文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

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■作家・野沢尚の自殺は司馬史観批判と無縁ではない?

作家・野沢尚の自殺は司馬史観批判と無縁ではない?

 野沢尚という作家については、あまり知らない。シナリオライターの世界ではかなり有名な人らしいが、僕はその世界には疎いのでどれだけ偉いのかはわからない。ただ、「江戸川乱歩賞」受賞の時のニュース記事はよく憶えている。が作品は読んでいない。
 さて、その野沢氏が、昨日、事務所で首吊り自殺したという。まだ44歳である。一番、油の乗り切った時期だろう。なぜ自殺しなければならないのか。
 報道によると野沢氏は日大芸術学部の出身でもあるらしい。というわけではないが、野沢氏の自殺にちょっと興味を持った。
 作家の自殺は、今年は鷺沢萌に続いて二人目である。そう言えば、先日は、文学好きの窪塚洋介とかいう俳優がマンションから飛び降り自殺を試み、運良くと言うべきか運悪くというべきか、一命を取り留めるという事件も起きている。
 何か共通点があるのだろうか。単なる偶然か。
 野村氏に関しては、NHKの長編ドラマ『坂の上の雲』のシナリオを担当していたが、野沢氏の原稿が遅れて放送予定が一年ずらされていたとかいう話が伝わっている。もしそれが本当だとすれば、僕の問題関心とも無縁ではない。
 司馬遼太郎日露戦争を美しく描いた『坂の上の雲』には、最近の調査や研究によると、かなり問題があることが明らかになっている。つまり、「ノモンハン事件」を「無残な負け戦」と規定して、昭和の日本陸軍を罵倒し続けた司馬遼太郎に対しては、ソ連解体後に公表されたソ連側の資料に基づいて「ノモンハン事件」を再調査した研究者たちの側から厳しい批判が沸き起こっているのだ。実は、その司馬史観批判を試みている者の一人が小生である。
 恐らく野沢氏は、この司馬遼太郎批判や「ノモンハン事件」研究の最近の動向を知っていたであろう。そして日露戦争の解釈も、決して司馬遼太郎が描く日露戦争だけがすべてではない、と取材を続けていくうちにわかったはずである。
 それが野沢氏の原稿がなかなか進まなかった理由だろう。おそらく野沢氏は、今、『坂の上の雲』のシナリオをどううまく書いたとしても、批判は免れがたいと理解していたはずである。
 しかるにNHK側は、これまでの歴史番組の製作意図や歴史観から考えれば、おそらく忠実な司馬遼太郎路線で行こうとしたであろう。
 今、日露戦争をどう描くか。たいへん難しい問題である。もう「司馬史観がすべて」の時代は終わったのだ。