文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

小沢裁判は現代のドレフュス裁判だ。(「月刊日本」11月号、山崎行太郎)




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★「月刊日本」11月号が発売中。僕は、今月号では、インタビュー「小沢裁判は現代のドレフュス裁判だ」と、毎号連載している「月刊・文芸時評」として「情勢論の言葉から存在論の言葉へ」・・・の二つで登場している。前者は「小沢一郎暗黒裁判」を扱っているし、後者は大震災・原発事故に右往左往する文化人たちの言葉の軽さを批判している。是非、ご一読を。

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小沢裁判は現代のドレフュス裁判だ( 山崎行太郎)
10月 18th, 2011 by 月刊日本編集部.


人民裁判と化した小沢叩き

―― 石川知裕衆議院議員の一審判決、そして検察審査会による強制起訴の初めてのケースである小沢元民主党代表の裁判が始まった。

山崎 小沢裁判に限らず、裁判には常に二面性がある。一つは、誰を裁くかというものであり、もう一つはどのように裁くか、というものだ。前者は法というよりも大衆の道徳感情、正義感、もっと言えばを晴らすためのカーニバル的観点であり、後者は法治国家として厳正に法を運用し、適用しているかという司法の妥当性に基づく観点だ。

この二つの観点は、ときに、齟齬をきたすことがある。たとえば、凶悪殺人犯がいるとしよう。その犯罪のむごたらしさに、国民が怒り心頭に発しているとしよう。なんとしてでも吊るし首にしろ、という声が高まる、これが大衆の要請となる。ところが、法の一貫性からすると、一人を殺しただけでは、これまでの判例との整合性からして死刑判決を下しにくいことがある。ここで裁判所は難しい立場に立たされることになるのだが、いかに国民の復讐感情に反することになろうとも、法の一貫性をねじ曲げる訳にはいかないという立場を貫くのが裁判所だ。時代の変遷と共に社会も変化し、法はなかなか変化しないから、社会と法との間に亀裂が生じるのはままあることだ。そのために折々に法改正が必要であり、そのために立法府がある。少年法による保護の年齢が引き下げられたのも、20歳未満の少年による凶悪犯罪の続出という社会変化に対応すべく、法が改正されたものだ。

法というルールに準じて、世論の復讐感情にらず、独自の判断をくだすこと、これが裁判所に求められる役割だ。そしてルールの変更を行うのは立法府なのだ。これが「好悪にかかわらずルールには従う」というローマ法以来の伝統に基づく、近代国家の原理だ。この原理自体の妥当性に疑義を呈するのも良いが、今現在、我々は近代国家原理の中で生活をしている以上、その枠内で生じた事件についてはその枠内で考えなければならない。

さて、小沢氏をめぐる事件では、まさに大衆の怨念がルールをねじ曲げるという現象が起きている。法が適正に運用されているかではなく、小沢一郎という政治家を有罪にするためには、ルールは無視しても構わないという事態が起きているのだ。

大衆の怨念が法を左右する状態、これを普通、人民裁判と呼ぶ。少し年配の人ならば、文化大革命が吹き荒れた頃の中国の様子を思い出すだろう。『毛沢東語録』を振りかざした青年たちが絶叫しながら被告を糾弾する、そして被告の頭には赤い三角帽子が被せられ、弁護する機会も与えられず、有罪判決が下されていくのだ。今日本で起きているのは、あの人民裁判なのだ。

左翼がそのような形で小沢氏を糾弾するのは、むしろ真正の左翼らしくて当然のことかもしれない。

問題は、法学者のみならず右翼・保守陣営と称される人々・メディアまでもが、小沢氏糾弾という、右翼が最も嫌うはずの人民裁判に熱狂していることであり、左右両陣営の熱狂に後押しされて、裁判所が法をねじ曲げ、人民裁判所と化しつつあることだ。

右翼・保守派は、たとえば東京裁判の無効性・不当性について語り、パール判決について語るのは好きだが、小沢裁判についてはその無効性・不当性については問題がないと考えているのだろうか。

ここで大事なのは、小沢一郎という人物のことを、好きか嫌いか、という問題ではない。法が適正に運用されているかだ。一旦、好悪が法をねじ曲げるという先例が出来れば、法はもはや意味をなさず、すべての裁判は人民裁判と化すだろう。小沢一郎を快く思わない人間がたくさんいるのは知っている。だが、嫌いな人間が窮地に陥っているのを見てほくそ笑んで、法がねじ曲げられてゆくのを座視すれば、その歪められた法はやがて、笑っていた人間にも縄をかけてくるようになる。(続く)

以下全文は本誌10月号をご覧ください。

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