文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

桜井よしこー保守論壇を「愚者の楽園」にしたのは誰か?

僕は、今、近々刊行予定の本を書いているのだが、中身は、「保守論壇を『愚者の楽園』にしたのは誰か?」というテーマの下に、保守論壇や保守思想家、保守言論人を批判したもので、ここ、十数年にわたって保守論壇や保守ジャーナリズムを舞台に繰り広げられてきた「一億総保守化」「ネット右翼やマンガ右翼の氾濫と堕落」「保守政治家や保守思想家の氾濫と堕落」なる現象を、思想的レベルにまで踏み込んで、批判的に総括するものである。そこで取り上げる予定の言論人は、小林よしのり西部邁中西輝政渡部昇一など、ここ十数年、論壇雑誌やテレビ、新聞などに頻繁に登場し、それなりの影響力を持っていたはずの男性の論客たちであるが、その中で、女性論客として例外的に桜井よしこも取り上げる予定だ。僕は、「保守論壇の『愚者の楽園』化」の真犯人は、西部邁であり、その表の実行部隊の中心人物が小林よしのりだと思っているが、小林よしのりに優るとも劣らずに、保守論壇の中心人物の一人として、表舞台で華々しく「保守論壇の『愚者の楽園』化」に貢献し、保守論壇や、あるいはネット右翼やマンガ右翼の若者たちにそれなりの影響力を保持してきたのが、テレビの元ニュースキャスターで、エイズ問題で頭角を現し、現在は保守系ジャーナリストとして活躍する桜井よしこだったと思う。さて、その桜井よしこが、休刊目前の『諸君!』5月後の巻頭座談会「麻生太郎よ、保守の気骨を見せてくれ」に登場し、「保守とは何か」について議論しているので、見てみたい。冒頭から「『保守政治家』はなぜ次々に失脚するのか」というテーマで、宮崎哲弥を司会ににして、桜田淳を相手に丁々発止の議論を繰り広げているが、すでにそこに、桜井よしこの思想的陥穽と限界は、明瞭に露呈している。僕は、櫻田淳という政治評論家の日頃の議論に全面的に賛成しているわけではないが、次の発言は、僕の考え方にもかなり近く、共感する部分が少なくないが、桜井よしこは、それに、自分が批判されたかのように錯覚し、激しく反発しているようである。まず、櫻田淳の発言、「私が気持ち悪いと思うのは、近年、みずから『保守』と名乗る政治家が増えたことです。私が理解する限りは、保守主義政党としての自由民主党は、『立党宣言』(一九九五年)から『新綱領』(二〇〇五年)に至るまで『保守』を謳ったことは一度もありません。吉田はもとより、鳩山一郎岸信介、あるいは『三角大福中』に至るまで、歴代自民党総裁は明らかに保守主義者でしょうが、私は彼等が自ら『保守』とアピールした例は寡聞にして知らない。保守を叫ぶ政治家が目立つようになったのは一九九〇年代後半以降、つい最近のことですよ。そもそも『俺は○○主義者だ』と叫ぶような御仁に、本物がいた例がない(苦笑)。なんともいかがわしい現象です。」 言うまでもなく、ここで、櫻田淳は、思想的にも政治的にも、きわめて重要な問題点を指摘しているが、つまり僕も、ほぼ櫻田淳の発言内容のように考えているのだが、桜井よしこは、そうではないらしい。桜井よしこの発言、「その認識はどうでしょうか。冷戦構造が厳然と存在していた頃は、日本は西側社会の一員として米国に従順であればよかった。したがって、当時の政治家はあえて自分から『保守』の旗を掲げる必要はなく、経済成長のみに邁進していればよかった。しかしベルリンの壁崩壊以降、既存の価値観が次々と崩壊していく中で、いったい日本は何によって立つ国なのか、否応なく考えさせられるようになった。つまり九十年代以降、『日本』という概念の再構築を迫られたのです。その過程で『保守』『リベラル』という対立軸が生まれてきたのであって、保守を標榜することは少しもいかがわしくない。」 これが桜井よしこの九十年代以降の政治状況分析だが、「ベルリンの壁崩壊以降」に、何かが大きく変化し、変質したことは明らかだが、僕に言わせれば、桜井よしこの分析は、あまりにも単純・素朴だと言わなければならない。「ベルリンの壁崩壊以降」に、「『日本』という概念の再構築を迫られた…」のは事実かもしれないが、そしてそこで、桜井よしこ等、保守論壇の面々は、愚かにも政治的『保守』と小泉的『改革』を選択したのであったわけだが、しかるに桜井よしこ等は、小泉純一郎安倍晋三、あるいは麻生太郎という政治家たちに、それを期待したはずだったが、結果は今更、言うまでもなく、悲惨そのものというしかない。何処が間違っていたのか。誰が間違っていたのか。桜井よしこは、自分たちの才能の欠如と読み間違いの事実を認めるのではなく、逆に、周辺に仮想敵を作り、それを批判・攻撃するといういつものパターンを繰り返すことで延命しようとしているのだろうが、残念ながら、もはや手遅れであろう。(続く)




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