文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

似非保守・福田和也の「小沢批判」のお粗末。


最近、すっかり存在感がなくなったのは自民党と自民系文化人達だが、その中でも「小沢一郎憎し」に凝り固まったまま勘違い発言を繰り返している代表的な自民系保守文化人の一人が福田和也氏であるが、早速、小沢一郎氏が関わったといわれる中国副主席・習近平氏の「天皇特例会見」問題で、何を早とちりしたのか、かなり物騒な発言をしている。「週刊文春」12月24日号で、「戦前だったら不敬、国賊と言われ、切腹して償わなければならないでしよう。」(P29)と、おそらく宮内庁サイドからの情報をそのまま鵜呑みにし、妄信した上で、充分に情報源や情報の政治性を分析吟味しないままに軽率に発言しているようだが、そもそも福田氏が言うように、戦前は、天皇問題で、そんなに頻繁に、政治家が、不敬発言を理由に「切腹」させられたものなのだろうか。誰と誰が「切腹」したのか、是非、知りたいものである。また福田氏は、小沢氏に関して、「歴史観、政治観の根本から腐っています。」とまで言うが、福田氏の恩師に当たる故・江藤淳が、熱烈に小沢一郎という政治家を買っていたことを忘れたのだろうか。江藤淳は、小沢一郎の何を高く評価し、政治家としての小沢一郎の再起に何を期待していたのだろうか。実は、福田氏は、元々は、小沢氏とは、「江藤淳の後継者」を自作自演する立場から、対談を行うなど、かなり親しい関係だったが、「自民党応援団」「石原慎太郎応援団」という政治的スタンスから、また小沢氏が権力から遠ざかり、野党暮らしで苦労していることから、「小沢離れ」を起こし、恩師を裏切る形で「反小沢」に転じたにすぎない。そして小沢の政治的復活はありえないだろうと見て、「溝に落ちた犬は撃て」とばかりに「小沢罵倒」を繰り返し、結局、政権交代による「小沢復権」に直面して、大恥をかくことになっというわけである。政治家の資質や才能、そして政局を読みそこなった福田氏は、引っ込みがつかなくなり、「毒を食らわば皿までも」というわけで、ますます「小沢罵倒」を繰り返すしかかなくなったというわけである。今更、福田氏の政治評論など、誰がまともに読むか。しかも今回は、福田氏が「忠誠」を誓っているらしい石原慎太郎氏までもが、小沢氏の「宮内庁長官発言」批判を支持しているではないか。福田氏の「歴史観、政治観こそ根本から腐っている。」と言うべきではないのか。というのは冗談だが、福田氏に限らず、自民党惨敗、民主党政権誕生後、行き場を失いつつある自民党系文化人達が、待ってましたとばかりに、「天皇」カードを振りかざして一斉に「小沢批判」、「民主党批判」を繰り広げ始めているわけだが、この騒動も、所詮は、宮内庁や外務省も絡んでの、似非保守文化人たちによる、なにやらお粗末な出来レースの感がしなくもない。「小沢の憲法解釈は間違っている」と、共産党の志位委員長や俄法律家達(百地章など)が、天皇の「国事行為」と「公的行為」の差異や区別を騒ぎ立てているのも、「木を見て森を見ない」議論の類であって、問題の本質を捉えているとは言いがたい。そもそも天皇陛下を中心とする皇室外交なるものが「国事行為」ではなく「公的行為」だとすれば、その場合の公的行為の責任の所在は、何処にあるということになるのか。皇室外交その他の公的行為は、政府や国民とは無関係なのか。とすれば、宮内庁の責任においてすべての皇室外交は取り仕切られることになるのか。たとえば、かつての天皇陛下の外国訪問、特に中国ご訪問等は、天皇の御意思だったのか。それとも宮内庁長官の助言によるものだったのか。天皇の外国訪問をはじめとする皇室外交全般は、政府や国民とは関係な非政治的行為だったのか。そんなはずはない。天皇陛下は外国訪問の時は、「国家元首」としての待遇を受けるのが慣例であるが、その折の「天皇のお言葉」の文案は、誰が作成するのか。そもそも、「宮内庁長官」の任命権者は誰なのか。自民党政権時代の「皇室外交」は、政府とは無関係だったとでも言うのか。自民党こそ、天皇を政治利用し続けてきたのではないのか。というわけで、僕の考えでは、大筋のところで、小沢発言は間違っていない。小沢発言は、言うまでもなく、「天皇の名前を隠れ蓑にして政治的な発言を繰り返す」ところの君側の奸・羽毛田信吾宮内庁長官に向けられたものであり、天皇陛下に向けられたものではない。福田氏は、「内閣は、陛下に助言はできても、命令はできるわけがない」と、小沢氏があたかも天皇に、習近平副主席との会見を命令したかのように解釈しているが、小沢発言の中に「命令」に類する言葉はなく、小沢氏はあくまでも「内閣の助言と承認」と言っている。福田氏は、また「そもそも、総理でも閣僚でもない一党の幹事長というだけの人間が、皇室の営為に口を出し、ルールをねじ曲げたということは許されない」とも言っているが、その情報の情報源は何処なのか。証拠でもあるのか。羽毛田信吾宮内庁長官と交渉したのは、平野官房長官である。そもそも、自衛隊という軍隊の存在を、「軍隊ではない」という理由で「合憲」と解釈してきたような自民党系御用法学者たちに憲法解釈など聞いてもしようがないだろう。ところで僕は、天皇という存在を「超法規的存在」として、治外法権下に位置づけることに反対ではない。天皇という存在は、憲法を超越しているべきである。しかし、それならば、天皇陛下は、世俗的な次元での政治的存在であるべきではないと思う。(続く)



参考文献
江藤淳「それでも『小沢』に期待する。」(「諸君!」1993/1)
http://www.love-nippon.com/PDF/soredemo_090331.pdf
江藤淳小沢一郎対談「政治家の志とは何か」(「VOICE」1991/1)
http://www.love-nippon.com/PDF/Voice_9301.pdf





一日一回、クリックをお願いします!!!


人気ブログランキングへにほんブログ村 政治ブロへ



■参考資料(産経新聞ウェブ)

天皇の特例会見問題で有識者らが小沢氏や首相官邸の対応を批判
2009.12.17 18:02

このニュースのトピックス:小沢一郎
 自民党の「天皇陛下の政治利用検証緊急特命委員会」(委員長・石破茂政調会長)は17日、党本部で会合を開いた。出席した有識者らは、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との「特例会見」を働きかけた民主党小沢一郎幹事長や首相官邸サイドを批判した。

 大原康男国学院大教授(皇室制度史)は特例会見があった15日は宮中で「賢所御神楽(かしこどころみかぐら)の儀」の祭祀が行われたことを明らかにし、「(お出ましになった)天皇陛下がお心を安らかに保たれなければならない日だった」と語った。小沢氏が「30日ルール」を「法律ではない」と発言したことには「宮内庁宮内庁法第2条に基づきルールを作った」と反論した。

 また「他の国にはルールを守るよう求め、中国の無理強いだけを認めるのは極めて卑屈な政治的配慮だ」と、首相らを批判した。

 百地章日大教授(憲法学)は「30日ルールは、自社さ連立政権で、鳩山由紀夫首相が新党さきがけ代表幹事だったときにできた」と述べた。羽毛田信吾宮内庁長官が小沢氏の辞任要求を拒否したことについては「30日ルールを無視した内閣の政治的要求を拒否するのは当然だ」と擁護した。 また、外務省側は特例会見までの経緯について口頭で追加説明したが、文書での回答は岡田克也外相の指示を理由に拒否した。

天皇の「国事行為」についての志位共産党委員長の憲法解釈(「産経ニュース」より)

小沢氏の「国事行為」発言が波紋 共産委員長「小沢氏は憲法読むべきだ」
2009.12.15 20:50

このニュースのトピックス:民主党



厳しい表情で記者の質問を聞く民主党小沢幹事長=14日午後、東京・永田町の党本部 民主党小沢一郎幹事長が、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との特例会見を、憲法の定める天皇の「国事行為」と断じた発言が注目を集めている。14日の記者会見での「会見は政治利用ではないか」との質問に対し、国事行為そのものをよく把握しないまま「マスコミの理解がおかしい」と決めつけた発言だ。共産党志位和夫委員長は15日、記者団に「外国賓客と天皇との会見は国事行為ではない。小沢さんこそ憲法をよく読むべきだ」と述べた

 「陛下の行為は、国民が選んだ内閣の助言と承認で行われるんだ、すべて」

 小沢氏は14日の記者会見でこう断言した。

 憲法天皇が行う国事行為として、国会召集や衆院解散などを列挙している。外交文書の認証や外国大使・公使の接受も含まれるが、外国賓客との会見は国事行為ではなく、もっと天皇の意思を反映した「公的行為」に分類される。

 公的行為は、国事行為ではなく純然たる私的行為でもない国の象徴としての公的な活動と解釈される。(1)国政に影響を及ぼさないこと(2)天皇の意思が大きな意味を持つ−の2点を要点としており、具体的には、国際親善活動のほか、全国植樹祭戦没者追悼式へのご出席などがこの公的行為に該当する。

 公的行為は、小沢氏がいう「内閣の助言と承認」を必要としない。また、国事行為の場合は天皇に拒否権はないが、公的行為には憲法上の規定がないため、必ずしもその限りではない。

 皇室関係法令に詳しい大原康男国学院大教授は「小沢氏は国事行為をよく理解せずに質問者を恫喝(どうかつ)しているようだ。天皇は政権のいうことを聞けばいいと言っているようにも聞こえる。いずれにしろ不勉強であり、政治利用そのものの発言だ」と指摘している。(宮下日出男)

■岡田外相、天皇の特例会見「国事行為にあたらず」 
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20091218AT3S1800R18122009.html

岡田克也外相は18日の記者会見で、天皇陛下が中国の習近平国家副主席と特例で会見されたことに関して「国事行為は憲法に規定されたものなので、国事行為ではない。 公的行為というのが普通の解釈だ」と国事行為にあたらないとの認識を示した

民主党小沢一郎幹事長は外国要人との会見は内閣の助言と承認による
「国事行為だ」として、特例会見を求めた鳩山内閣の対応は問題ないと主張していた。(20:01)