文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

沖縄集団自決論争と「お嬢さん」(2)ー「曾野綾子研究12」ー曾野綾子は、赤松嘉次の娘たちに対して、「令嬢」「お嬢さん」を連発している。何故か。テーマがテーマだけにこの言葉は、私には異様にかじられる。この「令嬢」と「お嬢さん」という言葉の使い方に曾野綾子の「戦略」が仕組まれているように見える。「令嬢」と「お嬢さん」という言葉の使い方に、「赤松隊長擁護」「赤松部隊擁護」への作為・意図が感じられないだろうか?『ある神話の背景』(『沖縄戦 渡嘉敷島 集団自決の真実』)から、抜き出して見る。

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p49
しかし中でも、とりわけ私の心をうったのは、赤松氏の令嬢のことだった。娘はもともと、父親を理解しにくい立場にいる、ましてや、悪玉呼ばわりされている父であったらなおさらであろう。そしてその父は、いったい、その島で何をしていたのか。
私は知りたいような気がし始めた。ただその場合、赤松令嬢に対する同情から或ることをことさら好意的に見ないように、自戒しなければならないと思った。
(曽野綾子『ある神話の背景』〈『沖縄渡嘉敷島「集団自決」の真実』に改題〉)

p324
私は加古川で下りて、或る日赤松家を訪ねたことがあった。赤松氏は赤松肥料店の経営者だが、家は店と別になっている。比較的新しい、明るい住居で、娘さんのように若い小柄な夫人と、二人のお嬢さんがいた。
上のお嬢さんは関西の大学を出て、今はお勤めをしているということだった。数学が好きで、コンピューター関係の仕事をしているという。このお嬢さんが、父のことを聞いて、一時はひどく悩んだのであった。お父さんはそんな残忍な人だったのかと、学校でも居たたまれない悲しみを味わった。下のお嬢さんはまだ学校で、ギターが好きである。二人とも、のびのびとした体つきで、お父さんっ子のように見える。
私は、二人のお嬢さんに、何の返答もできる立場にない。かりに噂が真実でもあっても、それに耐えて、父を愛して行くほかはないのだから、噂が嘘である場合もそれに耐えて、やはり父を愛して行ってほしい、と願うだけである。これは赤松家だけに対するこたえではない。誰にも同じように答えるほかはないことだろう。(同上)


この二つの文章だけを見ると、別に違和感はない。しかしながら、この文章を、『ある神話の背景』という文章群の中に置くと、どうだろうか。戦後の平和な家族の風景と、銃弾を浴びながら逃げまどう、戦時中の悲惨な日々。うまく書き分けているとみるべきだろうか。それとも、この文章には、書き手の思想的立場を暗示させるような、過剰な思い入れがあると読むべきだろうか。何故、ここで、わざわざ、「お嬢さん」や「令嬢」が登場しなければならなかったのか。この言葉に、何らかの「戦略」が隠されていないだろうか。私は、隠されていると思った。沖縄の「娘たち」が斬首され、穴に埋められるのは仕方ないが、大事な赤松家の「お嬢さん」たちを悲しませるわけにはいかない、と。
次は、曾野綾子が引用している赤松部隊の隊員の言葉である。

「私は隊長のお嬢さんが気の毒です。うちのお父さんはそんなひどいことをしたのだろうか、と言われましてね。一時は大分、悩まれたようです。我々が行って、いろいろ話をするうちに、少しわかって来られたようですが。」(同上)

赤松は、『青い海』1971年6月号に、「私たちを信じてほしい」と題する『手記』を発表しているが、そこにこんんなことを書いている。

 私には大学にいっている娘がある。あのいまわしい事件が報道されたあとで、娘が「お父ちやんは軍人だった。軍人は住民を守るのが義務ではないか」と私を難詰したことがある。その通りであり、いかにして島を死守し、最後の一兵まで闘うかという状態の中でも、われわれは住民をなるベく戦闘にまき込まないよう心掛けた。今更、弁解がましく当時のことを云々する意志は毛頭ないが、沖縄と本土の若い世代の人々にまで誤解されるのはつらい。このたび「青い海」の編集部から、現在の気持を書いてほしいとのたってのすすめもあり、「私達を信じてほしい」という気持から筆をとった次第である。
(赤松嘉次『手記』、『青い海』1971年6月号)


赤松嘉次第三戦隊帳と部下の隊員たちは、この前後、名古屋で、綿密な打ち合わせをしている。『青い海』1971年6月号に、この『手記』が発表され、そこで打ち合わせが行われている様子を写す写真が掲載されていることからも明らかなように、赤松部隊の名誉回復に向けての「情報工作活動」が話し合われたと思われる。曽野綾子が『ある神話の背景』を「諸君!」に連載開始するのは、1971/10からである。ちょっと場違いの感じのする「令嬢」「お嬢さん」発言は、周到に打ち合わせ済みの「作戦」「戦略」だったと思われる。深刻な「戦争責任」問題、つまり「集団自決」問題を論じるのに、それを中和させるためにも、「令嬢」「御嬢さん」という言葉の乱用が必要だったのであろう。「赤松嘉次隊長は、集団自決を命じるような冷酷無残な軍人ではなく、心優しい、平凡な『お父さん』なんですよ」と。



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大江健三郎の『沖縄ノート』と曾野綾子の『沖縄戦 渡嘉敷島 集団自決の真実』

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