文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

「桜井よしこ・鈴木宗男」論争を読む。


 昨夜、半蔵門の某ホテルでおこなわれた、「『月刊日本』を叱咤激励する会」に出席したが、会場は満員で、立錐の余地なし、という有様で、しかも亀井静香氏をはじめ、多くの政治家たちが出席し、また自民党応援団の三宅氏を筆頭に、政治評論家やジャーナリストたちも、多数、詰め掛けており、やはり「保守論壇の浮沈」を象徴するかのような「時代の流れ」というものを痛感させられたパーティだった。ところで、桜井よしこ氏と鈴木宗男氏が北方領土問題をめぐって論争らしきものをしているということを、迂闊にも知らなかったが、読者からのコメントでそれを教えられ、早速、鈴木宗男氏の「ムネオ日記」を読んだところ、確かに激しい論争を繰り返していることがわかった。小林よしのり氏と同じように、桜井よしこ氏も、一頃の勢いが消え、やることなすことが、裏目裏目と、つまり言論人としては明らかに自滅・自壊へと向かってひた走っているように見える。桜井氏が、産経新聞のエッセイ「麻生首相に物申す」に、「鈴木宗男氏は二島返還論から四島返還論に転向した…」「鈴木宗男氏は、かつて、四島返還論は『時計のねじを逆に回すようなものだ』と言った…」「鈴木宗男氏の主張した二島返還論、段階的返還論は、ロシア側に二島変換で決着…という印象を与えた。これは重大問題だ…」等と書いたのに対して、鈴木氏が激怒し、「自分は一貫して四島返還論だ…。証拠を示してくれ…」ということで、「内容証明」つきの手紙を、桜井氏に送りつけているらしく、その経過報告が、逐一、「ムネオ日記」にアップされている。鈴木宗男氏の手紙は次のようなものだ。

 拝啓 初夏の候、櫻井様におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 本年5月14日付産経新聞(以下「産経記事」とする。)に掲載されている「麻生首相に申す 領土問題1ミリも譲るな」と題する櫻井様の文書に関する質問状を、同月18日付で郵送させて戴きましたが、お手元に届いておりますでしょうか。
 櫻井様は産経記事の中で「さらに、これらの発言より数年前に、いま、4島返還論の側に立つかのような印象を与える鈴木宗男氏は『4島一括返還』という言葉自体を『時計の針を逆に戻すもの』と批判した。いわゆる段階的返還論を論ずることで、鈴木氏もまた、日本側が2島返還でとりあえず、問題決着をはかる用意があるかのような印象を、ロシア側に与えたのであり、責任は重大だ。」と述べられておりますが、既に述べた様に、右の記述には客観的、具体的な根拠が欠落しており、当方の北方領土交渉に対する姿勢を不当に貶め、国会議員としての、ひいては一個人としての当方の名誉を傷つけるものであります。
 6月10日時点で未だご回答を戴いておりませんので、以下2点につき、再度質問させて戴きます。

1. 産経記事には「これらの発言より数年前に、いま、4島返還論の側に立つかのような印象を与える鈴木宗男氏は」、「いわゆる段階的返還論を論ずることで、鈴木氏もまた、日本側が2島返還でとりあえず、問題決着をはかる用意があるかのような印象を、ロシア側に与えたのであり、責任は重大だ。」とありますが、私はこれまで一度たりとも四島返還という考えを変えたこともなく、四島返還という政府方針から逸脱してロシアとの交渉に当たったこともありません。櫻井様が、過去に当方が歯舞、色丹、国後、択捉の4島よりも少ない、例えば歯舞・色丹の二島のみの返還によって北方領土交渉に決着をつけることを目指していたとする、具体的、客観的根拠は何か、明確に示されることを求めます。
2. 産経記事には「鈴木宗男氏は『4島一括返還』という言葉自体を『時計の針を逆に戻すもの』と批判した。」とありますが、日本政府は当時の中山太郎外務大臣がモスクワを訪問し、当時のゴルバチョフソ連大統領、エリツィン・ロシア大統領などと公式に会談した1991年10月以降、北方領土交渉において、「四島一括返還」という主張をしておりません。今更「四島一括返還」という言葉を持って交渉にあたることは、自由と民主のロシアではなく、共産主義ソ連を交渉相手としていた時代に戻ることを指すという意味で、私は「時計の針を逆に戻す」旨主張したものです。北方領土交渉に当たる政府方針の変化等を含め、この様な経緯を櫻井様は承知されておりましたでしょうか。

 先に述べた様に、産経記事にある櫻井様の主張は、私の政治家としての過去の行動や、私に対する評価を不公平にねじ曲げるものであります。誤った認識、客観的ではないことに基づき、勘違い以外の何物でもない主張をされては、私としては迷惑千万であります。また何よりも、国民に間違った判断材料を提供し、国益を損ねることになります。
 ご多忙の中恐縮ですが、本書簡を受け取られてから72時間以内を目処に、右の二つの問いに対し、櫻井様が明確な回答をされることを再度強く求めます。

 敬具
 平成21年6月10日
 新党大地代表 衆議院議員
 鈴木宗男

そして、これに対する櫻井よしこ氏からの回答はなく、再度の問い合わせに、次のような…。

政治家であり、公人であり、メディアでも活躍中の言論人でもあるにもかかわらず、配達証明内容証明を送りつけるとはどういうことでしょうか。公人であり、言論人であれば、このような姑息な証明郵便を用いるのではなく、堂々と議論を挑まれるのが筋ではありませんか。鈴木議員が毎月送って下さっている『月刊自由』でも、その他如何なるメディアでも、私は議論を受けて立ちたいと思います。  


これは、明らかに櫻井よしこ氏が「逃げている!」と見るべきだろう。しかし、それにしても、やはり現役の政治家に理詰めで論破され、まともな反論もできず、姑息に「逃げる」しかない評論家やジャーナリストって、見苦しいと言わなければならない。僕の見るところでは、ここには、やはり、最近の保守論壇の「劣化」を象徴するような問題点が露わになりつつあるということが出来る。桜井氏の場合も、まず、論文やエッセイにおいてもっとも重要な要素とも言うべき事実関係のデータが間違っているらしい。そこを、鈴木氏は厳しく追及しているわけだが、これは、要するに「伝聞情報」や「噂話」程度の怪しい情報を鵜呑みにし、それを前提に論文や議論を展開するという、最近の保守論壇の慣習になっている貧しい思想的現実を、突いていることになる。桜井氏は、「麻生首相にもの申す」というエッセイで、数々の事実関係の「ミス」をしているらしく、たとえば「月刊日本」を「月刊自由」と書いていたり、というように、誰の目にも明らかな、きわめて初歩的な間違いを指摘されて、うろたえている模様だ。小林よしのり氏と言い、桜井よしこ氏と言い、こんな初歩的な問題点を追及され、暴露されているにもかかわらず、表層的には無視・黙殺したり、あるいは本当はタジタジとなっているという現実を見るまでもなく、「思想言論人としては、もう終わっている」としか言いようがない。(続く)




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『週刊金曜日』『月刊日本』第二回共同講演会「日朝関係を考える」

週刊金曜日』『月刊日本』第二回共同講演会「日朝関係を考える」



前回の「貧困、テロ、クーデター」に引き続き、「週刊金曜日」と共催の第二回講演会を開きます。
テーマは「日朝関係を考える」。

今回は完全予約制ですので、参加希望の方はお早めにお申し込み下さい。(応募者多数の場合、抽選となります)。

【討論】 佐藤優 (作家・起訴休職外務事務官)
     菅沼光弘(元公安調査庁調査第二部長)
     蓮池透 (元「家族会」副代表)
     山浦嘉久 (『月刊日本論説委員
     和田春樹 (東京大学名誉教授)
【司会】 青木理 (ジャーナリスト)

【日時】 2009年 7月 1日(水)  19時〜21時(開場18時半)
【場所】 ちよだプラットフォームスクウェア(℡ 03-3233-1511)
会議室504+505(東京・神田錦町3-21)
【申込み】
 ※参加申し込みには『月刊日本』か『週刊金曜日』の定期購読者であることが原則必要(当日の購読申し込みも受け付けます)。
  完全予約制(定員60人、1000円)。
 ℡ 03-5211-0096 Fax 03-5211-0097 (『月刊日本』)
 またはメール(gekkan.nippon@gmail.com)まで
 抽選のうえ、参加可能になった方には、小社からご連絡いたします。