文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

ジェンキンス騒動は政府無策の隠蔽工作ではないのか?

 蓮池・地村家の子供たちが帰国したことによって、マスコミや国民、政府の関心はジェンキンス問題に移っているようだが、僕はまったく関心がない。
 曽我さんの立場や境遇には同情するが、今、いたずらにジェンキンス問題を騒ぎ立てることは他の拉致被害者の生存確認と帰国という大問題を忘れさせる機能しかはたさない。正直に言わせてもらえば、曽我さんが家族五人でいっしょに暮らせるかどうかという問題はすでに終わっている。それはいずれ何らかの形で実現するだろう。キム・ジョンイルジェンキンス氏や娘たちを逮捕することなどありえない。
 そもそもジェンキンス氏は、拉致被害者ではなく確信犯的な米軍脱走兵である。アメリカを捨てて敵国である北朝鮮を自主的に選択した人である。いまさら北朝鮮を見捨てて日本などへの逃亡・出国を希望するだろうか。たとえ妻になった人が拉致被害者であったと判明しても、「はいそうですか……」と軽軽しく言えるはずがない。それでは自分の人生(青春)を否定することになるではないか。北朝鮮に骨を埋める覚悟ぐらいは出来ているだろう。
 曽我・ジェンキンス問題をさも重大事のようにマスコミや政府の高官は騒いでいる。だがそれは、本来の拉致問題解決に向けて、何もしないことを、いや何も出来ないことを隠蔽し偽装するための演技である。これは擬似問題なのだ。
 ところで最近、蓮池薫氏が記者会見やインタビューなどで気軽に話す場面が増えているようだ。たまたま昨夜テレビニュースでその一部を見たが、その中で彼は、子供たちが将来「日朝友好」に役立つような人材になりたいと言っていると発言していた。僕はそれにかなり違和感を感じた。
 われわれが聞きたいのはそういう能天気な「前向きな話」ではない。「真相は口が裂けても話せない」ということを承知の上で言うのだが、問題は彼らが北朝鮮で何をしてきたかという話だ。翻訳に従事していたなんて作り話に決まっている。
 僕は、兄の蓮池透氏がこの拉致問題解決に向けて果たしてきた役割と功績を高く評価する。それ故に敢えて言いたい。この問題を蓮池・地村・曽我の三家族だけの問題に矮小化するな、と。この問題は、むしろ報復の危険をも顧みず最初に拉致事件の真相を公表した有本家や横田家、その他の拉致家族の問題であり、また日本という国家の存在根拠にもかかわる問題であるということを忘れるな、と。