文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

「琉球新報」掲載の拙論「鳩山政権と普天間移設」


琉球新報」11月26日に掲載された拙論「鳩山政権と普天間移設」の本文である。その後、「辺野古(キャンプシュワブ)」決着の場合、福島社民党党首の「連立離脱発言」が波紋を呼んでいるが、また大阪の橋下知事の「関空」容認発言とも絡んで、この沖縄米軍基地移設問題は、民主党の対応によっては大きな政治問題となり、鳩山政権だけではなく民主党政権をも揺さぶることになろう。一部では、民主党は来年の参議院選挙まで問題を引き伸ばす作戦らしいという情報も流されているが、もしそういうことであれば、鳩山首相の「・・・を重く受けとめる」という引き伸ばし作戦も参議院選挙まで続くことになり、参議院選挙後は、日米合意をそのまま継承して、沖縄県民や社民党の願いを無視する形で、名護市辺野古への移設受け入れで最終決着ということになるわけだが、はたしてそううまくいくものかどうか。僕は、その前に、民主党は国民の支持を失い、そして社民党国民新党からも見捨てられ、参議院選挙は惨敗するだろうと思う。そしてその後は、言うまでもなく、参議院での過半数を失った民主党は、たちまち「ねじれ現象」の渦中に投げ込まれ、法案はことごく潰され、衆議院での再可決を試みようとしても「三分の二」に達していない現状では、それも不可能ということで、国会は立ち往生し、政権交代後、わずか一年で政権崩壊、そして政界再編ということになる。そうなった方がいいのかもしれない。

■鳩山政権と普天間移設 
   (山崎行太郎)


 「政権交代選挙」と言われた八月の総選挙の結果、自民党から民主党への政権交代が実現し、様々な分野で地殻変動を呼び起こしているわけだが、ここにきて、沖縄の米軍基地移設問題が、つまり「県外・国外移転」か「嘉手納基地統合」か、あるいは日米合意を現状肯定する「キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)移設」かの選択が、鳩山政権の命運を左右するかもしれない政治問題として急浮上してきた。しかし鳩山首相や岡田外相の発言だけではなく、その他の政治家、文化人たちの発言にも、この沖縄米軍移設問題の重さと切実さがまったく感じられない。誤解を恐れずに言えば、沖縄県民を除く多くの日本人にとって、実質的に沖縄米軍基地問題対岸の火事であり、他人事であるという現実を、あらためて実感させられる。そこでこの問題に関心を持つ者としての私見を述べたい。
 結論を先に述べよう。沖縄県民は、経済支援や環境整備、公共事業誘致等の日本政府の「リップサービス」に騙されるなかれ、と申し上げたい。つまり経済的条件闘争に後退することなく、徹底的に米軍基地の「県外、国外移転」を主張し、日本政府、つまり鳩山政権と戦うべきである、と。そして日本国民の面前に「米軍基地問題」を突き付けるべきだ、と。「地政学的に沖縄以外は不可能」という専門家たちの、もっともらしい意見があるが、それも、所詮は、東京(日本)から遠く離れた辺境の島に、米軍基地という「厄介なもの」、「見たくないもの」、「おぞましいもの」を隔離し、封印しておきたいという日本人(沖縄県民を除く)の手前勝手な幻想と願望にすぎない。
 アメリカの日本研究者チャルマーズ・ジョンソンが「沖縄論」で言うように、その背景には沖縄県民を異国民(植民地人)と見るような、日本人の「差別」的、「蔑視」的な「まなざし」があることを忘れてはならない。だからこそ、具体的に移転候補地名を出し、たとえば「関空」や「佐賀空港」「硫黄島」等への米軍移設を強く主張すべきだ。そうすれば、「米軍基地問題など関係ない」と思っている多くの日本人は震え上がるだろう。
 沖縄県民が米軍基地反対闘争等を展開すると、沖縄県民の県民性を冒涜するかのように、沖縄県人は、「騒げばカネが出ると思っている」「カネに汚い県民性だ」という趣旨の発言 (渡部昇一歴史教育を歪めるもの』「will」12月号)が繰り返されるが、私は、そこまで言うのならば、「渡部昇一邸」の近くに、つまり東京周辺に沖縄にある米軍基地の全施設を移転すべきだと反論し、渡部昇一的言説を批判・論破すべきである。そのためには、繰り返すが、経済的な条件闘争を断固、拒絶するべきだ。今、貧困にあえいでいるのは沖縄県だけではないことを知るべきだろう。
  最後に、アメリカ政府筋からの恫喝に屈したのかどうか知らないが、「県外、国外移設は現実性がない」と、早くから現状肯定的な発言を繰り返している岡田外相について述べよう。ちなみに岡田氏は、五年前、沖縄県民の前で、米軍基地の「県外、国外移転論」を主張している。しかも今回の選挙でも、鳩山党首自らが、「県外、国外移設」を発言している。にもかかわらず、政権に就くや否や、選挙公約をあっさり反故にして、「県外、国外移設」は「現実性がない」「不可能だ」と現状肯定派に転じようとしている。私は、日米安保、米軍基地容認派ではあるが、岡田外相や鳩山首相の軽い発言と変身ぶりには、強い違和感を持つ。おそらく岡田発言を容認している鳩山首相も、曖昧な発言で沖縄県民に期待を持たせつつも、実は時間稼ぎをしているだけで、最終的には日米合意をそのまま容認し、「現状肯定(名護移設)」に舵を切ると、私は思っている。要するに、岡田発言と鳩山発言の食い違いは、沖縄県民を欺く「ヤラセ」であり、「出来レース」だと思って間違いない。もし、鳩山首相が「現状肯定(名護移設)」に転じることがあるならば、その時は、鳩山首相は、嘘をついたことになるのだから、潔く責任をとって即刻、退陣すべきであると私は考える。

(山崎行太郎、「琉球新報」11月26日、字句の一部に修正あり。)