文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

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1384734250*「曾野綾子研究14」ー渡嘉敷島、女子青年団団長・古波蔵蓉子とは何ものか?

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赤松嘉次隊長と、終始、行動を共にし 、最後に赤松部隊が米軍に投降する時は、赤松嘉次隊長と共に山を降りた古波蔵蓉子。投降勧告に来た伊江島の女たちの虐殺事件にも関わているはずだが、この女性、女子青年団団長・古波蔵蓉子の証言は少ない。古波蔵容子は、その後、伊仙蓉子という名前に変わっているが・・・。曾野綾子の『ある神話の背景』(『沖縄戦 渡嘉敷島 集団自決の真実』)の中で、例外的に、オリエンタリズム的視点から、「美化」され、「美しい魅力的な島の娘」として描かれている。


■■■■■■以下引用■■■■■■
十月八日は大詔奉戴日であった。
渡嘉敷村では、村民が慰問の演芸会をしてくれた。うるわしい南国の十月である。風の香がよかった。赤松大尉も、兵隊たちと肩を並べて見入る。民謡がおもしろい。それより目を見張ったのは、島の乙女たちであった。濡れ羽色の黒髪と黒いカスリの着物の胸許につつましく見える純白の襟が、匂うようであった。中に一人、小柄で、勝気そうな娘が、いろいろと指図している。大尉も二十五歳の青年に還っている。芋と豆とお茶が出た。そんなことも嬉しい。嘉き日であった。(p84)
■■■■■■引用終り■■■■■■

「小柄で、勝気そうな娘」が、おそらく古波蔵蓉子であったと思われる。さらに次の文章では、古波蔵蓉子という個人名が登場する。


■■■■■■以下引用■■■■■■
その頃、赤松大尉は、役場の近くで、よく小柄な娘に会った。会うと必ず向うから会釈するので、大尉も会釈を返した。事務室でひとの噂から、大尉はその娘の名を知った。古波蔵蓉子というのであった。女学校を出て、那覇首里で看護婦をしていたという。島では珍しいインテリであった。(p90)
■■■■■■引用終り■■■■■■

これでメロドラマの配役は決まったという感じの書き方である。しかも、それほど時間を経ることなく、さらに親密な関係になって行く。次は、赤松の手記から。


■■■■■■以下引用■■■■■■
その頃何かと部隊のことを容子さんに頼むため、比較的うちとけ、会いもし、よく話もしたり。時に池上見習士官と共に、余の宿舎に遊びに来たり、当番と共にトランプに興じたる事、また数回なり。
一月中旬頃、蓉子さん、かねての婚約者にして余の宿舎の一人息子にして、中支に出征しある与那嶺曹長と写真結婚をなす。(中略)
それより蓉子さん、余らと同じ家に住むよになったる為、接触も多く、おばさん、蓉子さん、当番と五人で、夕食後たのしき一時を過ごせしこと屡々なりき。
■■■■■■引用終り■■■■■■

赤松大尉と古波蔵蓉子。この二人の関係は、最後の米軍への投降まで続く。おそらく、一番の目撃者と思われるが、この女性・古波蔵蓉子の証言は、何故か、少ない。何故、証言が少ないのか?
赤松部隊が、米軍に投降する時、隊長の赤松嘉次は、「でっぷりと太って、愛人の女を連れて、山を降りた」と証言する伊江島住民がいる。たとえば・・・・・・。


■■■■■■以下引用■■■■■■
・・・彼は部下が言っていた通り壕から出て来た時は、肉がたれ落ちるほど肥え太り、しかも肥満し愛人を連れ、その後からユーレイのように、栄養失調でやっと歩いてぞろぞろ出て来るのを見たとき、私は手榴弾でもあったら、投げつけて叩き殺したい衝動に駆られました。彼を助けるために行った男三人と伊江島の娘三人をスパイだと言った。三人の娘が『海行かば』の歌を歌い終ると同時に虐殺しているのです。その親たちは今も生きてます。再び悲しみと怒りで心は煮えたぎり、胸をこがしています。
■■■■■■引用終り■■■■■■

この証言は、曾野綾子が、昭和四十五年四月七日の「沖縄タイムス」に掲載された伊江島住民の知念忠栄(41)からの投書を引用しているものだ。無論、曾野綾子は、この投書の内容を信用していない気配が見られる。
曾野綾子は、もう一つの投書も引用している。


■■■■■■以下引用■■■■■■
『ごうから赤松が出てきたらすぐわれわれの手に引き渡してくれ。われわれが処分するから』と伊江村民は願ったが、軍に拒否され無念の思いをした。その赤松元大尉の写真を三月二十七日の新聞で見た瞬間、丸々とみにくく太りすぎていた当時の顔の半分にも足りない細った顔にまずおどろいた。・・・》
■■■■■■引用終り■■■■■■

しかしながら、曾野綾子は、これらの投書を引用した後で、古波蔵蓉子や部下の知念元少尉らの証言をもとに、伊江島住民の証言の信憑性を疑っている。古波蔵蓉子は次のように証言している。


■■■■■■以下引用■■■■■■
隊長さんは、最後まで、武装解除の日まで副官を従えて当番兵も側につけておられた。太った女の人をいたなんて、本当におかしいですよ。(p271)
■■■■■■引用終り■■■■■■

古波蔵蓉子の証言はあまりにも赤松よりであるように見える。古波蔵蓉子の証言は信用できるだろうか。古波蔵蓉子の証言が少ないのは、ここに原因があるのではないか。つまり、古波蔵蓉子の証言は、だれも信用しないのではないか。
赤松擁護をする人たちにも、「投降する時、女はいなかった」とか、「女は一人、いた。それは女子青年団団長古波蔵蓉子であった」と、証言に混乱が見られる。しかし、曾野綾子はそこは追求しないで誤魔化している。つまり逃げている。
たとえば、赤松嘉次隊長が、山を降りる時、でっぷり太っていたはずがない、さらに投降する時、女を連れていたはずがない と自信満々に証言をする赤松部隊の隊員(知念元少尉ら)がいる、と曾野綾子は書いている。どちらが間違がっているか、どちらが正しいかについては、曾野綾子は書いているない。ただ、「女の話」については、赤松嘉次本人が、曾野綾子への手紙で、「投降する時、女性はいた、その女性は女子青年団団長の古波蔵容子だった」と証言・告白している。
ということは、言い換えれば、赤松部隊の隊員たちの証言も、必ずしも正しいわけではないということを意味している。
少なくとも、赤松嘉次は、米軍に投降する時、古波蔵蓉子らと共に山を降りたということ、そしてそれを見ていた住民がいたということ、この二つは否定できない事実と言って良いだろう。ここで問題が残る。何故、古波蔵蓉子は、「赤松隊長と一緒に投降したと証言しないのか、という問題である。できない背景があるのか。私には、疑問が残る。
さらに、この「赤松部隊投降事件」のおり、もう一つ重要な事件が起きている。渡嘉敷島村長・古波蔵惟好の「引き渡し」未遂事件である。赤松嘉次が、投降する時、投降の条件として渡嘉敷島村長・古波蔵惟好の引き渡しを要求したという事件である。ところが、米軍側が、これを拒否。赤松部隊に引き渡さなかったという事件である。渡嘉敷島村長・古波蔵惟好は、それ以前に、住民と共に、密かに米軍に投降していた。米軍は何故、拒否したのか。渡嘉敷島村長・古波蔵惟好は、何故、赤松嘉次に会うことを拒絶したのか。何か「不穏な空気」を感じたからだろう。つまり、赤松嘉次に、処刑・虐殺されることを恐れたからである。赤松嘉次本人は、曾野綾子らには、「最後に村長に挨拶したかっただけだ」というようなことを言っているらしいが、本当に「挨拶」だけだっただろうか。
曾野綾子は、『ある神話の背景』の中で、渡嘉敷島村長・古波蔵惟好に対しては、かなり辛辣であり、批判的な書き方をしている。渡嘉敷島村長・古波蔵惟好こそ「集団自決」の責任者であるかのように。無論、古波蔵村長は、赤松批判の筆頭に立っている人だ。もし、少しでも古波蔵村長の言い分を認めるとすれば、赤松は極悪非道の凶悪な隊長ということになる。 曾野綾子が、必死になって、古波蔵村長の言い分や証言を批判するはずである。しかし、もし、そうだとすれば、赤松部隊擁護という前提の元に、赤松部隊よりに傾きすぎた証言に依存した曾野綾子の『ある神話の背景』の記述も、あまり信用できないということになりはしないか?
(続く)


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