているのである。文学が衰退し、文学的思考が形骸化するはずである。これは、ひとえに文学の世界に「批評」や「論争」がなくなったからである。


そういえば、江藤淳吉本隆明の活躍していた頃、この二人と論争できる東大教授は一人もいなかった。江藤淳吉本隆明も、東大教授たちの言動を意識し、かなり過激な批判を展開していたが、それに「反論」=「反撃」できる東大教授は一人もいなかった。丸山眞男ですらひたすら沈黙。嵐の過ぎ去るんを待った。江藤淳の場合も同様だった。そして江藤淳の死後、東大教授たちからの江藤批判が始まった。


江藤淳吉本隆明レベルが相手だと、何を言われても沈黙するだけだが、相手が弱そうに見えると、あるいは相手側がいなくなると、威丈高に、集団で批判=罵倒を開始するのが東大教授と呼ばれる人たちである。エセ学者、エセ科学者集団であることが分かる。そして、無知な大衆がそれに迎合する。


現在、早大理工学部卒の女性科学者をスケープゴートにした「小保方晴子バッシング」が、主として東大教授や京大教授、あるいはその予備軍によって、なされていることと無縁ではない。

(続く)


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■久米秋三郎氏の発言。


久米秋三郎 2014/06/10 02:00


山崎先生


6月9日の記事、何度も拝読しました。僕ら40歳代の世代は、もろに浅田彰の世代です。彼の使う「流行語」をアクセサリーにして戯れていました。しかし、アクセサリーはアクセサリーでしかありませんでした。もうとっくの昔に自殺してしまった親友が、いつか、「全共闘の世代に生まれたかったよ」とふと洩らしかことがありました。現代のように(今は二十年前よりもさらに悪化している感じがしますが)、うわべだけの小ぎれいな言葉ではなく、本気の、本当の言葉を求めていたのだと思います。


惰眠を貪っている東大や京大のお偉いさん方には、眠っている、という自覚症状すらないのでしょう。彼らに自浄を求めるのは無駄なのかもしれません。彼らは、自らの無思慮な発言がどれほど多くの人々を傷つけているか、害しているか、気づくことはないでしょう。


僕は、今現在も日本のどこかで、そこかしこで、黙々と、小さな「掘っ立て小屋」の中で、思考をめぐらしている若者らがいる、大勢いることを疑っていません。