文藝評論家=山崎行太郎の『 毒蛇山荘日記(1)』

文藝評論家=山崎行太郎の政治ブログ『毒蛇山荘日記1(1) 』です。

「二十一世紀文学」で、岳真也、三田誠広、笹倉明と、「三枝和子追悼

 僕は「21世紀文学」というマイナーな雑誌の編集委員をしている。ほとんど何もしないのだが、一応編集委員ということになっている。「21世紀文学」というのは僕の慶応時代からの畏友・岳真也が主宰する雑誌で、元をたどれば「蒼い共和国」や「痴」という雑誌に行きつく。雑誌作りと友達作りの達人である岳真也のライフワークだ。僕にはいずれも苦手なジャンルだが、岳真也の友人ということでいつも仲間に加えてもらっている。「21世紀文学」の前は「えん」という雑誌だった。この「えん」に出入りしていて、今や文壇で大活躍している作家や評論家も少なくない。まあ、世間の評価は、甲論乙駁でいろいろあるだろうが、岳真也が雑誌作りにこだわり続けたということは高く評価されていい。雑誌つながりで三田誠広さんや笹倉明さんなどとも友達になれたわけで、一連の雑誌から僕が受けた恩恵ははかりしれない。来る人もいれば去る人もいる。当然のことだが、持続することも大事だ。この点では、岳真也の功績は大きい。さて、その「21世紀文学」で、昨年末に岳、三田、笹倉、僕とで座談会を開いた。「21世紀文学」を支援し、作品も寄稿してくれていた三枝和子さんの追悼座談会である。その原稿がメールで送られてきたので、推敲・加筆をして、昨夜返送した。僕は、三枝さんとは個人的にはあまり馴染みはないのだが、作品の傾向が哲学的な志向が強いので、その点では共感していた。で、僕は三枝さんの文学を、いい意味での前衛文学的な「マイナー文学」ととらえ、初期から晩年までその方向を徹底した作家だったというふうにまとめた。三枝さんのような一流の作家が、「21世紀文学」に喜んで寄稿してくること自体が素晴らしい。岳真也によると、三枝さんは、「この雑誌にいちばんいい原稿を書く・・…」と言っていたそうだ。三枝さんが凡庸な作家ではなかったことをこの話は証明している。三枝和子は「マイナー文学」に固執した作家だった。ところで、1年の総括の中で、僕は,最近,ネットにはまっているという話もしたが、実はネットも、一種の「マイナー文学」の場所たりうるのではないかと思っている。大手出版社の文芸誌も大事だがそれだけでは文学は成立しない。「21世紀文学」のように、個人が身銭をきってやりたいことをやる、というマイナー雑誌も必要だろう。むろん、わが「毒蛇通信」もしっかり宣伝した。


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1947年生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科卒。慶應義塾大学大学院修了。東京工業大学講師を経て、現在、埼玉大学講師。朝日カルチャー・センター(小説教室)講師。民間シンクタンク『平河サロン』常任幹事。哲学者。作家。文藝評論家。

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