文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

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菅直人首相の福島原発視察のパフォーマンスが混乱拡大をもたらした?


福島原発爆発が、多数の被爆者まで現れて、米・中・露など、国際社会も異常な関心をもって見つめるほど、いよいよ深刻な事態になりつつある。しかもこの福島原発事故という問題は、天災から始まったとはいえ、次第に人災の疑いが高まりつつある。枝野官房長官の記者会見に見られるように、日本政府が、福島原発事故に関しては、明らかに重要情報を隠蔽し、情報統制に近い報道管制を強行していることは明らかである。ところで、いつものように「意気込み」だけはいいのだが、その意気込みの動機が不純なために、意気込みとはまったく逆の結果が出てしまうというのが菅直人政権のパターンだが、今回の巨大地震対応策も、まったく同じような展開になりつつあるようだ。「12日朝」、菅直人は突然、福島原発視察を自分から言い出したらしく、約一時間も現場責任者たちを振り回し、翻弄したことになるわけだが、ちょうどその頃、原発は深刻な事態を迎えつつあったということになる。要するに、皮肉なことに、政権維持の人気取りとして見えないような、突然の菅直人の「現場視察」というパフォーマンスが、事態をより深刻なものにする原因の一つになってしまったということである。むろん僕は、菅直人の「意気込み」や「地震対策」を批判するつもりはない。が、政治は意気込みではなく結果である。いずれにしろ、多くの国民からの信頼を失っている無知無能なリーダーの「居座り」は、国民にとっては不幸の元凶そのものというしかないと思う。予算が成立したら、即刻、総辞職し、次のリーダーに代わるべきである。菅直人首相が「意気込み」を見せるべきは、東日本巨大地震対策が一段落したら、即刻「辞める」ことであるように思われる。さて、この巨大地震であらためて再確認したことだが、今、日本が直面しているのは「中国脅威論」でも「米国陰謀論」でもないということである。日本が直面しているのは、日本人自身が思想的に衰弱しつつあるという「日本人劣化論」である。地震学者にせよ、原発関係の科学者たちにせよ、巨大地震に直面して茫然自失と言う感じだが、彼らが、日頃の盲目的な科学主義にもっと思想的な疑いを持っていたら、もっと違った対応になっていただろう。政治学にしろ経済学にしろ、まったく同じだろう。科学者にしろ、政治学者や経済学者にしろ、彼らに「分らないこと」が、「分かること」より、はるかに多いのである。そこに日本人自身の思想的な「劣化」があると言わなければならない。さて、話は変わるが、地震津波の話で、僕が思い出すのは、小学生時代に読んだことのある濱口梧陵の話だ。江戸時代、地震が起きた時、海が急に引いていくのを見て津波の到来を予感した濱口梧陵が、「米藁」に火をつけて火事をおこし、村民に津波を警告し、丘の上に避難させ、村を救ったという話(美談)である。ラフカディオ・ハーンがこの話を小説にしたために、日本国内だけでなく世界中に知れ渡ることになり、しかも学校の教科書にまで載せられるようになった「美談」である。洪水対策として植林を続けた「金原明善」の話とともに、僕の深層意識にまで浸透している話で、この話を僕は、学校の教科書で読んだように記憶していたが、実は、この話は戦後は教科書には載っていないらしい。ということは、僕は紙芝居か、あるいは絵本かなんかで読んだのだろうが、地震津波の恐怖と共に、いつまでも記憶しているから不思議だ。海岸線の町や村の場合、小学校はしばしば山や丘の上にあるものだが、それは、地震津波を前提にしてそうしていたのではないだろうか、とふと思う。今回の巨大地震で小学生の集団が津波にさらわれているらしいという話を聞くと、新しい先端科学だけでなく、先人たちの智慧や体験を、つまり自然への畏怖と科学主義への懐疑の感情をもっと大事にしなければならない、と思う。(続く)
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■政府、後手の対応 首相視察が混乱拡大との見方も
2011.3.12 23:21 (1/2ページ)



 菅直人首相は12日夜、福島第1原発について「一人の住民も健康被害にならないよう全力で取り組む」と強調した。ただ、原発で爆発が起きたことで、政府の危機管理能力が問われることになった。「最悪の事態を想定」(枝野幸男官房長官)してきたはずなのに、退避指示の範囲を徐々に広げた。爆発の事実を発表したのも発生から2時間以上たってからで、官邸の混乱ぶりがうかがえた。

 しかも首相が12日朝現地を訪れ、1時間近く視察したことは現場の作業を遅らせる一因になったとの指摘もあり、責任を問われかねない。

 「国民の安全を第一に考えて対策を取ってきた。周辺住民が健康被害に陥らないよう全力を挙げたい」

 12日夜の会見で、首相は原発への対応をこう強調した。ただ、爆発とは言わず「新たな事態」と形容するにとどまった。

 首相は12日午後の与野党党首会談で原発に関し「危機的な状況にはならない」と強調していた。会談中に官邸側は「会談後、首相と官房長官の会見を行う」と発表した。爆発が起きたのは会談の最中だった。

 会談終了から1時間半以上たって単独で会見した枝野氏は首相が会見をいったんキャンセルした理由について「首相は、メディアを通じてメッセージを伝えるのは大変重要だと思っていたが、それ以上にこの事象(爆発)にしっかりと対応することが重要だとなった」と釈明した。


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