文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

グルジア戦争とスターリンとドストエフスキー

少しパソコンから離れた生活をしていると、パソコンそのものへの関心を失いそうになるものらしく、僕の場合も、原稿の締め切りや日常の雑用にまぎれている間に、あれほど固執し続けたブログによる情報発信を中心としたパソコン生活へのこだわりも、いつのまにか熱が冷め、無関心になり、野山の散歩とオリンピックと高校野球のテレビ中継に明け暮れた田舎生活の延長であろうか、早朝の犬の散歩の後は、テレビのニュース番組を見ながら、のんびり暮らすのも悪くはないな、と思い始めている自分を発見し、改めて愕然となった。というのも、近くロシア旅行へ出かけるため、日程調整など、事前打ち合わせを兼ねて目白の某所に集まったところ、ロシア旅行の話はそっちのけで、文学の話に熱中していたら、突然、「ブログ更新してないけど、どうしたの?」と訊かれ、返事に窮してしまったのであった。ところで、二週間の田舎暮らしで、すっかりペースが、田舎暮らしのペースになってしまったところに、今度は一週間のロシア旅行である。ロシアは、今、グルジア南オセチア等、いわゆるグルジア国内の自治州をめぐって、アメリカやヨーロッパをも巻き込んで、ほぼ「戦争状態」にあり、ある意味では第三次世界大戦に向かって一触即発の危機にあり、海外旅行者にとっては、かなりの危険地域だと思うが、むしろ僕のような者にしてみれば、これは絶好のタイミングであり、戦時下の首都モスクワ等の雰囲気も、かなり味わえるのではないか、などと呑気に構えているのだが、大丈夫だろうか。それにしても今回のグルジア戦争は、西側諸国のロシア非難のマスコミ情報にもかかわらず、明らかにロシアのプーチンの作戦勝ちと言ってよく、あらためてロシアという国のプーチンによる「偉大なるロシア」を目指す「再構築作業」のスピードの速さを認識しないわけには行かないだろう。北京オリンピックで愛想を振り撒いていたブッシュ・アメリカ大統領の能天気振りと比較するまでもなく、プーチン・ロシア前大統領の国際政治感覚は、スターリンも顔負けの「ロシア・リアリズム」と言ってよい。無論、グルジアと言えば、スターリンの出身地である。実は、今回のロシア旅行はモスクワとサンクトペテルブルグを中心とした旅行で、一番の目的は、ドストエフスキーであるが、ドストエフスキー文学の根本テーマが「政治」であり「革命」であることを考慮するまでもなく、ドストエフスキースターリンは切っても切れない関係にある。ドストエフスキーの文学は、粛清と恐怖政治からなるスターリニズムの到来を予言したとか、来るべき革命の悪としてのスターリニズムを予言的に批判したとかいう、欧米の人権主義的な、あるいは民主主義的な思想レベルの問題ではない。ネオ・スターニストとしてのプーチンの「戦争」は、欧米を対抗軸とした「新冷戦」戦略に基づいているかどうかは、ともかくとして、プーチンが、疲弊する欧米を相手に戦争も辞さないという覚悟を示した時点で、プーチンの思想的、政治的勝利と見ていいのではないか。(続く)



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