文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

木村剛『日本資本主義の哲学』に「哲学」なし。(その2)


本稿は、木村剛の『日本資本主義の哲学』の経済哲学や経政策をめぐって、「日本資 本主義論」、ないしは純粋に「資本主義論」そのものについて議論をすすめていく予 定であった。しかし、前回の記事を配信後、たまたまというか偶然と言うか、「週刊 現代」(2/18号)に、「木村剛『不透明な融資5億円』」という記事が掲載された。前 回、私が漠然と指摘した木村剛の「モラルとルール」破りの実態を、具体的な経済犯 罪疑惑として告発したものである。


さて、今更言うまでもなく、私の関心は、木村剛における権力(竹中平蔵小泉純一郎…)との癒着の実態とそれを悪用した経済犯罪の実態を経済犯罪や政治スキャンダ ルとして告発することにはない。そんなことは新聞記者や経済ジャーナリストに任せ ておけばいい。 私が関心を持つのは、小泉・竹中一派の「経済構造改革」に、竹中平蔵との親密な人 脈をステップにして深く関与し、バブル以後の日本経済を壊滅的な破綻状態に追い込 んだ思想的責任、経済学的責任と言う問題である。つまり、小泉構造改革に重要な役 割を果たしてきたと思われる木村剛という「コンサルタント」の経済思想と経済理論 の分析と解明である。とは言っても木村剛に経済犯罪疑惑が具体的にあるとすれば、 その経済犯罪の実態を無視し木村理論の分析や解明ができるわけではない。


私が、前回指摘したように、木村剛の経済思想の核心は、実は資本主義の「モラルと ルール」を守れ…という経済的倫理主義にしかない。その木村剛が、晋本主義の「モ ラルとルール」を踏み外しているとすれば、何をかいわんや、ということになる。つまり、木村剛という「コンサルタント」の、「コンサルタント」としての自滅であ る。とすれば、木村剛のような、経済理論や経済思想のレベルにおいて怪しいだけで なく、経営コンサルタントしてもかなりいかがわしい人物が、その一翼を担って主導 してきた「小泉構造改革」なるものが、改めて問い直されなければならないというこ とになろう。


つまり、いつでも「リーダーが腹を切る」覚悟の元に運営されてきた、いわゆる「古 き良き日本資本主義」の時代が終わり、経営者にも従業員にも「モラルとルール」を 守るという自覚がなくなり、機能麻痺に陥ったった現代の日本資本主義 …、そこに新 しい「モラルとルール」の確立を主張して颯爽と登場してきたのが木村剛なのだ。そ の木村剛が、政治権力との個人的な人脈を悪用して、怪しげな銀行を設立し、しかも 内紛の末その銀行の経営の実権を握り、さらには身内の企業に不正融資を繰り返して いた…とすれば。


週刊現代」によると、木村剛をめぐる政治的、経済的スキャンダルはかなり深刻で ある。 たとえば、こういう記事がある。木村が会長を勤める日本振興銀行の関係者の発言である。
《木村会長が突然、『西原(正雄金融庁検査局長)だけは絶対に許さん!』と怒 鳴りだしたんです。…》


これは、木村が、昨年11月から続いた金融庁の検査や、朝日新聞(1/1、1/30)による「木村会長による親族企業への不正融資疑惑」報道などに対して苛立ち、激昂した時 の発言らしい。むろん、この木村の激昂発言の意味は深い。では、この木村の発言は 何を意味しているのか。言うまでもなく、これは私が前回も指摘したように、木村が 「金融庁に顔が効く…」、あるいは「小泉政権中枢に顔が効く…」ということを言外 に匂わせているということだ。言い換えれば、「金融庁も怖くないぞ …」という自信 と確信である。


『西原(正雄金融庁検査局長)だけは絶対に許さん!』という木村暴言の自信と確信の 根拠はどこにあるのか。その謎を解く鍵を、「切り込み隊長」、こと山本一郎のブログから引用 する。

《 木村氏がマスメディアや財界において一種特殊なヘゲモニーを握っているのは、 単純に二人の後ろ盾を得ているからである。一人は竹中平蔵大臣、もう一人は宮崎哲 弥氏であると思われる。どちらの人物も、木村氏のパワーを高めることにおいて非常 に貢献したようだが、ここで問題となるのは竹中氏である。竹中氏は木村氏を金融再生プロジェクト(金融庁金融分野緊急対応戦略PTメン バー)につけるなど公のプロジェクトチームのメンバーに迎え入れ実質的な「箔づ け」を行い、金融危機が喧伝された01年には上場企業のなかで倒産リスクの高い不良 債権予備軍である「30社リスト」なるものを提示したとされ一躍有名になった。不良 債権処理を進める過程で借入金の多い不振企業の淘汰を促したものであるという理解 がなされる一方、キャッシュフローの回っている大手企業が借入金が多いからといっ てすぐさま危険視するのもどうかという議論もあったのが記憶に新しい(なお、木村 氏が提示したといわれる危険な「30社リスト」のうち、三年後実際に倒産したのは佐 藤工業、青木建設、カネボウの三社に過ぎない)。》

http://hamnidak.exblog.jp/3573786
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