文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

現在は新帝国主義の時代だ。日清・日露戦争前夜の「弱肉強食の時代」、つまり「帝国主義時代」の反復である。という柄谷行人の歴史認識は熟考に値する時代認識だと言わなければならない。

柄谷行人の「秋幸あるいは幸徳秋水」(「文学界」10月号)については、前にも触れたが、さずかに柄谷行人らしく、鋭い感覚と認識を披露した論考で、教えられることが多く、昨今の沈滞した言論空間の中で、ひと際、輝くものであり、何度でも読みたくなる論考であった。日本政府の尖閣諸島国有化に端を発した日中衝突は、戦後、はじめての「軍事衝突」の可能性を秘めて、睨み合っているという状況だが、まさに柄谷行人が言うように、日清日露戦争前夜の、「帝国主義の時代」を髣髴させるという意味で、「新帝国主義の時代」に突入したと言っていい。帝国主義時代とは、言うまでもなく「戦争の時代」だということだ。言い換えれば、日本も、戦後、ただひたすら厭戦気分と平和主義のもとに安眠をむさぼってきたわけだが、今や、否応なく、「戦争」という現実に直面せざるを得ない時代になったということだ。つまり、日本は、「戦争できない国」から「戦争できる国」へと、あっという間に変貌したと言っていい。おそらく、日本は、今後、急速に「憲法改正」「軍備増強」「核武装」・・・へと突き進んでいくだろう。「軍事大国・中国」、あるいは次の覇権国家ヘゲモニー国家を狙う「帝国主義国家・中国」が隣国として日本の前に立ち塞がる以上、それらは避けがたいだろう。中国政府は、軍事的恫喝を繰り返しつつ、密かに軍事衝突を回避して、さかんに日本を、第二次世界大戦時の枠組み、つまり中米欧による「侵略国家・日本」「ファシズム軍国主義・国家・日本」包囲網を築き、日本封じ込めへと、情報戦争を仕掛けているようだが、おそらく、それは時代認識が間違っており、遅かれ早かれ、その戦略は失敗せざるをえないだろう。日本の週刊誌や新聞も、「新日中戦争」を煽り始めたが、どうだろうか。軍事衝突は起きるか。いずれにしろ、中国の反日暴動デモが、日本人の時代認識、歴史認識を大きく変えた。柄谷行人が指摘するように、現在を「昭和10年代」との類似性で語ることは誤りである。むしろ、「明治20年代」との類似性で語る方が正しい。



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