文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

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自首したテロリストは単独犯か?


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「元厚労省次官夫妻連続殺傷事件」は、一部の専門家が予想していた「期待される犯人像」にピタリと合致したかのような、凶悪犯罪に相応しい犯人らしい犯人と思われる人物が、犯行に使った武器類を持参の上、警視庁にレンタカーで出頭するという意外な展開を示し始めたようだが、どうも腑に落ちない点が多すぎるようだ。むろん、政府や警察当局は、政治的、思想的背景のない「孤独な独身男の単独犯」という、単なる凶悪な個人犯罪的な図柄で一件落着といきたいところだろうが、どうもそうは行きそうもない。僕は、この元官僚夫妻を次々と襲うというテロ事件は、政治的、思想的背景のある組織犯罪であって、おそらく、事件の解明も実行犯の逮捕もなく、迷宮入りの可能性が高いのではないか、と思っていたが、たしかに政治的、思想的背景はあるのかもしれないが、僕が当初から予想していたものとは、その背景の意味と方向が違っていたように見える。今回の犯人のように、事件から数日後、武器持参で警視庁に出頭する……というスタイルは、暴力団関係の事件に特有のものらしいが、おそらく、この元官僚夫妻連続殺傷事件の犯罪主体も、そういう関係に関わるものなのだろう、と推察する。僕は、実は、左翼過激派か右翼行動派のどちらかだろうと、思っていたのだが、どうやら、それは間違いだったようだ。僕の友人でもある「一水会」の代表が、テレビで、「女性に手をかけている点で、右翼のにおいがしない。」と分析していたが、鋭い指摘であり、やはりその通りだったわけで、この凶悪事件を分析する上で、注目すべき大きな要因は、「女性に手をかけている……」という点にあり、おそらくその観点から見れば、左翼過激派でも右翼行動派でもない、と言わなければならないだろう。ある情報によると、犯人の自首・出頭の数時間前に、NHKに、福岡方面から電話があり、「これから出頭する」という予告があったというが、その情報が正確だとすれば、自首・出頭が、組織的な話し合いの上で、行なわれた可能性が高い。実行犯と思われる小泉某は、周辺取材によると、四十過ぎの独身男で、大宮近辺のアパート住まいの無職、普段から、かなり暴力的なコワモテの危険人物……だったようで、明らかに暴力団関係者と思われるわけだが、言い換えれば、右翼暴力団関係も、今や政治的に、あるいは思想的に、かなり学習し、且つ過激化しつつあるということだろう。政府や警察当局は、背後関係を徹底的に追求するということをしないままに、つまり政治的、思想的な側面を隠蔽したままに、「孤独な独身男」の個人的な恨みによる単独犯罪ということで一件落着と考えているだろうが、はたして政府や警察当局の思惑通りに、事件の真相を闇に葬り去ることが出来るだろうか。自首した犯人・小泉某によると、「ペットを殺されたことが犯行の理由だ」ということらしいが……。これは、誰かに向けての、何かのメッセージだろうか。謎は残る。早速、一部のコメンテーターたちが、単独犯という警察当局の語る「物語」を鵜呑みにして、「今の四十代は幼稚だ」(大宅映子)とか「自己顕示欲の強い性格」(元警視庁1課長、田宮栄一)だとか、あるいは「精神的な病い」(飯島勲・小泉元首相秘書官)だとか言い始めているが、少なくともこのテロ事件の実行犯らしい人物が、たとえ単独犯であろうが組織犯であろうが、いずれにしろ、年金問題の責任者である「元厚労省次官夫妻」を、連続して次から次へと襲うという綿密な計画の元に、しかも犯行を冷徹に実行するという犯罪事実と犯罪心理を考えるまでもなく、政治的に、あるいは思想的に、犯人が「幼稚だ」とか「自己顕示欲の強い性格」「精神的な病い」だとかは、とても言い難いだろう。一説によると、犯人は、佐賀大学理系学部を中退しているとか、関東地方でコンピューターのプログラマーだったこともあるという噂だから、もちろん、この噂を信じるか信じないかは別としても、政治的にも、あるいは思想的にも、深く徹底的に思考した、いわゆる熟慮断行型の、言い換えればラスコーリニコフ型の確信犯であることは間違いない。ところで、このテロ事件とそのテロ実行犯の登場を見ていて、僕が連想するのは、昭和七年の、日蓮宗僧侶の井上日召をリーダーとする「血盟団事件」であり、前大蔵大臣・井上準之助をピストルで暗殺した実行犯の青年・小沼正である。血盟団事件というと、僕の高校の大先輩にあたる四元義隆(当時東大法学部学生)がそのメンバーの一人だったこともあって、以前から少なからず興味を持っているが、昭和史における血盟団事件の政治史的意味は小さくないわけで、その意味から考えるならば、今回のテロ事件も、簡単に、凶悪な変質者による個人犯罪として一件落着……というわけには行かないはずである。犯人は、今日(11/23)、午後、到着の手紙を、故郷・山口県に住む父親あてに出しているということだから、その手紙が、犯行声明に相当することになるかもしれない。(続く)



血盟団事件(松本清張 「昭和史発掘」より)

昭和七年二月は、犬養政友会内閣によって一月に解散が行われ、総選挙の最中だった。
その九日夜、東京第二区民政党公認候補の駒井重次(東京駅で狙撃された浜口首相の親戚)の政見発表演説会が本郷駒込追分にある駒本小学校で行われた。午後八時すぎ、この駒井候補の応援演説のために、民政党の前大蔵大臣井上準之助が電車通りに面した裏門から自動車を乗りつけた。駒井候補は車からおりた井上を誘導するように二、三歩先を歩いていた。
この二人を迎えるため裏門附近は人が集っていたが、その群衆の中から、突然一人の若い男が現れて井上の背中にぴたりとついた。集っている人も何のことか分らないまま見送っていると、歩いている駒井の耳に、突然、パチンという癇癪玉が破裂するような音がした。駒井がうしろをふりむくと、井上はステッキをもったまま小さくかがみこんでいる。つづいて二発、パチン、パチンと音がした。
井上のうしろに若い男が突立っていたから、駒井は瞬間変事を覚って、その男に近づくなり衿髪をとって大外刈で地上に投げとばした。駒井は柔道三段であった。
そこへ会場の人もかけつけて、若い男をステッキなどで殴った。警官に引渡したときに見ると、井上を狙撃した犯人のピストルは手の中に入るような小さなものだった。
井上は自動車に乗せられ、すぐに帝大病院に向った。自動車がゆれると、痛い痛いといっていた。病院に運ばれたときはすでに意識を失っていた。
手術室に運ばれたときは、手のほどこしようはなく、八時十五分に絶命した。

松本清張 「昭和史発掘(4)」  


★出頭したテロ事件の実行犯と思われる小泉某。




★46歳男を銃刀法違反容疑で逮捕 元次官ら連続殺傷も捜査

2008/11/23 06:42 【共同通信
46歳男を銃刀法違反容疑で逮捕 元次官ら連続殺傷も捜査


 元厚生次官ら連続殺傷事件で、警視庁は23日、銃刀法違反容疑で、「事務次官を殺した」と出頭したさいたま市の無職小泉毅容疑者(46)を逮捕した。警視庁は連続殺傷事件についても、容疑者とみて捜査する。
 逮捕容疑は、血の付いたナイフ1本を所持していた疑い。小泉容疑者は「自分のものに間違いない」と供述、警視庁はこのナイフが連続殺傷事件に使われたとみている。
 警視庁によると、小泉容疑者は22日午後9時20分ごろ、東京・霞ヶ関の警視庁本部に車で乗り付けた。警備の機動隊員に殺傷事件への関与を認め、「昔、保健所にペットを殺され腹が立った」などと話したという。
 車内からは血の付いた手袋やナイフ、段ボール箱、スニーカーなどが発見された。ナイフは8本あり、うち2本に血が付いていた。
 連続殺傷事件は18日午前発覚。さいたま市の山口剛彦さん(66)夫妻が自宅玄関で、胸などを複数回刺され死亡しているのが見つかった。同日午後6時半ごろには、東京都中野区の吉原健二さん(76)の妻靖子さん(72)が自宅玄関で、宅配便を装った男に胸を刺され重傷となった。
 小泉容疑者は出頭時「コイズミ・ツヨシ」と名乗っていたとされたが、警視庁のその後の調べで「タケシ」と判明した。
2008/11/23 06:42 【共同通信


★【元事務次官ら連続殺傷】小泉容疑者の自宅アパート家宅捜索

【元事務次官ら連続殺傷】小泉容疑者の自宅アパート家宅捜索
2008.11.23 09:26産経新聞ニュース



 元厚生次官ら連続殺傷事件で、警視庁は23日、銃刀法違反容疑で逮捕したさいたま市北区東大成町の無職、小泉毅容疑者(46)の自宅アパートを家宅捜索した。
 午前9時18分、捜査員がアパート2階にある小泉容疑者の部屋に入った。国道から少し入った住宅街のアパート前路上には約60人の報道陣が詰めかけ、静かなはずの休日の早朝は騒然とした雰囲気に包まれた。
 小泉容疑者は平成10年8月からこのアパートに住んでいたが、部屋を訪れた郵便局員に「うるさい」と怒鳴り声をあげたり、寒い日でもTシャツ短パンにサンダル姿で近所をうろつくなど奇異な行動が近所でも有名だった。
 「いつか何かやるだろうと思っていた」。多くの住民はこう語る。
 路地を挟んだアパートに住む定時制高校の男子高生は小泉容疑者について「目つきが悪くて何かやりそうな人だと思っていた。ボクサーのような体格で、路上でシャドーボクシングをしていることもあり、怖かった」と語った。
 隣の民家に住む主婦(60)も、小泉容疑者の逮捕について、「やっぱり」と冷静な様子。主婦があいさつをしても目を合わせることはなかったという。「隣の家の建築中によく、工事現場の人に『うるせー』と怒鳴っていた。いつも午後4時ごろに部屋から出てきて、近くのディスカウントショップでパンなどを買って帰ってきた。遊びに来る友達はいなかったと思う。青い作業服を着ていることも多かったので、日雇いの仕事でもしているのかと思っていた」と話した。(産経新聞)

★【元厚生次官ら連続殺傷】「今の40代は幼稚な人多い」識者コメント

【元厚生次官ら連続殺傷】「今の40代は幼稚な人多い」識者コメント
2008.11.23 00:19(産経新聞ニュース)



 評論家の大宅映子さんの話「40代といっても、昔と比べ、今は幼稚な20代に見える人が多い。子供のころからぬくぬくと育ち、見た目だけでなく、中身も20代の人がいる。バックグラウンドが分からないが、そんなに大した人ではないのではないか。最近は理屈なしに、恨みといった古典的な動機の範囲にも入らない理由で事件を起こす人がいる。仮に年金問題が理由だとしたら、奥さんは全く関係ない。常識がない人のことを考えても分からないが、逃げる気もなかったと思う。その気なら、もっと計画するでしょう」
 元警視庁1課長、田宮栄一さんの話「警視庁に名乗り出た男が事件の犯人だとすれば、捜査や報道に追い詰められ、逃げ切れないと思ったからではないか。あるいは自己顕示欲が強い性格なのかもしれない。所持したナイフの血痕が誰のものなのかが重要となる。年金問題など厚生労働省にいろいろな問題があり、どんな理由があったとしても、男を『正義の味方』にして許してはならない」
 藤本哲也中央大教授(犯罪学)の話「今回の事件は現場に堂々と足跡を残すなど、いつ捕まっても構わないという犯人の心理が感じられる。犯行に対する信念ともいえ、ナイフやスニーカーなどを持って警察に出てきたのは当然と感じる。現場を管轄する警察署ではなく、警視庁の本部に現れたことも、犯行の意図を社会に示したいという意識をうかがわせており、自ら名乗り出ることも当初から計画していたことではないか」
(産経新聞)


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