文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

実存主義から構造主義へ。三田誠広の近著に『実存と構造』がある。僕がちょうど大学生だった頃、「実存主義から構造主義へ」の急激な思想的展開があったが、その思想史的展開の意味を、文学を素材に分析・解明しようとしているのが『実存と構造』。この展開は思想家の名前で言うと、サルトルからレヴィ・ストロースへ、あるいはサルトルからフーコーへ、という展開である。この思想的展開は、良かれ悪しかれ、その後の思想や文学、あるいは政治の解釈・批評にも大きな影響を与えている。たとえば、小沢一郎問題の場合、小沢一郎個人の問題として分析


日本の文壇や論壇、ジャーナリズム、アカデミズムの流行の言説の傾向性を支配するのはフランス現代思想の動向である。フランス本国の流行思想が変われば、主体的な必然性なしで、日本の多くの知識人、学者たちの「言葉」や「文体」が変わる。無論、それを主導するのは、一部のフランスかぶれのインテリやインテリ予備軍である 。実存主義から構造主義への変遷、転向はその典型である。昨日までサルトルだの実存主義だのと大騒ぎしていた連中が、一夜あけると、「実存主義はもう古い」「サルトルは終わった」と言い始め、今度は、構造主義だ、レヴィ・ストロースだ、フーコーだ、デリダだと声高に語り始める 。彼らは「主義」から「主義」へと飛び跳ねるだけの連中である。小林秀雄がいうところの「様々なる意匠」に振り回される連中、あるいは「様々なる意匠」を気軽に振り回す連中である。僕は、そいう時、流行に乗り遅れ、自分の問題に拘りつずけるような不器用な思想家や文学者が好きだった。つまり気楽に、実存主義から構造主義に飛び移れない思想家たちである。ところで、三田誠広が『実存と構造』で書いていることで重要なことは、「実存」と「構造」を、「実存主義から構造主義へ」というように、単純に図式的に捉えずに、実存と構造は表裏一体のもの、背中合わせのものと捉えていることだ。「実存主義から構造主義へ」というような単純な図式で考えている人たちは、構造主義と言う場合、実存や実存主義をまるごと切り捨てる。彼らの思考には何かが欠如することになる。つまり、文学者や思想家にとって不可欠の「実存」が欠如する。逆に、たとえば、日本で、フランス直輸入の構造主義流行する前から、文壇や論壇で活躍していた江藤淳吉本隆明のような思想家たちは、実存的、あるいは実存主義的であったが、同時に、構造や構造主義という言葉は使わないが、文字通り構造主義的でもあった。実存と構造は、それこそ彼らのラディカルな思考においては表裏一体の関係であった。だが、現今の自称「構造主義者」たちのイデオロギー的思考には、実存という問題が欠如している。彼らは、実存主義構造主義かを二者択一的に選択しているからだ。江藤淳吉本隆明はラディカルな実存的思想家だった。だがそれ故に構造主義的でもあった。今、「小沢一郎」をめぐる問題は日米関係の構造問題を抜きには語れない。少なくとも小沢一郎個人の問題として理解・解釈している限り、真の小沢一郎問題を捉えることはできない。小沢一郎問題の本質は理解できない。小沢一郎問題の構造性に最初に着目したのは江藤淳である。言い換えれば、江藤淳が「小沢一郎」にこだわったのは、そこに日米関係という構造的な問題を感受したからだ。江藤淳の『閉ざされた言語空間』をはじめとする、一連の米軍による検閲問題の延長に「小沢一郎問題」はある。ロッキード事件で逮捕された田中角栄の場合、一部では、確かに「田中角栄は、エネルギー問題でアメリカの尻尾を踏んだから消された・・・」と言われたが、しかし、その論調が主流になることはなかった。あくまでも田中角栄という一人の特異な政治家個人の問題として処理された。しかし、小沢一郎問題の場合は、すでに小沢一郎個人の問題ではなくなっている。むろん、マスコミを中心とする既存勢力は、さかんに小沢一郎個人の「金権体質」の問題に還元しようとしている。しかし、その種の「小沢バッシング」に失敗し、逆に、その動機や背後関係が暴露されたのが今回の「小沢一郎問題」であった。ここにも、構造主義的な思考とでも呼ぶべきものがある。実存主義的思考だけでは、「小沢一郎問題」の構造分析は不可能であったろ。しかし、自称「構造主義者」や「ポスト構造主義者」たちは、小沢一郎問題に関心も興味もないように見える。何故か。彼らには、思考そのものの力が不足している。つまり実存的思考が欠如しているが故に、「心理をこえたものの影」(小林秀雄)も、つまり構造の問題も見えてこない。「小沢一郎問題」に無関心でいられるということの中に、彼らのインチキさが表れている。




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