文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

宮崎哲弥のネットブログ批判はアナクロニズムだ。


●ちょっと古いネタだが、宮崎哲弥が、「朝日新聞」(5/10)で、ネットやブログ、あるいはネット保守、ネット右翼の台頭について書いていた。思考力や批判力を放棄したネット保守やネット右翼の「全員一致のファシズム」的言説の「暴走」への宮崎哲弥の批判には必ずしも反対ではないが、ネットやブログの役割への批判には賛成できない。


おそらくジャーナリストとしての宮崎哲弥自身は、テレビ出演や雑誌原稿の執筆が中心で、ネットやブログには依存していないだろうし、またネットやブログに対してたいして期待もしていないだろう。それはそれでよい。しかし・・・。


先月だったと思うが、「NEWSWEEK」に「ブログは新聞を殺すか」という特集が組まれたことがあったが、宮崎のネット・ブログ批判を読んですぐに、僕はそれを思い出した。「あー、あれだなー」というわけだ。


要するに、「売れっ子電波芸者」(田原総一郎…)を目指す宮崎哲弥としては、「新聞・テレビ・雑誌」依存型文化人という立場からそれを擁護する論調を機軸に、ネットやブログを批判していることが推測できる。あまり好きな言葉ではないが、宮崎のネット・ブログ批判は、新聞・テレビ・雑誌など、いわゆる既存のジャーナリズムの「既得権益」擁護論という意味を担っているというわけだ。


僕の立場はまつたく違う。ネットやブログの批評性や思想性のレベルがどんなに低かろうと高かろうと、僕はそこには問題はない、と思っている。問題は何処にあるのか。問題は、「情報操作」「情報統制」「言論弾圧」から自由であるかどうか、にある。


つまり、新聞・テレビ・雑誌という既存のジャーナリズムに言論の自由がないとは言わないが、容易に言論操作、情報統制、言論弾圧の対象になる可能性を秘めているということだ。小泉政権下の新聞・雑誌・テレビが、「柔らかな情報統制・情報操作」体制の下にあることは明らかだ。


宮崎にはそれが見えていない。いや、実はそれを自覚していない、あるいは自覚していない振りをしているというところにジャーナリストとしての宮崎哲弥の限界と可能性(笑)がある。言い換えれば、宮崎哲弥が「売れっ子電波芸者」としてジャーナリズムで活躍できる根拠はそこにある。つまり、一種の、「権力や体制に魂を売ったジャーナリリスト」(笑)であるが故に、メディアとしては「使いやすいキャラ…」というわけである。


僕がここで思い出すのは、文学の世界や文壇における「同人雑誌」という問題だ。自分達の作品を自由に発表し、掲載し、売るメディアとしての同人雑誌である。同人雑誌と言っても、今は流行らないが、かつては僕の尊敬する小林秀雄埴谷雄高も、吉本隆明江藤淳も、柄谷行人も、いずれも既存の文藝ジャーナリズムで活躍していながら、一方で身銭を切ってまでも、「同人雑誌」的なものをやっていたということだ。何故だろう。


一流と思われる作家や批評家に限って同人雑誌をやりたがる。言い換えれば、既存の文藝雑誌や出版社、編集者と一線を画したがっているということだ。それは、やはり、既存のジャーナリズムや出版社から自由でありたいと思ってるからだろう。


たとえば、そういう同人雑誌の典型的な例として、吉本隆明は自立雑誌というコンセプトの元に「試行」という雑誌を運営していた。「一時代」を築いた雑誌である。吉本の主要論文は、ほとんどそこに掲載された。つまり文芸雑誌や文藝ジャーナリズムが相手にしないような重厚な論文はそこにしか発表する場所がなかったということだ。


僕のネット・ブログ論はそこから始まる。今は、吉本隆明が身銭を切って細々と運営していた同人雑誌(「試行」)の代わりに、ネットやブログがあるというわけだ。少なくとも、僕はそういう意図の下にネットやブログを活用している。誰が何と言おうと、言うまいと、僕にとっては、ブログは、吉本隆明の「試行」なのだ。そういうことを自覚した時、僕は、物書きのはしくれの一人として随分、楽になった。自由に書き、表現し、読者に伝える場所が確保できた、と思ったからだ。


新聞・雑誌・テレビという既存のジャーナリズムが、ネットやブログにおける自由闊達な言論を恐れ、それを「品格」とか「公正」という美名の下に、批判し、排除しようとするのは、なぜか。もう、わかるだろう。その思想内容や批評性のレベルが問題なのではない。問題なのは、権力や政府や団体や、あるいは時代の流行思想などから自由になれるかどうか、なのだ。


テレビや新聞や雑誌が恐れ、批判し、弾圧しようとするのは、その言論活動の自由という問題なのだ。その既存ジャーナリズム、既存メディアの「パシリ役」をやらせられているのが宮崎哲弥のような「電波芸者予備軍」のジャーナリストだというわけだ。


参考ブログ。「極右評論」
http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/archives/cat_50013991.html





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