文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

情報戦を仕掛けているのは、誰か?

日経がスクープした、故富田朝彦宮内庁長官メモによる天皇の「A級戦犯合祀不快発言」が様々な波紋を呼んでいるようである。むろん、九月の総裁選を左右すると思われる靖国参拝の是非をめぐる問題としてである。僕は、天皇の不快発言そのものには別にたいして深い関心はないが、しかし、ここに来て、情報戦の疑いが感じられるようになったので、ちょっと僕の意見を述べておきたい。


実は、拙「毒蛇日記=掲示板」で、「ななし」氏が、早い段階で重要な書込みをしていた。「小泉官邸は情報工作の達人です。全ての新聞テレビは小泉官邸の味方です。前原永田のメール問題を思い出してください。冷静に状況を判断しなければまた「小泉官邸マスゴミ」に一杯食わされます。冷静に対処するのが懸命だと私は思うのですが… 」


まさにその通りだろう。さて、マスコミではこのメモが「ホンモノ」という前提で議論が進められているのに対して、ネットやブログでは、「捏造疑惑」や「ヤラセ疑惑」「藤尾正行発言説」「記者会見メモ説」等、要するに日経の「天皇の不快発言」という論調を否定する発言や分析が活発になっている。むろん、真相はまだ分からないが、この日経スクープ騒動は、「永田ガセメール騒動」と同じような論理構造にあるのではないか。つまり「ガセネタ」の可能性が強いということだ。


今回も「永田ガセメール騒動」の時と同様に、スクープ記事公開と同時に「ガセネタ疑惑」が沸き起こっている。しかも、この疑惑問題を「ブログ」で扱う各ブロガーのところへは、内部情報や秘密情報のタレコミが殺到している模様だ。前もって仕組まれていたのではないかと考えるのはぼくだけではなかろう。


しかも、日経のスクープ記事と同日に、安倍晋三の『美しい国へ』という著書が発売されている。日経の記事は、反靖国参拝派、反小泉・安倍派、親中派による「安倍つぶし」の「プロパガンダ記事」だろうという批判も起こっているが、そうだろうか。そんなわかりやすい策謀を企てるだろうか。問題は、もっと別のところにあるだろう。


とすれば、次の問題が問われなければなるまい。それは、この情報戦を誰が仕掛けたのかと言う問題だ。普通に考えれば、靖国参拝批判派、親中派反小泉・安倍派の誰かが仕掛けたということになろう。一部では、そういう見地から、二階経済産業省大臣の名前が挙がっている。むろん、これはあり得ないだろう。


このスクープがニセモノ、ガセネタだったとすれば……。これで傷つくのは誰か。それは、このスクープ記事をネタに、小泉の靖国参拝に反対する連中だろう。たとえば、日曜日の「サンデープロジェクト」で、小泉参拝を批判していた加藤紘一菅直人などがそれだろう。


ここで、何かに気づかないか。そうなのだ。「永田カセメール騒動」である。実は、今回もまた、誰かが「ガセネタ」をマスコミに持ち込んだ可能性がきわめて高くなってきたと言うことだ。そもそもこの富田メモなるものが、なぜ、今、出現したのか。誰が、このメモを、日経に売り込んだのか。


まだ、ネットやブログでは、ホンモノかニセモノかの議論で沸騰中だが、そしてその当然の結果として、靖国参拝批判派への攻撃、親中派への攻撃、反小泉安倍派への攻撃が激しくなっているが、その裏でシメシメとほくそ笑んでいる者がいないか。いるとすれば、それはこの騒動で、一番、得をする奴だろう。(笑)つまり、この「天皇不快発言メモ騒動」という情報戦を仕掛けたのは、誰か、ということだ。もうおわかりだろう。



●以下は、「毒蛇=掲示板」書込みより。

昭和天皇メモの件は慎重に対処せねば。 - ななし
2006/07/21(Fri) 12:04

「大和ごころ。ときどきその他」
宮内庁元長官のメモは小泉・安倍にとって渡りに船』
http://ameblo.jp/shionos/entry-10014898084.html

まずは上記ブログをお読みください。
小泉官邸は謀略情報工作が得意です。
小泉マンセーの日経が小泉安倍の不利益になる事をするはずがないでしょう。
当然、左派の人々や本当の保守の人々はこの件で小泉安倍を非難批判するでしょう。
でも一歩立ち止まって冷静に考えなければなりません。

小泉官邸は情報工作の達人です。
全ての新聞テレビは小泉官邸の味方です。
前原永田のメール問題を思い出してください。
冷静に状況を判断しなければまた「小泉官邸マスゴミ」に一杯食わされます。
冷静に対処するのが懸命だと私は思うのですが…




●Re: 昭和天皇メモの件は慎重に対処せねば。 - こぴぺNO.1
2006/07/22(Sat) 02:47

【重大な疑問】
1 「昭和天皇と交わされた会話を日記や手帳に克明に書き残していた。」のになぜかこの部分は手帳に貼り付けてあった。
2 「だから私はあれ以来参拝していない。」
  天皇陛下は75年(社会党批判時)から参拝していないのに、「私はあれ(3年も後の78年のA級戦犯合祀)以来参拝していない」
  では辻褄が合わない。「私」が誰を指すのか不明。
3 あったとされる「発言」が合祀から十年後の昭和63年(1988年)の4月。崩御の前年。
4 天皇陛下が自分の(個人的な)意思で参拝したり、参拝を取りやめたりすることはそもそもできない。
  それをできると思うのは、外国人か日本の官僚機構を知らない人達。
5 何故、毎年、天皇陛下はABC級戦犯も追悼の対象となっている全国戦没者追悼式に毎年参列して、御言葉も述べているのか。
6 白鳥を白取と誤字。普通間違えるか?
7 論理構成、概念、時系列が中国共産党にあまりに都合が良すぎるステレオタイプのような文章。
  「平和に強い考え」?何それ?中国共産党の影響力の強い旧社会党社民党がいかにも使いそうな言葉。
8 「松平の子の今の宮司がどう考えたのか、易々と。」
  「筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが」
  合祀された78年ならまだしも、合祀から10年経った崩御の前年の88年に語ったとするとあまりに不自然な発言。
9 当時の侍従長A級戦犯の合祀に大反対だった、徳川義寛氏の発言と考えれば、内容はすべて辻褄が合う。
  http://www.tv-asahi.co.jp/n-station/cmnt/shimizu/2001/0816num90.html
10 勅使は陛下の私費で現在まで靖国神社に派遣されている
11 他に比べて紙が劣化していない。インクも鮮明な上に色が違う。
12 メモ上部に「藤尾(文相)の発言」とある。藤尾の在任期間は1986年7月22日〜9月8日。日付が合わない。
13 天皇は神社(靖国だけでなく、どこの神社でも)に参拝する場合「参拝」ではなく、「御親拝」という表現を使う。




●Re: 昭和天皇メモの件は慎重に対処せねば。 - こぴぺNO.2
2006/07/22(Sat) 02:50

普通に考えて、一新聞記者レベルで扱える問題ではないでしょう。
日経新聞社長が中国当局にご指導を受けていました↓

■唐家セン国務委員、杉田日本経済新聞社長と会見(2006/04/14)
http://www.fmprc.gov.cn/ce/cejp/jpn/xwdt/t246283.htm

遺族会会長の古賀誠も、中国共産党王家瑞対外連絡部長と会談して分祀の話は、だいたいの決着がついているようです。

あと、中川国対委員長と、与謝野政調会長は100%分祀派です。
■(5/29)中川国対委員長靖国神社A級戦犯の自発的分祀を」
http://www.nikkei.co.jp/china/news/archive/20050529c1e2900429.html

■ 「「靖国、中国は内政干渉でない」与謝野政調会長が見解」」
自民党与謝野政調会長は29日、テレビ朝日の報道番組で、小泉首相靖国神社参拝について「靖国問題は、単なる内政問題ではなく一定の外交的効果を持った問題だ。内政だけの問題としてとらえるのは、とらえ方が狭すぎる」と述べ、中国側の批判は「内政干渉」には当たらないとの考えを示した。

また、与謝野氏は、A級戦犯分祀(ぶんし)案について、「中曽根元首相は分祀論だ。日中間の問題を現実的に解決し、かつ両方がそこそこの満足度を得るのが正しいと思う」と述べ、支持する考えを示した。読売新聞 (2005年5月29日)

小泉首相分祀派かどうか明らかにしていませんが「心ならずも戦場に赴いた戦没者たちの追悼のために参拝している」という発言から、分祀派であると想像できます。首相官邸HPより↓
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumiphoto/2005/06/20nikkan.html

経団連の御手洗さんは、まだまともですけど、奥田前会長を初めとした首相官邸と繋がりの強い政商の連中は分祀派ばかりで、中国との商売しか考えていないですからね。それをスポンサーとしている日経新聞社長が分祀派なのは理解できることです。

なんせ昨年の解散総選挙を思い出せば判る通り、異例の憲法七条を持ち出して、天皇を政治利用をすることなど平気でやってしまう連中ばかりですから。首相官邸から経団連、マスコミに至るまで売国奴のオンパレードです。

それを日経新聞では日常であった株のインサイダー売買を隠すための、プロパガンダ的な大スクープだったわけです。

■日経社員、近く取り調べ インサイダー取引の疑い(7/20東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006071901006322.html




●Re: 昭和天皇メモの件は慎重に対処せねば。 - 山崎行太郎 Home
2006/07/23(Sun) 02:38


小泉官邸は情報工作の達人です。
全ての新聞テレビは小泉官邸の味方です。

前原永田のメール問題を思い出してください。

冷静に状況を判断しなければまた「小泉官邸マスゴミ」に一杯食わされます。

冷静に対処するのが懸命だと私は思うのですが…


まったくおっしゃるとおりです。
鋭い指摘に感服。
永田メール騒動と同じような構造ですね。
これで得するのは誰か?
安倍に決まってますね。
今は、被害者みたいな立場ですが、意外や意外。
シメシメとほくそ笑んでいるのは安倍一派か?
被害者を疑え……ですね。( from_ 山崎行太郎 )

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参考
山崎行太郎=毒蛇日記=掲示板もよろしく◆

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●参考資①・・・・昭和天皇靖国合祀不快感に波紋…遺族に戸惑いも

昭和天皇靖国合祀不快感に波紋…遺族に戸惑いも

富田元宮内庁長官が残した手帳(手前)や日記(奥)。手前左から2冊目が昭和天皇A級戦犯合祀について語った言葉を記した部分のある手帳=20日、石井諭写す 「だからあれ以来参拝していない。それが私の心だ」。富田朝彦・元宮内庁長官が残していた靖国神社A級戦犯合祀(ごうし)への昭和天皇の不快感。さらに、合祀した靖国神社宮司へ「親の心子知らず」と批判を投げかけた。昭和天皇が亡くなる1年前に記されたメモには強い意思が示され、遺族らは戸惑い、昭和史研究者は驚きを隠さない。A級戦犯分祀論や、小泉純一郎首相の参拝問題にどのような影響を与えるのか。

 ■A級戦犯の遺族

 「信じられない。陛下(昭和天皇)のお気持ちを信じています」−−A級戦犯として処刑され、靖国神社に合祀される板垣征四郎元陸軍大将の二男の正・日本遺族会顧問(82)=元参院議員=は驚きながらも、そう言い切った。

 正氏は昭和天皇が参拝を中止したのは、A級戦犯合祀とは無関係だとの立場を崩さない。「三木(武夫)総理(当時)が昭和50(75)年に現職首相として初めて参拝し、その秋の国会で論議になったため、陛下はその後参拝できなくなったのだと私は思うし、さまざまな史料からも明らかだ。A級戦犯合祀は、陛下の参拝が止まった後のことだ」と話す。その上で「(富田元長官が)何を残され、言われたかは関知しない」と言った。

 同様にA級戦犯として合祀される東条英機元首相の二男輝雄氏(91)=元三菱自動車工業社長=は「そんな話、いまだかつてどこからも聞いたことがない」と繰り返した。「信ぴょう性が分からない以上、言いようがない。個々の動きでいちいち大騒ぎしても仕方ないよ」とコメントを避けた。

 ■識者は

 昭和史に詳しいノンフィクション作家の保阪正康さんは「昭和天皇東京裁判の結果を容認し、A級戦犯合祀はおかしいと判断していたから、想像できる範囲ではある」とし、影響について「参拝に反対の立場の人たちからは『昭和天皇でさえも否定的』という声が強まるのではないか。小泉純一郎首相と昭和天皇靖国について考えが違うことがはっきりした。首相は参拝するのであれば、昭和天皇の判断に、政治の最高責任者として戦争について見解を改めて述べる必要があるのではないか」と語った。

 一方、一橋大大学院社会学研究科の吉田裕教授は「徳川義寛侍従長の回想で示唆されていたことが確実に裏付けられ、松岡洋右元外相への厳しい評価も確認された。今後は分祀論にはずみがつく。小泉首相も、少なくとも(終戦の日の)8月15日に参拝をしない理由になるのではないか。首相の参拝には多少の影響はあると思う」と話した。

 日本近現代史に詳しい小田部雄次静岡福祉大教授は「昭和天皇の気持ちが分かって面白い」と驚き、「東京裁判を否定することは昭和天皇にとって自己否定につながる。国民との一体感を保つためにも、合祀を批判して戦後社会に適応するスタンスを示す必要もあったのではないか」と冷ややかな見方を示した。その上で「A級戦犯が合祀されると、A級戦犯が国のために戦ったことになり、国家元首だった昭和天皇の責任問題も出てくる。その意味では、天皇の発言は『責任回避だ』という面もあるが、東京裁判を容認する戦後天皇家の基盤を否定することもできなかったのではないか」と話した。

 ◇靖国神社A級戦犯合祀を巡る動き◇

1945年8月 終戦玉音放送

 46年4月 国際検察局がA級戦犯容疑者28人を起訴

   6月 松岡洋右被告が病死

 48年11年 極東国際軍事裁判東京裁判)でA級戦犯のうち7人に絞首刑判決

 51年9月 サンフランシスコ講和条約調印

 56年4月 厚生省(当時)が「祭神名票」送付による合祀事務に対する協力を都道府県に通知

 66年   A級戦犯の「祭神名票」を靖国神社に送付

 75年8月 三木武夫首相が現職首相で初めて終戦記念日に参拝。私人としての「参拝4原則」を強調

   11月 昭和天皇が最後の参拝

 78年10月 靖国神社A級戦犯14人を合祀

 85年8月 中曽根康弘首相が公式参拝。「宗教色を薄めた形式なら公式参拝は合憲」との官房長官談話を受けて

 86年8月 近隣諸国に配慮して中曽根首相が参拝断念

 01年8月 小泉純一郎首相が13日に参拝。以降、毎年参拝

 05年6月 小泉首相衆院予算委員会A級戦犯について「戦争犯罪人であると認識している」と答弁

 ◇内容を精査し、冷静な分析必要

 天皇靖国神社参拝は1975年11月21日に昭和天皇が行って以来、今の天皇陛下も含め行われていない。同神社や遺族側は、その後も「天皇参拝」を求めているが、30年以上途絶えたままだ。これまでいくつかの理由が推測で語られていたが、今回の「富田元長官メモ」は、このうちの一つを大きくクローズアップした。

 宮内庁によると昭和天皇は、終戦に際し45年11月に同神社を参拝。その後も数年おきに訪れ、75年までに戦後計8回参拝した。また、今の天皇陛下は皇太子時代、69年までに戦後計4回参拝している。

 途絶えた理由に挙げられるのは(1)78年のA級戦犯合祀(2)対外関係の考慮(3)公人私人問題−−など。靖国参拝推進派はこのうち(3)を取り上げることが多い。75年8月、三木武夫首相は「私人」の立場を強調して参拝。同年11月の天皇参拝では、政府は「天皇の私人としての行為」と国会答弁した。この点につき、「公人中の公人」の立場を昭和天皇が熟慮して、その後の参拝を取りやめたとの考えだ。

 だが、今回のメモは(1)が大きな理由だったと読める。天皇参拝を求める以上、遺族側でもこの発言を理由に、A級戦犯分祀論が強まる可能性がある。

 一方で、メモで取り上げられている松岡洋右元外相と白鳥敏夫元駐伊大使への昭和天皇の思いを考慮する必要もある。「昭和天皇独白録」で、松岡元外相について「恐らくは『ヒトラー』に買収でもされたのではないかと思はれる」と辛らつに評価。白鳥氏が担当した日独伊三国同盟にも不満を述べている。信任していたとされる東条英機首相や木戸幸一内大臣らと比べ、冷ややかに見つめていたのは明らかで、それが発言に反映している可能性も否定できない。

 また、合祀されているA級戦犯14人の多くは陸海軍幹部で、2人は元々からの外務官僚。軍人でもなく、戦死でもなく、靖国神社にまつられることに違和感を語る向きもあった。昭和天皇が何を問題と感じ、それを今後我々がどうとらえていくか。内容について全文を精査し、冷静に分析していくことが必要だろう。【大久保和夫、竹中拓実】

毎日新聞 2006年7月20日 11時43分 (最終更新時間 7月20日 14時11分)


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●参考資料②

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昭和天皇 富田メモ 分祀へ政治利用の恐れ

≪加藤氏「分祀論に弾み」 安倍氏「気持ち変わりない≫


 昭和天皇靖国神社の「A級戦犯合祀(ごうし)」に不快感を示す発言をされていたとするメモの存在が明らかになったことで、小泉純一郎首相の靖国参拝を批判するグループの「A級戦犯分祀論」が、勢いづきそうだ。これに対して小泉首相は20日夕、自身の参拝について「影響はない」と言い切り、政府筋も「皇室は政治利用しないのが一つの見識だ」として、事態の早期沈静化を図るべきだとの考えを示した。

 20日、与野党からは靖国問題をめぐる発言が相次いだ。自民党の一部からは「分祀論に弾みがつく」(加藤紘一元幹事長)との声が出たが、党内の首相参拝批判派が「分祀」で一致しているわけではない。


 批判派には(1)「A級戦犯分祀(2)宗教法人格を外し、国家が護持(3)新たな無宗教の国立追悼施設建設(4)千鳥ケ淵戦没者墓苑の拡充−の4つの考え方があり、複雑に入り組んでいる。


 「分祀論」は以前から中曽根康弘元首相が唱え、今年に入って日本遺族会会長の古賀誠元幹事長も提唱。与謝野馨経済財政担当相、森喜朗元首相らも言及しているが、首相は20日、「一宗教法人に政府として言わない方がいい」と一蹴(いっしゅう)した。


 憲法政教分離原則から政府が宗教法人の靖国神社に指示や命令ができないため、「分祀」を狙って取りざたされているのが国家護持論だ。麻生太郎外相が「一宗教法人にいろいろなことを押しつけていいのか。国がきちんとすべきだ」と唱え、古賀氏も同調する。


 国立追悼施設論は、超党派議連や自民党山崎派が政策提言に盛り込み、福田康夫官房長官も同調している。


 さらに、身元不明戦没者の遺骨を埋葬している千鳥ケ淵墓苑の拡充論も中川秀直政調会長を中心に浮上している。


 こうした動きに、首相の靖国参拝を支持する「平和を願い真の国益を考え靖国参拝を支持する若手国会議員の会」は20日、総会を開き、対応を協議。今津寛会長らが21日に安倍晋三官房長官を訪ね、首相の参拝継続などを求めていくことになった。


                   ◇


昭和天皇発言メモへの政界反応】


 ■小泉純一郎首相
 「陛下におかれてもさまざまな思いがおありだったのだろう。あの人が、あの方が言われたからいいとか悪いとかという問題ではない。(国立追悼施設は)結論が見えにくい。(「A級戦犯分祀は)一宗教法人に政府が言わない方がいい」


 ■安倍晋三官房長官
「私は国のために戦った方々のためにご冥福をお祈りし、尊崇の念を表する気持ちで靖国神社に参拝してきた。その気持ちに変わりはない」


 ■谷垣禎一財務相
「陛下の言動を引用してああだこうだと政治的議論をするのは控えたい。遺族の中に陛下にお参りいただくにはどうしたらいいかという思いはあるだろう」


 ■山崎拓自民党副総裁
A級戦犯分祀が実現するか、国立追悼施設を設置しない限り、靖国問題は解決しない。天皇陛下も参拝されない、宗教施設が国の中心的な追悼施設とは言えない」


 ■加藤紘一自民党幹事長
分祀論に弾みがつく。戦地に赴いた人は陛下のご参拝をいただきたいという思いで亡くなられた方が多い。陛下が行かれる状況を作ることは非常に重要だ」


 ■神崎武法公明党代表
昭和天皇が参拝されなくなったのはA級戦犯合祀であることが裏付けられた。分祀論が加速するだろう」


 ■鳩山由紀夫民主党幹事長
「戦争に後悔の念を持っておられた陛下の意思だけに大事にすべきだ。首相は重く受け止めてほしい」


【合祀されたA級戦犯


 東条英機(首相、陸軍大将)▽板垣征四郎(陸軍大将)▽土肥原賢二(同)▽松井石根(同)▽木村兵太郎(同)▽武藤章(陸軍中将)▽広田弘毅(首相)▽小磯国昭(首相、陸軍大将、服役中死亡)▽白鳥敏夫(駐イタリア大使、同)▽梅津美治郎(陸軍大将、同)▽平沼騏一郎(首相、保釈直後死亡)▽東郷茂徳(外相、服役中死亡)▽松岡洋右(外相、拘禁中死亡)▽永野修身海相、海軍大将、同)

【2006/07/21 東京朝刊から】

(07/21 11:13)

http://www.sankei.co.jp/news/060721/sha036.htm

●参考資料③

===
アーミテージ前米国務副長官に聞く 対中外交、日米で防御戦略を

 【ワシントン=古森義久リチャード・アーミテージ前米国務副長官は産経新聞と会見し、米国の視点から日中関係の現状や靖国問題について語り、中国政府が日本の首相に靖国参拝の中止を指示することは不当であり、米国も靖国問題にはかかわるべきではないとの見解を表明した。
 ブッシュ政権一期目に国務副長官を務めたアーミテージ氏は「ブッシュ大統領が『日中関係は単なる神社への参拝よりずっと複雑だ』と述べたように、靖国論議日中関係を難しくした原因ではなく、難しい状態があることの症候(つまり結果)だ」と語り、日本の一部にある「首相の靖国参拝日中関係を悪化させた」という主張を排した。日中関係の改善についても「日本よりまず中国が何をすべきかを考えるべきだ」と強調した。

 日中関係悪化の主要因としては、「歴史上、初めてほぼ同じパワーの両国が北東アジアという同じスペースを同時に占めるようになったため、安保や領土など多くの問題が起きてきたことだ」とし、過去の歴史では日本と中国のいずれかが総合国力で他方よりもずっと優位にあったのが対等な位置で競合するようになったことが現在の摩擦を引き起こしているとの地政学的な見方を示した。

 首相の靖国参拝について、(1)米国社会で犯罪者も丁重に埋葬されるように、A級戦犯も含めて戦没者などの先人をどう追悼するかは日本自身が決めることで、とくに死者の価値判断は現世の人間には簡単に下せない(2)中国は日本への圧力の手段として靖国問題を使っているため、日本側が譲歩して首相の参拝をやめたとしても、必ず別の難題を日本にぶつけてくるだろう(3)小泉首相は公人ではなく私人として参拝することを強調したが、中国側はその「譲歩」を全く認めず、靖国だけを問題にしているのではないことを印象づけた−などという点を指摘した。

 アーミテージ氏はさらに「中国政府は日本の首相に靖国神社に参拝するなと指示や要求をすべきではない」と中国の対日要求を不当だと断じ、とくに「民主的に選出された一国の政府の長が非民主的な国からの圧力に屈してはならない。小泉首相には中国が靖国参拝反対を主張している限り、参拝をやめるという選択はない」と強調した。

 ただし、靖国境内にある軍事博物館の遊就館については「戦争に関する一部展示の説明文は日本で一般に受け入れられた歴史の事実とも異なり、米国人や中国人の感情を傷つける」と述べた。

 同氏は米国の対応についても、「米国政府が靖国や他の戦没者追悼の方法に関して小泉首相やその後継首相にあれこれ求めるべきではない。助言や意見を非公式に述べることは構わないだろう」と非関与を提唱した。




リチャード・アーミテージ前米国務副長官が産経新聞に語った日中関係靖国問題に関する見解の詳細≫  一、靖国問題は日中間の他の諸問題の症候だと思う。小泉首相靖国参拝日中関係を難しくした理由や原因ではない。ブッシュ大統領の「日中関係は単なる神社への参拝よりずっと複雑だ」という言明のとおりだ。中国は靖国を日本への圧力に使っているため、日本がもしこれまでに靖国で譲歩をしたとしても、必ずまた別の難題を持ち出し、非難の口実にしただろう。現に小泉首相は前回の参拝は平服にして、公人ではなく私人であることを強調したが、中国側はその譲歩を全く認めなかった。

 一、歴史上、初めて北東アジアでは日本と中国の両国がほぼ同じパワーを有し、同じスペースを同時に占めるようになった。このため安保や領土など多くの問題が起きてきた。そのことが日中関係を難しい状態にするようになったのだ。それ以前の歴史では両国のいずれかが総合国力で他方よりずっと優位にあったのだが、最近は対等な位置で競合するようになり、それが摩擦を引き起こしている。靖国問題はその症候なのだ。

 一、米国社会では殺人者のような犯罪人までキリスト教などの教えに従い埋葬される。同様に日本でも祖先、とくに戦没者をどう追悼するかは日本自身が決めることだ。その対象にはA級戦犯も含まれる。死者の価値判断は現世の人間には簡単には下せない。中国は日本の首相に靖国参拝中止の指示や要求をすべきではない。米国政府も日本の首相に戦没者追悼の方法についてあれこれ求めるべきではない。見解や助言を伝え、協議することはできるだろう。だがとくに日中関係でいえば、民主的に選出された一国の政府の長である日本の首相が中国のような非民主的な国からの圧力に屈し、頭を下げるようなことは決してあってはならない。

 一、小泉首相には中国から靖国参拝を反対されている限り、その要求に従って参拝をやめるという選択はないだろう。中国は日本の現首相、次期首相の参拝中止が表明されない限り、日本との首脳会談には応じないとして、自らを袋小路に追い込んでしまった。だが次期首相にその条件がそのまま適用されるかどうか。安倍晋三氏はもし首相になっても靖国に参拝するかどうかはわからないままにしている。米国は日中関係に対しては決して中立者ではない。日本は同盟国であり、中国はそうではないからだ。だから米国は靖国論議の段階では中立を保つかもしれないが、日本が本当に小突き回されれば、日本を支援する。

 一、日本の首相の靖国参拝には問題がなくても、靖国境内にある遊就館の一部展示の説明文は米国人や中国人の感情を傷つける。太平洋戦争の起源などについて日本の一般の歴史認識にも反する記述がある。日本が自国の戦争を記録するための軍事博物館を持つことは大切だが、そこにある記述があまりに不適切なことは日本側でも再考されるべきだ。

 一、日中関係の改善について日本側ではよくそのために日本が何をすべきかという問いかけが出るが、まず中国が何をすべきかということをもっと考えるべきだ。ダンスを踊るには2人の人間が必要なのだ。中国自身が長期の利害関係を考えて、日本を含む隣人諸国ともっと仲よくしようと決めれば、靖国を含め、いろいろな手段がとれる。中国は日本への姿勢を今年3月ごろからいくらか柔軟にし、対決を避けるという方向へ動き始めたかにもみえる。日中外相会談の開催もその一つの兆しだ。

 一、中国は民主化の方向へ動く気配もあるが、なお基本的に一党独裁は変わらず、国内の矛盾や格差も激しくなる一方だ。秘密に包まれたままの軍事体制での軍拡もなお続いている。このまま軍事力を中心とする国力を強めた末、覇権を求める野心的なパワーとなるのか、それとも既存の国際秩序の保持に加わるステークホルダー(利害保有者)となるのか、自分たちもまだわからないのではないか。日米両国は同盟パートナーとして、そのどちらのケースにも備えるヘッジ(防御)戦略を協力して構築する必要がある。


  ■リチャード・アーミテージ氏の略歴 1967年、米海軍兵学校卒、海軍軍人としてベトナム勤務。73年に退役し、国防総省勤務、上院議員補佐官を経て83年にレーガン政権の国防次官補。2001年から04年末まで国務副長官。現在はコンサルタント企業「アーミテージ・アソシエイツ」代表。

(07/20 02:08)

http://www.sankei.co.jp/news/060720/kok018.htm
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