文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

●読者からのメール。

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拝啓、山崎行太郎

●本日はわたしごときの駄文を、
大胆かつ緻密な山崎様のブログ・日記に載せて
いただきまして、まことに恐縮の至りでございます。

昼間書店にて「小林秀雄ベルグソン」の本を購入しましたが、
ちらっと見たところ、本を取り落とさんばかりに驚きました。

なぜなら、高校の時、小林の本を読んだ私は、
大学進学に物理学科を選んだからです。
うーむ、何か深いえにしを感じますね〜(笑

ただいま仕事先にて、
帰宅後夜間に続きのメールをさせていただきますので、
どうかご了承くださいませ。
それでは。

●前便の続きが遅くなり、申し訳ありません。
昨日昼間、堂島じゅんく堂で求めた「小林秀雄ベルクソン」(増補版)に
やっと一通り目を通させていただきました。
う〜ん、なんという圧倒的な筆力!
しかも、いままで全く聞いたことのない切り口の小林秀雄三島由紀夫
そこに居るではありませんか、、、。読書中、精神はずーっと高揚しっ放しで、ずいぶん若返ったような感じがします(笑

前便でちらっと申しましたが、わたしは大学で物理を専攻しました。
しかし本書では、若き日の小林秀雄も実は、現代物理の基礎理論を精査しており、彼のそれ以後の思索における原理的徹底性の基礎となっていった、という意味のことが書かれてあるのを見まして、ある意味たいへん嬉しい思いをいたしました。

思えば、高校のとき、粒子性と波動性の二相問題、宇宙の膨張と収縮の同時性、無のはずの真空こそが素粒子で充たされ(ディラックの海)有である通常粒子の存在は充の空間に対する欠落であると捉え得ること等々、古典物理の地平から大きく離脱し、通常の人間の論理では中々捉えきれない理論モデル(というか存在論哲学)を、どう思惟するかにこころが占有されていたものでした。

結局、わたしの場合、多少の経験もあり、意識存在としての人間は、論理的整合性とは別個に、直接的・全的にこれら二元論的現象を矛盾なく「直知」し得るのではないか。
それが、西田哲学でいうところの「主客未分の直知?」に似ているのであれば、なんらかの特殊な身体訓練や意識訓練で恒常的にそこに至る道が拓けるのではないかと睨んで(笑)、今日に至っているのですが、今後本書で得たいくつかの知見が、時間とともに自分の中で醗酵していくのを見る楽しみが増えて喜んでおります。

遠藤さんは小沢征爾に関して著作もあるのですが、ここで小沢をもうひとりの指揮者宇宿允人さんと対置させてみると、前出のグローバル派vs民族派の図式に入ってくるのかもしれません。宇宿さんは、楽団員に渡す楽譜は全部自分の手書き。
演奏会場の設営も金槌もって全部自分が関わります。
氏の父親が京都の国宝級の美術を修理していた表装職人で、子も音作りにその技術を応用しているのだろうと思われます。この宇宿氏、匂いが小林さんとどこかしら似ているのですよね〜。白洲正子さんが生きていらしたら、この人の演奏を聞いてどう思われるか、お尋ねしたかったところではあります。

近年、亀井静香西村眞悟といった代表的民族派議員に粛清の手が伸びていますが、
明治6年の政変以後の、政府による挑発と粛清の状況と似てきたような気がします
。コイズミの父、鮫島純也は加世田の出身で、万世小学校に像が立っておりますが
、あの万世が「マンセー」に見えてきて仕方ない今日この頃です(笑)今年、頭山満生誕百五十年祭があり、葦津珍彦の本も見直されてきているようなので、岡潔を絶賛する藤原正彦氏の力とともに、止まる事を知らない日本的感性の凋落をなんとか防いで欲しいと危機感をもって思っています。

以上、まったく散漫な文章になってしまいましたが、このままお送りさせていただきます。

今回は確定申告が済んでから、気軽にメールを打ったことから意外な展開になり、収穫→大でありました。

「文藝や哲学を知らずして、政治や経済を語るなかれ」は、おそらくその通りだと思いますが、音楽も、政治を知らないと、作者の意図とはかけ離れた、ある意味健康で無邪気な(爆)演奏をしてしまうということを、最近遠藤浩一さんの解説で知りました。
(チャンネル桜「解体新書21」、西洋音楽とからごころシリーズ、ショスタコビッチの五番に関する知見)。

と思って、西尾幹二さんの日録を覗くと、やはり確定申告でつくる会お別れ宣言以降久々のご発言がありました。この時期、皆さん開放的になるんでしょうね。

それでは、時折メールさせていただきますので、またよろしくお願いいたします。どうか、山崎先生のご活躍が天にとどきますことを衷心よりお祈り申し上げ、失礼させていただきます。

(SK生)
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●(from-山崎行太郎)
懇切丁寧なメール、ありがとうございます。拙著をお買い求めていただいた上に、専門的な立場から懇切丁寧な批評、感激しました。「小林秀雄理論物理学」という問題は、若い時に偶然に問題を発見し、集中的に考えてみたものです。自分で言うのもなんですが、この本は自信作で、この本を書けて出版できただけでも、生まれてきた価値があったと思っています。僕の本籍地は枕崎の別府で、知覧の境界に近く、知覧の「大隣」のすぐ近くです。最近、頻繁に田舎に帰り、田舎暮らしを楽しんでいます。知覧や頴娃方面にもよくドライブに出かけます。浅学非才の弱輩ですが今後ともよろしくお願いします。