文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

,ネットは新聞を殺すのか?

「人気ブログランキング」の上位に「極右評論」HREF="http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/というブログがある。書き手は顔写真も名前も公表している実名ブログだが、そこに、先日、「ニューズウィーク」の記事を引用して、「ブログは新聞を殺すのか?」という書き込みがあった。なかなか面白い内容であるが、次の日には、タイミングよく、早速、朝日新聞の「ネット右翼批判」の記事を取り上げて、「匿名=無責任=危険」を批判の論拠とする朝日新聞的なネット批判の論理を厳しく反批判している。


僕も、朝日のネット右翼的言論批判には半分ぐらいは賛成するところもないわけではないが、しかしそれでも、ブログや「2チャンネル」を匿名だから無責任で危険だという論理には承服しかねる。その意味で、「極右評論」氏にまつたく賛成である。→極右評論


さて、朝日は、「「日中韓感情が阻む」と題して、ネット右翼(保守)的言論をこう批判している。

朝日新聞
 8日、インターネット掲示板2ちゃんねる」を見ると、中国に対する「弱腰外交」を批判する書き込みであふれていた。
 「日本の完敗だな。やられっぱなしだな」「日本なにやってる?早くしないとみな掘り尽くされちゃうよ」「もう戦争はじめてくれ。マジで」
 東シナ海のガス田開発問題をめぐる日中協議。中国側が新たに示した共同開発案に、日中双方が領有権を唱える尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺の海域が含まれていると報じられたためだ。
 批判の矛先は個人にも容赦なく向かう。中国との議員外交を続ける自民党のベテラン議員のホームページ。テレビ番組で小泉首相靖国参拝に触れると、途端にメールが殺到する。
「総理の靖国参拝は続けていただき、中国に毅然たる態度で臨むことこそ日本の国益にかなう」
靖国は国内問題であって外国が干渉すべきではない。中国にへりくだらないように」
 昨年6月の訪中をきっかけに、2月末までに届いたメールは計107通。その多くが匿名だ。ネットを通じた「中傷」は…


朝日のこの記事には「ネットに走る批判と中傷」というサブタイトルまでついている。繰り返すが、僕自身は、ネット右翼とかネット保守とか言われるような人たちと思想的には共有するものをたくさん持っているが、しかしそれでも必ずしも彼等の集団主義的な言論活動やネット活動を全面的に認めるものではない。その意味では朝日の批判も首肯できる。しかし、である。


問題は、朝日新聞がネットやブログにおける言説を「匿名」を理由に批判していく段階になると、僕はオヤオヤと思う。ネットやブログ的言説の台頭は別に日本固有のものではなく、またそれはかつて新聞というメディアが登場したり、さらに続けてラジオやテレビというメディアが登場したように、ネットやブログも、既成のメディアに満足できない人たちを中心に新しいメディアとして台頭してきたというだけのことで、別にネットやブログが匿名のメディアだから無責任で危険だということにはならない。


朝日は、ネットやブログの時代に対応できていないという、自らの新聞メディアとしての体質や限界を隠蔽して、問題を摩り替えているだけである。要するに新聞というお仕着せの報道や言論に飽き足らない人たちが、ネットやブログで、情報を直接的に入手し、そしてそれに対する批評や感想を直接的に発信している、というだけのことである。それは保守派も革新派も関係ない。


ただし、僕は、ネットやブログの世界に、若干の権力側の情報工作があり、情報管理がなされていると思っている。小泉政権下の官邸周辺にその動きが顕著である。世耕弘成議員を中心とする工作部隊である。



その部分は言論弾圧言論統制につながるので、僕は厳しく批判し追及すべきだと思っている。むしろ、朝日新聞や大手メディアが取り組むべきことはそういう問題であろう。それを取り違えて、「保守思想」や「右翼思想」が気にに食わないから批判し、排除すべきだという議論は、本末転倒、むしろそれこそが言論統制であり、言論弾圧と言うべきだろう。朝日新聞は、むしろ思想的に、そして論理的な次元で、彼等、ネット右翼やネット保守と呼ばれる人たちと戦うべきだろう。


というわけで、極右評論氏の引用する「ニューズウィーク」の記事は、こういう内容だ。

「新聞は紙に印刷され、読むためには家に配達されるのを待つか、駅でコインを取り出して買うしかなかった。インターネットの普及によって、新聞はそうした時間と空間の制約から開放された。今やパソコンなどウェブを見られる環境さえあれば、いつどこからでも世界中の新聞を無料で読むことができる」
「ブログには新聞の『偏向報道』を批判するコメントがあふれ、ブロガーたちはときにはテレビや新聞、雑誌の誤報を鮮やかに暴いてみせる。既存の新聞に飽き足りない市民が、ブログを武器に草の根ジャーナリズムを目指す動きも広がり始めた」


実は、僕も最近は、あまり新聞も読まないしテレビも見ない。外出先で緊急に買う新聞は夕刊フジ日刊ゲンダイ。新聞は、ネットでも読めるからである。というわけで、朝日新聞は、ネットやブログという新しい報道メディアを安直に批判する前に、その存在の意味を、正確に理解することからはじめるべきではないか。もし、匿名の集団による批判、中傷、バッシングが悪いというなら、朝日新聞が、長年、反権力的なジャーナリズムという美名の下に、絶えず垂れ流し続けてきた批判や中傷やバッシング記事はどうなのか。新聞記者には許されるが、無名のネット住民には許されないというのか。そんな馬鹿な…(笑)。いずれにしろ、新聞やテレビという既成メディアからのネットやブログへの批判は天に唾するだけのことだろう。