文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

「シン・ガンス単独犯説」の政治学

またまた、拉致問題が動き始めた。当初から拉致問題に積極的に取り組んできた西村真悟代議士が逮捕され、それと同時に始まった日朝協議。うるさい奴がいなくなつた隙に、うまく話をまとめ、適当なところで手打ちをしようということか。何かあやしい動きだなあと思っていたら、マスコミで、一斉に拉致実行の主犯は「シン・ガンスだつた」という情報が飛び交い始めた。あの拉致事件もこの拉致事件も、あらゆる拉致実行部隊の中心人物はシン・ガンスだった、というのである。言うまでもなく、日本政府と北朝鮮政府の間で、なんらかの打ち合わせの上で展開されている政治的キャンペーンであることは間違いない。蓮池夫妻、地村夫妻、曽我夫妻も揃って、そのキャンペーンに駆りだされて、同じような話を繰り返している。「シン・ガンス朝鮮語を習った」「シン・ガンスに…」と。まるで拉致はシン・ガンスの単独犯行ででもあったかのように。明らかに話の辻褄が合い過ぎている。僕は、帰国した拉致被害者には申し訳ないが、彼らが無事に帰国できたことはまことに喜ばしいことなのだが、その帰国目的は「工作活動」であったはずだ、たとえ日本政府の「帰国」拒絶にあってその目的は途中で挫折したとはいえ、彼等の言動は疑問だらけだ、特に蓮池氏があやしいと書いて、拉致問題の支援者たちから顰蹙を買ったことがある。むろん、蓮池氏や地村氏、曽我氏に個人的な恨みがあるわけではない。彼らも本来的には被害者である。しかし、今はもう単なる素朴な被害者ではない。そもそも彼らだけが、何故、帰国できたのか。彼らは北朝鮮で何をしていたのか。彼らは、帰国できなかった、あるいは死亡と言われている他の拉致被害者たちと、どういう関係にあったのか。僕は、北朝鮮金正日体制が崩壊しない限り決して明らかにはならないような、かなり暗い恐ろしい秘密がそこには隠されていると思う。多くの秘密を金正日に握られている以上、彼等は今も、北朝鮮政府のコントロール下にあると思う。「シン・ガンス主犯説」キャンペーンでの彼らの「全員一致」の証言を見ていてますますそう思う。さて、「シン・ガンス主犯説」キャンペーンの政治的意味は何か。おそらく、近い将来、かなり早い段階で、拉致事件の実行責任者としての「シン・ガンス」の引渡しがあるはずである。そして、日朝両政府の合意の下に、スケープゴートとしての「シン・ガンス逮捕」で、拉致問題のすべてが解決したと言う「幕引き」が行われ、一方で「国交正常化」と「経済支援」が本格的に始まるはずである。たまたま、今日、「正論」で、ウラジミールというジャーナリストの書いた「辛光珠は『拉致実行犯』ではない」を読んで、あらためてそう思った。ウラジミールによると、シン・ガンスは、拉致実行を取り仕切るような、そんな「大物スパイ」ではなく、促成で養成された「未熟な工作員」に過ぎなかった、と言う。蓮池、地村、曽我氏らの「拉致被害者の証言」は当てにならない。彼らの証言の政治性を疑え…。