小谷野敦の『保守論壇亡国論』書評には笑った。Amazonの書評欄に、あの小谷野敦先生が登場して、拙著『保守論壇亡国論』の書評を書いているが、これがまた、いかにも小谷野らしく、まったくの「ピントはずれ」で苦笑を禁じえないシロモノである。

小谷野は、昔から「東大病患者」で、思想も学問も文学も、「学歴(東大)」をキーワードにして論じる人だが、またまた「学歴」をネタに、書評を展開しているから、面白い。僕が、江藤淳を尊敬し、江藤淳を高く評価していることを捉えて、「同じ慶応だから」・・・褒めるのだろうとか、福田和也を批判しないのは、「同じ慶応だから」・・・だろうというわけだ。

僕は、近く佐高信氏との対談集『曽野綾子大批判』を出すが、佐高信氏も、慶応出身らしいから、小谷野のに言わせれば、これもまた、「同じ慶応だから・・・」ということになるのだろう。まったくお目出度い、呑気な人である。

小谷野敦が、確かに「東大大学院博士課程」を終了した「学歴バカ」で、他に何も売り物がない「学問的ヒキコモリ」だということは知っているが、ここまで「学歴」にこだわるのを見せられると、正直に言って、「コイツの親の顔が見てみたい」と思う。親の因果(学歴コンプレックス)が子に報い」か。小谷野敦先生、学歴自慢はいい加減にして、もっとマシな書評をを書いてくださいよ。というのは冗談だが・・・。

僕は、小谷野とは違って、小林秀雄や柄谷行人というような「東大出身」の文学者たちをも尊敬し、そのテキストを熟読しているので、別に学歴へのこだわりはない。むろん、僕は、小林秀雄や柄谷行人が「東大卒」だから尊敬し、熟読しているのではない。小谷野敦という人は、東大出身でも、その書くものがくだらなすぎるから、僕は、尊敬するどころか、歯牙にもかけていないのである。東大を出ようと出まいと、馬鹿は馬鹿。「東大出」にも馬鹿がいるという見本が、小谷野敦というわけだ。

小谷野は、小林秀雄の「偉大さ」が分からないらしい。小谷野は、丸谷才一らとともに、受験国語から「小林秀雄を排除せよ」「小林秀雄の文章は悪文で、非論理的だ」と言っていたことがある。小谷野敦や丸谷才一には、小林秀雄の文章は「非論理的」としか読めないらしい。よくそれで、文学などやっていられるものだが、結局、小林秀雄が分からない人たちなのだ。ということは、江藤淳の「偉大さ」も柄谷行人の「偉大さ」も分からないということだ。要するに、文学も思想も、何も分からないということだ。僕には無縁の人だ。ネットウヨ並みのバカ？

(続く)

5つ星のうち 1.0
自分の無節操は棚上げ, 2014/3/5
By 小谷野敦 (東京都杉並区)
レビュー対象商品: 保守論壇亡国論 (単行本（ソフトカバー）)

　山崎のブログを読んでいれば分かることだが、この本の発端は沖縄の集団自決である。この件で小林よしのりと佐藤優が論争して、山崎は佐藤に肩入れして、集団自決命令はなかったという曽野綾子の説を批判している。そこでここでは、小林側と見なした西部、佐藤とその盟友である鈴木宗男を批判した櫻井よしこ、曽野綾子に肩入れした渡部昇一らを批判しているだけで、中身はほとんどない。そこに、かねてどういうわけか江藤淳崇拝が加わっている。巻末には、『海燕』で1996年に行われた江藤へのインタビューも載っていて資料的価値はあるのだが、山崎は湾岸戦争の時の「文学者の反戦署名」に参加している。江藤はこの署名を批判して、田中康夫に失望したと語っていたのに、よく対談してくれたもんだと思うが、要するに慶応出身だからで、その対談の前置きで山崎は、慶応出身の橋本竜太郎が総理になった日に対談をしたと嬉しそうに語っている。保守論壇の堕落の一端を担うことは間違いない福田和也（江藤が評価しなかった村上春樹を高く評価）は批判されていないが、それは慶応出身だから。
　昔の「保守」福田恒存、小林秀雄、江藤には「作品」があったが、西部、櫻井、中西輝政、渡部には作品がないと言うのだが、それも恣意的な話である。江藤については、後半生に大したものがないことが問題であろう。大江健三郎を偉大だと認めるあたりは、いささか山崎の存在意義でもあるのだが、それなら江藤が生きている時に「大江を評価できないあなたは間違っている」と言うべきだろう。ここでは、初期の江藤は大江を評価していた、などと言っているが、大江自身は、江藤との蜜月は六カ月だけだったと言っている。沖縄自決の件で渡部と曽野を批判したあとで、さすがに曽野には「作品」があるから、渡部に作品がない、と曽野は抜かして書いている。「巨塊」を「巨魁」と書き間違えたとしつこく何度も書いているのは、集団自決に日本軍の命令があったなどと証明できないから糊塗しているだけ。
　西部が左翼の闘士から保守へ転向したとか、清水幾太郎もそうで福田から批判されたとか言っている間に、反戦署名などに参加した過去を懺悔したらどうかね。西部がくりかえし左翼だった過去を書いているのを、「よほど自慢したいらしい」と書いているが、江藤は祖父のことやら自分の名誉のことやら繰り返し書いているのだが、これも「よほど自慢したいらしい」と思うぞ。
　ただまあ、かつての「保守」に比べて、現在のそれが堕落しているのは事実で、ちゃんとした論争がなくなったのも事実。だが論争を封殺しているのが佐藤優なのだから、山崎にそれを言う資格はない。

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