「日刊スポーツ」にコメント。石原慎太郎の「祝辞」に疑義あり!
先日の紀宮の結婚式における石原慎太郎の乾杯の挨拶で、ベルグソンという哲学者の名前が飛び出してきたときにはちょっと驚いた。いかにも石原慎太郎らしい思わせぶりな発言だと思いつつも、その挨拶の中身にはかなり違和感を感じないわけにはいかなかった。とりわけ、ベルグソンの言葉だと言う「信仰と結婚は似ている、ともにその本質は賭けだ…」という発言には唖然とした。そしてさらに、「国民と共にその賭けの行末(配当の分け前)を注視したい・・・」というような説明には…。僕は、石原慎太郎の引用が、勘違いの可能性がないわけではないがt(パスカルの「信仰は賭け…」を勘違いか?)、場所が場所だけに間違って引用しているはずはないと思う。以前にチェックしているはずだから。しかし、先日の東條英機発言もそうだったが、最近の石原慎太郎には不用意な発言が目立つ。いずれにしろ、そのベルグソンの言葉が事実だったとしても、その意味と使い方は、ちがうのではないか、と思う。「配当の分け前」がどうのこうのという問題ではなかろう。ジョークとして言ったのなら別だが、ちょっと失礼な解釈である。というわけで、昨日、「日刊スポーツ」の電話取材を受けたので、以上の様な感想を述べた。今日の「日刊スポーツ」に出ているので、是非、「日刊スポーツ」を買って読んでください。と書いていたら、田舎の兄から携帯に電話。「オマエがテレビに出ているよ…」と。「エッ!」と驚いた後で、すぐに気づいた。「日刊スポーツ」の僕のコメントが、テレビの「新聞立ち読み」コーナーあたりで放送されたらしいのだ…(笑)。
← 一日一善、「ブログ・ランキング」にご支援を…。
■「日刊スポーツ」より(↓↓↓)
石原都知事の乾杯あいさつに波紋
石原慎太郎東京都知事(73)が、15日に東京・内幸町の帝国ホテルで行われた、天皇家の長女黒田清子さん(36)と東京都職員黒田慶樹さん(40)の披露宴で述べた乾杯のあいさつが波紋を広げている。石原都知事はフランスの哲学者ベルグソンの言葉として「信仰と結婚は似ている。本質は賭け」と紹介したが、研究者の間では「聞いたことがない」との声が広がっている。天皇、皇后両陛下や皇太子ご夫妻らが出席した披露宴で、石原都知事が行った乾杯のあいさつに、ベルグソンの研究者から疑問の声が相次いでいる。
「ベルクソンとカントの社会論」(近代文芸社)の著者、筒井文隆東京学芸大名誉教授(西洋近現代哲学=65)は「私の記憶の限りではそのような言葉はありません。ベルグソンに人間同士の問題である結婚と、信仰とを同列に見るという考えはなかったと思います。『信仰とは賭けである』とはパスカルの言葉だと思うのですが…」。ベルグソンの著作「物質と記憶」の訳者・田島節夫(さだお)氏(80)も「そのようなベルグソンの言葉は聞いたことがない」と話している。
フランス哲学の研究者によると、ベルグソンの著作「道徳と宗教の二源泉」(1932)は婚姻制度に触れているが「賭け」という言葉は出てこないという。この研究者は「引用した言葉が、ベルグソンの言葉ではないと証明することはできないが、かなり疑わしい。ほかの人の言葉と混在している可能性がある」と、疑問を呈した。
「小林秀雄とベルクソン」(彩流社)の著者、文芸評論家の山崎行太郎氏(58)は「聞いたことがない。出典を明かしてほしい」と前置きして「仮にその言葉があったとしても、石原都知事は言葉足らずだった。あの言い方では、宗教や哲学で『それ以外の選択肢がない』という重い意味の賭けという言葉が、当たり外れがある賭けというように聞こえる。違和感を感じた人は多いと思う。一般的にはマニアックなベルグソンを出したのはいいが、ひねりすぎたかもしれない」と指摘した。
「フランス文化に愛着もあるし、尊敬している」と話す石原都知事のことだけに専門家が知らないところから引用した可能性はある。東京都の知事本局では「今のところ(都民らから)そのような指摘は受けていない」としている。
[2005/11/18/16:53 紙面から]