文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

漆間副長官発言「誤解」で済む話では到底ない。その認識の甘さには、驚き、あきれるほかない。


「事態の重大さをまるで分かっていないのではないか。もちろん、西松建設の違法献金事件に関して、漆間巌官房副長官が、自民党議員には事件は波及しないと発言した問題だ。」という毎日新聞の社説は、内閣官房副長官漆間巌発言の政治的「いかがわしさ」を鋭く抉り出している。麻生首相が、内閣官房副長官漆間巌氏を、更迭できないのは、何故か。おそらく、今日、韓国の釜山でおこなわれる拉致被害者家族と、元北朝鮮工作員で、現在、韓国に住んでいるキム・ヨンヒとの「対面劇」とやらも、「対面」それ自体は喜ばしいことだが、国内の政治的危機を隠蔽するための、内閣官房副長官漆間巌氏等が仕掛た政治ショーではないのか。内閣官房副長官としての漆間巌氏は、一般的には官僚機構のトップが集まる事務次官会議を仕切る役割だが、麻生内閣において、それとは違う諜報的、つまり秘密警察的な役割を、たとえば民主党議員らの行動監視役、あるいは秘密情報の収集役を担わされているのだ。麻生内閣としては、あっさりと、更迭するわけにはいかないというわけである。森元首相が、突然、沖縄県で、日教組出身の輿石東民主党参院議員会長について、「違法なカネを集めて当選してきたことは皆さんもご存じの通りだ」とトンデモ発言をしたのも、その情報源は、内閣官房副長官漆間巌氏ではないのか。麻生首相は、元警察庁長官という経歴を持つ漆間巌氏を、内閣官房副長官として内閣に取り込むことによって、他党の政治家や、あるいは国民を、監視・追跡する秘密警察内閣を目指したのではないのか。そしてその成果が、民主党党首の「秘書逮捕事件」であり、拉致被害者家族と元工作員キム・ヨンヒとの「対面劇」なのではないのか。

社説:漆間副長官発言 「誤解」で済む話では到底ない
毎日新聞


 事態の重大さをまるで分かっていないのではないか。もちろん、西松建設の違法献金事件に関して、漆間巌官房副長官が、自民党議員には事件は波及しないと発言した問題だ。

 漆間氏は9日の参院予算委員会で「真意が伝わらない形で報道された」「誤解して受け取られた」などと釈明し、麻生太郎首相も一時、「オフレコの懇談の内容が誤って報じられている」と誤報であるかのように語った。首相はその後、「誤報」部分こそ撤回したが、いずれにしても今回の説明で済まされる話では到底ない。

 漆間氏の発言は小沢一郎民主党代表の公設秘書が東京地検特捜部に政治資金規正法違反容疑で3日逮捕されたのを受けたものだ。5日夕、記者団から「バランスを考えたら自民党の方も(捜査を)やるとの見方もある」と聞かれた漆間氏は「自民党の方は金額が違いますからね。この件で自民党の方までやることはないと思いますよ」と答えた。

 発言者の名を出さない約束のうえでの発言でも記者は直ちにメモを残す。ところが、漆間氏は「質問の記憶もない」「ないという記憶になった」と不可解な説明までしている。各社の記者がそろって捏造(ねつぞう)したとでもいうのだろうか。

 漆間氏は政府の事務方のトップであり、警察庁長官経験者だ。しかも、衆院選を間近に控えた時期に野党党首の秘書を逮捕することには、「政治的な意図があるのでは」と感じている国民も少なくないなかでの発言なのだ。

 国民はどう受け止めただろう。「事件は内閣が指揮しているのではないか」、あるいは「少なくとも捜査情報は首相官邸にもたらされており、それが麻生首相衆院を解散する時期を判断する材料になっているのではないか」と疑問を持った人も多いだろう。

 漆間氏は9日「情報もない」と否定したが、これまでの説明では疑念は晴れていない。捜査の公正さ、東京地検の独立性を否定するような発言をした責任は免れない。

 漆間氏は「一般論として話した」ともいう。だが、実際には企業献金と認識していながら、別の政治団体からの献金だと政治資金収支報告書にうその記載をしたかどうかが今回の事件の核心だ。漆間氏の言うように献金額の多寡が判断基準ではないはずで、一般論としても無理がある。

 では、政敵のスキャンダルに有頂天になって軽はずみに希望的な推測を語ったのだろうか。だとすれば、また深刻だ。中川昭一前財務・金融担当相の例を出すまでもない。それは立場をわきまえない無責任な言動が続く麻生内閣を象徴していよう。

 麻生首相は、漆間氏に対しては厳重注意で落着させる意向のようだ。その認識の甘さには、驚き、あきれるほかない。