文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

佐藤優氏が「小林よしのり『北方領土論』」のデタラメを暴露する。

山崎行太郎先生
 政治漫画家の小林よしのりさんが、ハッスルしてい ます。にわか勉強で北方領土問題を扱おうとしていま すが、明らかに消化不良を起こしています。御参考ま でに、拙稿を送付します。  
これではレベルが低すぎて、土俵が成立しません。 排外主義者に転落した政治漫画家の姿があわれに思え ます。  
2009年7月23日 佐藤優

ライブドアニュース
佐藤優の眼光紙背(第55回):哀しき政治漫画家」(仮題)



 政治漫画家の小林よしのり氏が、7月22日発売の 『SAPIO』(小学館)における連載漫画<ゴーマニ ズム宣言 北方領土「おもねり・譲歩外交の愚劣?> で、筆者を批判している。もっともこれは内在的論理 に即した批判と言うよりも、人格的な誹謗中傷と印象 操作だ。この漫画を読んで、そのレベルの低さに唖然 とした。  
  噴飯物の事実誤認のオンパレードだ。いくつかの例 を示そう。
小林氏は、<1956年の日ソ共同宣言では、「平和条 約交渉後の二島返還と残り二島の協議」とした。>と記す。いったい1956年の日ソ共同宣言のどこにその ような文言があるのだろうか? 日ソ共同宣言の第9 項では次のように指摘されている。 <日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間 に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に 関する交渉を継続することに同意する。
 ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望に こたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色 丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、こ れらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連 邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡さ れるものとする。>
 日ソ共同宣言では、「返還」という文言ではなく、 「引き渡し」という文言が用いられている。返還とい うと、本来、日本のものであった諸島が日本に戻され るという意味だ。これに対して、引き渡しだと、ソ連 (その国際法的継承国であるロシア)のものである が、日本に渡すという含みもでてくる。外交におい て、この辺のニュアンスが重要になるのだが、どうも 小林氏には理解できないようだ。さらに日ソ共同宣言 で、残り二島(国後島択捉島)の協議に関する合意 は得られていない。日本側としては、第9項前段の<平 和条約の締結に関する交渉を継続>に国後島択捉島の 帰属に関する協議が含まれていると解釈しているが、 ソ連はそれに合意しなかったというのが事実だ。事実 に基づかない議論を領土問題に関して行うことは、国 益を損ねる。
 さらに、小林氏は<ところが90年代末から、日本国 内で、「四島一括返還と言うな!」という強引な政治 工作を行った者がいる。それが鈴木宗男であり、佐藤 優であり、東郷和彦(元オランダ大使)だった。>と言 う。不勉強にも程度がある。日本政府は、1991年 10月に「四島一括返還」にこだわらなくなり、「北 方四島に対する日本の主権が確認されるならば、返還 の時期、態様、条件については柔軟に対応する」と方 針を転換している。小林氏は、<日本側の原則は、「あ くまでも四島一括返還」>と述べているが、少なくとも 日本政府は1991年10月以降、そのような立場を とっていない。
 小林氏は、<この北方領土外交の分析は次回に続く。 佐藤優がまた編集部に圧力をかけて言論封殺を企む か? こういう場合、『ゴー宣』の言論の自由を守れ るのは、読者しょくんだけだということを、お伝えし たい。>と述べている。どうぞ、何でも勝手に書けばい い。ただし、事実でない記述をもとにした印象操作、 誹謗をかさねればかさねるほど小林氏は男を下げると 思う。さらに小学館も、小林氏の政治漫画に対して、 校閲(記述の事実関係に関するチェック)をしている のかという疑念が有識者の間で高まるだけだ。小林氏 は北方領土問題というテーマをよく消化できていな い。私は、そこに何かに焦っている哀しき政治漫画家 の姿を見る。
 ちなみに『SAPIO』には筆者も連載している。 7月22日発売の号には、<択捉島「行政府非礼事件」 で示されたメドベージェフの対日謀略」と題する、小 林氏の政治漫画の内容と正面から対立する拙稿が掲載 されている。ここで1956年の日ソ共同宣言につい て基本的な説明をしておいたので、目を通していただ ければ幸甚だ。
(2009年7月23日脱稿)



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