文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

「沖縄強姦殺人事件」とは何か?もっと深く絶望せよ。思想の力は「絶望の深さ」「虚無の深さ」「存在の深さ」に比例するーー佐藤優との対話(5)。

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吉本隆明は、「丸山眞男論」のなかで、丸山眞男の江戸政治思想史研究は、ヘーゲル弁証法的な世界史の図式を使っているが、ヘーゲル弁証法が「血塗られている」のに対し、丸山眞男の歴史は、綺麗事で終わっていると批判している。私は、これを読んだ時、戦後の思想に、「死の哲学」「殺す哲学」が欠如しているということだと感じ、深く納得した。


戦前の思想には「死の哲学」「殺す哲学」があった。戦場に向かう青年たちは、哲学や文学、あるいは宗教を必要とした。哲学や文学は、「死の問題」を追求していたからだ。戦前の青年たちにとって「死」は、避けて通れないものだった。「文学者は自殺するが、学者は自殺しない」と柳田國男が「青年と学問」で書いているという話を聞いたことがある。出典を探したが見つけだせなかった。しかし、「なるほど」と思った。


戦後も、太宰治火野葦平、加藤道夫、三島由紀夫江藤淳・・・等が自殺している。これは、何を意味するだろうか?学者、思想家は何人、自殺しただろうか?「国体の本義」を書いた橋田邦彦は自殺したらしいが・・・。


さて、元米軍兵士による沖縄強姦殺人事件である。日本政府は、形式的には米国政府や関係者に激しく抗議したらしいが、本気ではないだろう。「仕方がない」「時期が悪かった」「早く沈静化したい」とでも思っているのではないか。一方、北朝鮮少女拉致事件はどうだろうか?日本の外交戦略や軍事戦略を捻じ曲げるほどの激しい「救助運動」を繰り返しているように見える。


ここには自己欺瞞的なダブルスタンダードがあるのではないか?「日本本土の少女の命は地球(国家?)より重い」といいながら、「沖縄の二十歳の女性の命は・・・」と。これは、「死の問題」に正面から、真剣に向き合っていないからからではないか?「死の問題」を観念的にしか考えていないからではないか?


「少女の命」と「日本という国家の命運」と、どっちが大事か?「少女の命」のために日本国家は滅んでもいいのか 。「いいのだ」と言える日本人が何人いるのか?あるいは、日本国家を守るためには、「少女の命も仕方がない」と言える日本人が何人いるのか。


話は変わるが、現代の思想家には珍しく、佐藤優には「死の哲学」「殺す哲学」がある。それが、「佐藤優」を、ベストセラー作家にしているのではないか。佐藤優は、務台理作の「ヒューマニズム」を批判している。務台理作もまた、ヒューマニズムの問題が「死の問題」や「ナチズム」や「スターリニズム」に直結することを考えていない。



フロイトは、人間には「生の本能」(エロス)と同時に「死の本能」(タナトス)があると言った。フロイトだけではない。一流の人思想家や文学者は、無意識のうちに、あるいは本能的に「死の本能」という問題を考えている。私は、若い時に、江藤淳が、大江健三郎の小説には「自己処罰の欲求」があると書いていたのを読んで、「なるほど、文学は深い」と直感した。


ジャック・ラカンは、「自罰パラノイア」というものがあると言っている。「エメ」と名付けられた女性は、ある女優に切りつけて殺害しようとした。他者殺害は自己殺害の代行である。「エメ」は犯行後 、「病気」から解放さたという。自罰行為が病気を解放する。


戦争やテロリズムにに対して、「ヒューマニズム」や「生命尊重主義」を対置して満足するとは、自己欺瞞も甚だしい。戦争やテロリズムの中にこそ、「ヒューマニズム」や「人間的なもの」が露呈している。少なくとも、そいう前提から、思想や文学 、あるいは哲学や宗教を語るべきである。


沖縄の「二十歳の女性」を見殺しにしてもいい 。しかし、それなら、見殺しにしたこと、つまり、日米安保、沖縄米軍基地 、日本本土の安全保障・・・にためには、「それぐらいの犠牲も仕方がない」と考えているという自覚が欲しい。ヘーゲル弁証法的歴史哲学には、そういう「絶望」と「哀しみ」と「苦悩」・・・がある。ヘーゲルに対して、アンチ・ヘーゲリアンとしてのマルクスキルケゴールを対置しただけで満足するのは、単なる自己満足であり、自己欺瞞に過ぎない。


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(毎日新聞)

政府は、米軍関係者が逮捕された沖縄県うるま市死体遺棄事件が、基地問題に波及することを懸念している。駐留米軍への沖縄県民感情がさらに悪化すれば、普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画に影響するのは必至。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて行われる日米首脳会談でも、安倍晋三首相がオバマ大統領に直接、綱紀粛正と再発防止を求める方針だ。


 首相は20日、「非常に強い憤りを覚える。今後、徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」と記者団に語った。菅義偉官房長官は記者会見で「こうした事件が二度と起こらないよう、ありとあらゆる機会を通じ米側に対応を求め続けたい」と強調した。


 政府は20日、菅氏や岸田文雄外相、中谷元(げん)防衛相ら沖縄関係閣僚による会議を急きょ開催。米軍に対して綱紀粛正、再発防止策の徹底を求めることに加え、沖縄県警による捜査への協力も要請する方針を確認した。


 中谷氏は21日、亡くなった島袋里奈さんの葬儀に参列する。23日には首相と菅氏が、沖縄振興審議会出席のため上京する翁長雄志知事と会談し、政府の対応を直接説明する。


 政府側が神経をとがらせているのは、沖縄県側が「軍に付随する事件」(翁長氏)などと基地負担と結び付けて政府批判を強めているためだ。


 辺野古移設を巡る和解条項に基づく訴訟で、埋め立ての是非について司法判断を仰ぐため、政府は一時的に工事を中断している。政府関係者は「反基地運動が大きなうねりになれば、すぐに工事再開とはいかなくなる」と懸念する。


 菅氏は会見で沖縄の負担軽減に取り組む姿勢を重ねて示した。政府は6月5日投開票の同県議選や夏の参院選への影響も含め、沖縄の世論の動向を注視している。(毎日新聞16年5月20日)

(続く)


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