文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

小林よしのりは、思考のバランスを崩している。

=========================================
小林よしのりは、思考のバランスを崩している。
=========================================


久しぶりに小林よしのりが『sapio』に連載している政治漫画『ゴーマニズム宣言』を読んだ。別に感想はない。ただ小林も危ないところに行ってしまったなあ、と思う。小林は、西部邁らとともに反米保守を標榜しつつ、親米保守を「ポチ保守」とよび罵倒してきたが、それがついに、イラク人質事件の被害者とその家族の言動への国民的バッシングを激しく攻撃するところまで行っている。行き過ぎである。フセイン万歳、金ジョンイル万歳まで、後一歩である。

長く論壇にいると間違いも起こる。小さな間違いの段階で反省するなり修正するなり、あるいは沈黙するなりすればそれでいいのだが、小林よしのり先生のように、「えらく」なりすぎるとそれができない。引っ込みがつかないから、間違ったまま突進せざるをえない。論壇の中の「親米保守」グループを批判することに熱中するあまり、周りの状況が見えなくなり、とんでもない方向へ突っ走っている。それが現在の小林よしのりのようだ。明らかに思考のバランスを崩している。

たしかにアメリカのイラク戦争は苦戦を強いられている。それに最近、米軍兵士のイラク人捕虜虐待やセクハラが表面化して、ますます苦境に追い込めれつつある。しかし、だからと言ってアメリカはもうダメだというこにはならない。「イラク戦争開戦予測」をはずした田中宇も、「アメリカの終焉」をなかば期待を込めて書いているが、これまた読み違いである。アメリカ文明の終焉はいずれ来るだろうが、それは田中宇が考えるような時間においてではないだろう。アメリカはこのイラク戦争に踏み切ったことによって、「アメリカの終焉」の時間を遅らせることに成功したと小生は見ている。逆に、アメリカ人が「反戦平和主義」思想に洗脳される時、アメリカの時代は終わるのだ。

小泉再訪朝の前に、北朝鮮在住の米軍脱走兵・ジェンキンス氏の訴追をうやむやにするように迫った小泉に、アメリカ政府はむしろ逆にジェンキンス氏の脱走と反米宣伝等の罪を厳しく追及する姿勢を示した、と言う。いかにもアメリカらしい思考ではないか。それは、アメリカという国家が、依然として健全な国家であることを示している。

人道支援や家族再会という通俗的なメロドラマに酔って、「国家とは何か」という根本原理を忘れ、上から下まで惰眠をむさぼっているような国家とは違う。