文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

来月から『月刊日本』で、「月刊・文芸時評」をやることになった。

 『月刊日本』という雑誌がある。政治評論が中心で地味な論壇誌だが、内容的に言えば一本筋の通った品格のある雑誌だ。その編集委員の一人がF氏で、雑誌の巻頭に、今時珍しい漢文的美文調の「人物論」を掲げている。戦前の政治家や思想家の文章からの引用とそれに対するコメントから成立っているが、漢詩文的・擬古文的な文体は、実に情熱的でしかも感動的だ。僕もこういう森鴎外を思わせるような漢文脈的文章は嫌いではない。というより大好きだ。自分では書けそうもないが。他には宮崎正弘藤井厳喜岡崎久彦各氏などのかなり過激な政治評論が毎月掲載されている。そのF氏が、昨年、突然、選挙違反の疑いで逮捕(?)され、ほぼ一ヶ月間の拘留ののちやっと保釈された。ということで、O氏の肝いりでF氏の「無事御帰還祝い」(笑)をすることに……。それが昨夜やっと都内平河町某所で実現したというわけだ。F氏逮捕の日も、お茶の水の「レモン亭」で、O氏が『月刊日本』に発表した論壇デビュー作「松岡洋右論」を肴に「デビュー祝い」をしていた。その日、出席者の一人だった某代議士秘書のMさんが携帯の呼び出しで突然立上がった。その電話がもたらしたのが「F氏が選挙違反で逮捕されたらしい……」という情報だった。一部では雑誌存続の危機も噂されたが、昨夜のF氏の話だと、その日に、巻頭論文の執筆や注文原稿の手配等を徹夜ですませたらしい。だから雑誌は休むこともなく出し続けられたという。さて、僕がF氏を知ったのは三島由紀夫「没後25周年憂国忌」の時だった。僕は、宮崎正弘さんから電話をもらい「憂国忌」のゲストスピーカーとして初めて参加したのだが、その日の司会を担当したのがFさんだった。その漢文脈的文体と同様に、その司会も実に格調高く、歯切れのよいもので、僕も聞き惚れていたものだ。それから毎年、憂国忌でお会いしているがあまり親しく話したことはなかった。それが不思議なもので、この逮捕事件の余波ですっかり親密になってしまった。実は来月から『月刊日本』で、「月刊・文芸時評」をやらせてもらうことになった。論壇誌に「文芸時評」……。福田恆存江藤淳の後継を目指す(笑)、が持論の僕に相応しい企画ではないか。『月刊日本』が続く限りやり続けたいと思う。マトモな「文芸時評」が読みたければ、『月刊日本』を購読しろ……が「文壇の常識」となる日も近いぞ(笑)。






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1947年生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科卒。慶應義塾大学大学院修了。東京工業大学講師を経て、現在、埼玉大学講師。朝日カルチャー・センター(小説教室)講師。民間シンクタンク『平河サロン』常任幹事。哲学者。作家。文藝評論家。

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