文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

櫻井よしこと南京事件とネット右翼。


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櫻井よしこの「週刊新潮」最新号のコラムを立ち読みした。すると、中国がユネスコ登録をしたと言う「南京事件」、あるいはネット右翼が大好きな「慰安婦問題」について、またまたいい加減なことを書いている。櫻井センセイ曰く、

南京大虐殺』なぞ存在しなかったことは、これまでの研究で明らかにされている。
(櫻井よしこ「日本ルネッサンス」)


と(笑)。なるほど。空いた口が塞がらない。「『南京大虐殺』なぞ存在しなかった」と?「これまでの研究」って、いったい、誰の、どういう研究? ということは、つまり、「小・中虐殺」はあったかもしれないが、「大虐殺」はなかった、と?「これまでの研究」って、誰の、どういう研究のことだろうね? サルにも分かる最終解答って? 櫻井大センセイに、是非、教えてもらいたいものだが?そんな研究って、あるわけないだろう。櫻井よしこのネタ本は、北村稔の『「南京事件」の研究』(文春新書)だと思われるが、北村稔は、「南京大虐殺はなかった」と書いているのか?それとも、「南京事件はあったが、『南京大虐殺』はなかった」と書いているのか?私も何回も熟読した本だが、そんなことは書いてない。

これに対し筆者の言う歴史研究の基本に立ち戻る研究とは、「南京での大虐殺」が<在った>か<無かった>かを性急に議論せず、「南京で大虐殺があった」という認識がどのような経緯で出現したかを順序だてて確認するのである。
(北村稔『「南京事件」の探究』)

要するに北村稔の本は、北村自身が言うように、「南京大虐殺があった」か「南京大虐殺はなかった」のどちらかを、判定した書物ではない。南京事件に関連する資料や文献を綿密に調査・分析するのが、北村稔の『「南京事件」の探究』の中心だ。ところが、櫻井よしこは、北村の本を根拠に、「大虐殺はなかった」と断定する。北村稔と櫻井よしこの差異は、小さな差異のように見えるが、実は私に言わせると、根本的な差異なのである。南京事件に関する櫻井よしこのネタ本が、北村稔の『「南京事件」の探究』であることは、『国売りたもうことなかれ』などで、櫻井よしこ自身が告白している。

テインパーリーとスマイルという二人の人物の著書が大虐殺の根拠とされたが、両者はなんと中国政府に雇われていたというのだ。
たとえばテインパーリーは、オーストラリア国籍で、英国の「マンチェスターていた・ガーデイアン」という新聞社の特派員というふれこみだった。"南京大虐殺"の真偽を問う日本人の研究者らは、長年、この人物の素性を特定できずにいたが、北村氏らが見事に突きとめている。
(櫻井よしこ『国売りたもうことなかれ』)

確かに、北村稔は、「テインパーリーは、オーストラリア国籍で、英国の「マンチェスターていた・ガーデイアン」という新聞社の特派員というふれこみだったが、実際は国民党政府に雇われた宣伝工作員だった」と資料や文献にもとずいて論証している。そして「大虐殺」が、虚偽報道だった可能性を論証している。しかし、そこから、「南京大虐殺はなかった。南京事件はなかった」と結論づけてはいない。その可能性を暗示しているだけである。ところが、櫻井よしこは、北村稔の『「南京事件」の探究』を根拠に、「南京大虐殺はなかった」と断定している。私は、櫻井よしこのような軽率な断定をする「ネット右翼」を、「イデオロギーとしてのネット右翼」と呼ぶ。「ネット右翼」は、資料分析や思考過程を無視・黙殺して、「結論」だけを拝借し、断定し、主張するのである。さて、南京事件ユネスコ登録に関しては、一部の自民党ネット右翼系議員たちも大騒ぎしているようだが、国連分担金問題などで騒げば騒ぐほど、ますますドロ沼にはまっていくだろう。そもそも、櫻井よしこのような「ネット右翼ジャーナリスト」の根拠の怪しいホラ話(ヨタ話?)を、そのまま間に受けるからである。櫻井よしこは、南京事件にしろ慰安婦問題にしろ、専門家でもないし、自分では調べてもいない。北村稔の著書(『「南京事件」の探究』平成13年度)を誤読し曲解し、鵜呑みにした上に、二番煎じ、三番煎じの伝聞情報を、派手に拡散ている。その伝聞情報にもとずく「ガセネタ」的な南京事件情報を、そのまま真に受けて、すっかり洗脳され、信じ込んでいるのが、安倍首相や菅義偉官房長官を筆頭とする自民党の「ネット右翼議員」(大西某や武藤某議員・・・)たちだろう。こういう「ネット右翼政治家」たちに国際政治を任せておくから、「ユネスコ登録事件」が起きるのである。第二、第三の、類似の事件は、今後も頻発するだろう。(続く)




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◼「週刊新潮」の櫻井よしこのコラム。


◼北村稔著『「南京事件」の探究』


『菅官房長官は2日の記者会見で、中国が国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に「南京大虐殺の文書」と「慰安婦に関する資料」を申請していることを改めて批判した。
 菅氏は「両国が関係改善のために努力している時期に、中国がユネスコを政治的に利用し、過去の一時期の『負の遺産』をいたずらに強調しようとするのは極めて遺憾だ」と語った。

 中国による申請が行われた昨年6月以降、下村文部科学相や斎木外務次官らは、中国に対し、申請を取り下げるよう求めてきた。ユネスコに対しても、これまで安倍首相や岸田外相らが計8回、「中国側が提出した資料の信頼性に問題があるので、慎重に審査するべきだ」などと申し入れ、世界記憶遺産に認定しないよう求めている。(読売新聞15年10月2日)』


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