文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

佐藤優と柄谷行人(1)。

dokuhebiniki2015-09-09


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今朝、起きてテレビを見ると、台風上陸で、伊勢市五十鈴川が氾濫しているという。先々月、「吉野」から「伊勢神宮」を旅したばかりである。「五十鈴川」を、伊勢神宮参拝で初めて知った。五十鈴川のヒンヤリとした清流の感触が忘れられない。実は、私は、佐藤優さんと「月刊日本」が主催する「吉野合宿」(「太平記を読む佐藤塾」)に参加しての帰りがけに、一人で、伊勢神宮に行ったのである。さて、佐藤優を語る時、柄谷行人の存在を無視するわけにはいかない。佐藤優の愛読者たちが、同時に柄谷行人の愛読者であるのかどうか、私には分からない。おそらく、佐藤優の愛読者は、必ずしも柄谷行人の愛読者ではないのかもしれない。しかし、私は、佐藤優柄谷行人を、同時に愛読する。何故か?私が、「思想家・佐藤優」を知ったのは、柄谷行人の著書に対する佐藤優の書評(「文学界」掲載)からであった。「鈴木宗男スキャンダル」で、初めてマスコミに登場した「佐藤優」に、私は、それほどの関心を持っていなかった。鈴木宗男には関心があったが、同時に逮捕された佐藤優には関心がなかった。佐藤優は、その後、およそ1年間の獄中生活を送っている。その記録が『獄中記』(岩波書店)であるが、私は、読まなかった。しかし、柄谷行人は、熟読し、感動したらしく、「文学界」という文芸誌に書評を書いている。私にとっては驚きである。私は、早くから柄谷行人を熟読していたからだ。私は、柄谷行人が「佐藤優」に注目していることを知ってから、「佐藤優」を読み始めた。何故、柄谷行人佐藤優を評価し、書評まで書いたのかが、私にも、よく分かった。そこには、「原理的思考」があった。私は、当時、連載していた「月刊日本」の「文芸時評」で取り上げた。当時、私が書いたブログから引用する。


2006-01-14 グローバリゼーションに文学は対抗できるか 編集
外交官・佐藤優の「柄谷行人」論を読む。


今月読んだ文章でもっとも衝撃を受けたのは佐藤優の小さな書評であった。佐藤優と言っても最初はピンとこなかった。たぶん、同姓同名の別人か、何かの勘違いだろうと思っていた。しかし文章を読みはじめて見るとやはり、あの「佐藤優」であった。あの「佐藤優」が、文芸誌に登場し、しかも「柄谷行人」を大真面目に論じるとは…。「文学界」2月号の巻末の書評欄「味読・愛読・文学界図書館」に、「柄谷行人近代文学の終わり』(佐藤優)」という文字を見てちょっと驚いた。ノンキャリアの外務省職員(休職中?)で、ロシア問題専門の情報分析官。「鈴木宗男逮捕事件」で鈴木宗男の片腕として北方領土返還交渉で暗躍した外交官として逮捕され、現在裁判中。一方ではその独特の情報収集力と情報分析力を駆使して著した『国家の罠』という著書で「国策捜査」という言葉を世間に知らしめた佐藤優。むろん、私も彼が、最近、外交問題の専門家として論壇誌や週刊誌などで活躍していることは知っていた。だが、その佐藤優が文芸誌の書評欄にまで登場してくるとは思わなかった。しかもその書評の対象が柄谷行人である。サブ・タイトルには「グローバリゼーションに文学は対抗できるか」とある。書評とはいえ、かなり本質的な問題を提起していることがわかる。読まないわけには行かないだろう。佐藤はその書評を、次の一文で始めている。《評者は(註・佐藤優自身のこと…)現役外交官時代情報(インテリジェンス)業務に従事することが多かった。その当時、柄谷行人氏の著作にはたいへんお世話になった。》佐藤優柄谷行人。確かにこの組み合わせは驚きだ。私は、これまでに、柄谷行人を批判し、蔑視し、罵倒する人には何人か会ったことはあるが、柄谷行人を熟読しているという政治家や経済学者や政治評論家、あるいは外交評論家に会ったことはない。いずれにしろ、最近の政治家や政治評論家、経済学者等の思想的レベルでは、柄谷行人を読むことも理解することも不可能だというのが私の分析だ。ところで、佐藤優の場合、柄谷行人を読んでいるということだけでも驚きだが、それだけではない。どうも佐藤は、柄谷行人の全著作を熟読し、しかもよく理解した上で、具体的な外交交渉の場面でも柄谷行人を活用していた(「お世話になった…」)ようなのだ。言い換えれば、佐藤優は外交官、あるいは外交評論家としてもタダモノではないということがこれで理解できるというものだ。佐藤は、続けてこう書いている。佐藤優という外交官、ないしは外交評論家の思想的な本質とその異色振りがここからも読み取ることができるはずだ。《情報専門家で学者の顔をもっているものもよくいる。外交官に次いで多い偽装(カバー)が学者であろう。学者ならば、外国の政治、経済、軍事に関心をもっていてもそれほど怪しまれない。情報専門家で大学教授やシンクタンクの研究員に比肩する優れた学識や洞察力をもった人物はたくさんいるが、根本的な倫理観が異なる。情報専門家は、対象の内在的論理をとらえることには関心があるが、真理の追究は考えていない。自己の知的能力を国家が与えた課題を遂行するために使うだけだ。ロシア、イスラエル、ドイツ、アメリカなどの専門家と意見交換する際に評者は柄谷氏の言説を頻繁に紹介した。特に、小泉政権誕生後、日本の政治情勢分析に関し、明治―昭和の反復説であるとか、ファシズムを、全ての階級を代表することによって議会制における諸党派の対立を止揚するボナハルティズムの視座から見るとよくわかるという柄谷氏の言説は、国際情報屋たちに感銘を与えた。暗号情報で柄谷氏の言説が、各国情報機関の本部に伝えられたと思う。柄谷氏の情勢分析は国際情報のプロたちにとっても有益なのだ。》佐藤優柄谷行人の著作をかなり深く読み込んでいることはこの文章からも充分に推察できるが、実は、こういう柄谷行人の読み方は、ある意味では柄谷行人に精通しているはずの文学関係者の中の柄谷行人論と比較してもかなりレベルが高いと言わなければなるまい。「明治―昭和の反復説」や「ファシズムを、全ての階級を代表することによって議会制における諸党派の対立を止揚するボナハルティズムの視座から見るとよくわかるという柄谷氏の言説」を、佐藤ほど真剣に読む文学関係者は決して多くはないだろう。しかも、佐藤が、その柄谷の「明治―昭和の反復説」やファシズムボナパルティズム理論を、外交を通じて世界に発信していたと言うのである。佐藤が単なる知的遊戯や虚栄心としてではなく、それこそ佐藤の内的必然性と内面的論理に基づいて柄谷行人の著作を読んでいることが推定できる。今更言っても無駄だろうが、こういう哲学的、思想的問題の本質が理解できる佐藤優を持っていることを日本の外務省は誇りにすべきだろう。残念ながら、日本の官僚も政治家も政治評論家や外交評論家も、そして政治学者も経済学者も、その思想的レベルで、佐藤優に遠く及ばない。現在の日本の政界や論壇や学会に横行するのは、権力に迎合することが「中庸の美学」だと嘯く「桜田淳」(笑)のような御用文化人だけである。



(続く)



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