文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

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喜連川温泉で佐藤優と「太平記」を読む。

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先週の土・日は、栃木県の喜連川温泉で行われた、佐藤優を講師とする太平記の勉強会に行って来た。今春の奈良県吉野での二泊三日の勉強会に続くもので、また喜連川と言えば、わかる人にはわかるだろうが、特殊な施設があり、それとの関連で、場所が選ばれたのだろう。佐藤優氏は、相変わらず精力・勢力的で、今月号の「正論」では、「日本哲学の考察」という連載も開始している。佐藤優にとっては雑誌連載ものが、これでいくつになるのか知らないが、その執筆は驚異的な量とペースである。誰もが「ネタが尽きるのでは……」と心配することだろうが、佐藤優の文章を読むと、その気配は何処にも感じられない。「日本哲学の考察」は、「国体」という我が国独特の「国家論」を論じようとしたものであるが、表面的な議論ではなく、なかなか根源的な議論を展開している。ここ10年か20年、論壇的には、あるいは思想的には、左翼・革新派が衰退し、保守・右翼派が勢いを増し、まさしく「保守・右翼全盛」時代だったと言っていいが、しかしその中身はと見ると、マンガ右翼、マンガ保守、あるいはオバサン保守に代表されるような、実に思想的に軽薄、浅薄な保守・右翼や、あるいは西部邁に典型的に代表されるような機を見るに敏な営業右翼、商業右翼、あるいは転向右翼が跋扈した時代だった。哲学や歴史を、常に古典や原典に立ち返り、根源的に思考する佐藤優のような重厚な思想家の登場は、まさに、そういう時代の終わりを告げる象徴的な事件だったと言ってよかろう。