東京ステーションホテルで。
昨日は帰郷するはずだったが、その気にならず、日程変更、自宅で休養。そこへ電話。東京駅前の丸善で待ち合わせ。岩田温氏や佐藤春雄氏、濱本博氏らと 飲み会。久しぶりに「東京駅」に降りた。江藤淳と蓮實重彦の対談『東京ステーションホテル』を思い出し ながら、フランス文学者で小林秀雄の恩師・辰野隆の父親「辰野金吾」設計の赤レンガ の駅ビルを見上げる。 渋谷駅や新宿駅、池袋駅・・・にはない趣と思想がある。駅周辺のビルも、皇居へ向かう通りも優雅だ。明治の「思想」が感じられる。駅ビルの中に吸い込まれて行く人の群れを見ていると、古い映画『終着駅テルミニ』を思い出す。あれは、ローマ駅だった。今まで考えたこともなかったが、僕には、忘れられない、思い出の駅が二つある。東京駅と鹿児島西駅(現「鹿児島中央駅」)だ。僕が高校の卒業式にも出ず、受験のために東京にへ向かったのは、「鹿児島西駅」だった。今でも僕は、年数回は、東京駅と鹿児島中央駅を往復している。飛行機よりも鉄道の旅にこだわっている。しかし残念ながら、十数年前に改築された鹿児島中央駅には、それに相応しい雰囲気と、駅ビルの思想がない。夕暮れの東京駅前で赤レンガの駅ビルを見上げながら、これから、待ち合わせは東京駅にしようと思うのだった。
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